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第一章 一度目の異世界
04.優しい匂い
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ユリウスside
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ユリウス……あなたをひとり置いて逝ってしまう母を許してほしいとは言いません……」
「っ…かあさま!いやです、ぼくをひとりぼっちにしないでっ」
かあさまの体が黒くて嫌なものにのまれていく。
「うっ…ユリウス、愛しています。私とあの人との最愛の子……」
「かあさまああああああああっ!」
◇◆◇
カーン、カーン——
ザッ、ザッ……
かあさまが埋められていく。
「ユリウス……アトラの事、残念でした。不治の病だなんて……うぅ」
シスターが僕を抱きしめながらそう言った。
不治の病?シスターはなにを言ってるの?かあさまはあの黒くて嫌なものに殺されたんだ。
「ユリウス、今日からここの孤児院でみんなと一緒に暮らしましょう」
一緒に暮らす?僕の家はかあさまと一緒に暮らしたあの家だけだ!
「あっ、ユリウス!何処へ行くのです」
僕はシスターを振り切って、家へ帰った。
かあさま、かあさま!ひとりぼっちは嫌だよ、寂しいよ……
暗くて静かな家、かあさまの優しい匂いが日に日に消えていく。
何もする気が起きない……ご飯も食べたいとも思わない。このまま何日も食べなければ死ぬだろう。そしたら、かあさまの所へいける。
コンコン——
「ユリウス?ユリウス居ますか?ご飯、ちゃんと食べていますか?」
毎日のようにシスターが訪ねてくる。
「ユリウス!お願いだからここを開けてください」
僕はシスターを無視し続けた。
ドアの前に食べ物を置いていってくれるが、僕はそれに手をつけなかった。
あれから何日が経っただろうか、もう母さまの匂いはしなくなった……
「ぐすっ、かあさま……かあさまぁ」
寂しいよ、ひとりぼっちは嫌だよ。誰か、誰かぁ……!
その時、体の底から何かが溢れてきた。同時に体が焼けるような痛みが襲ってきた。
「かはっ、ゔぅ……」
あぁ、やっと死ねる……そう思った時——
優しい匂いがした。
そして光の中から誰かが現れた。
僕はそのまま意識を失った。
でも誰かが僕の頭をずっと優しく撫でてくれていたのは知っている。
かあさまよりも濃くて優しくていい匂い。
◇◆◇
誰かが僕の頭を優しく撫でてくれている。
(あったかくてきもちいい……)
「あっ起こしちゃったね、ごめ……」
この人は誰だろ?なんで固まってるの?
はっ、しまった!僕の目は誰にも見せちゃいけないんだった。
『ユリウス、あなたのこの目をかあさま以外に見せちゃダメだよ。約束出来る?』
『それはぼくのめが、ほかのひととちがって、へんだから?』
『どうしてそんな事を言うの?誰かに何か言われたの?』
『……こじいんのこに、へんだっていわれた』
『そうだったの……かあさまはこの愛くるしいお目め、凄く綺麗で大好きだよ。でもあなたの安全のために、むやみに見せないで』
『はい、かあさま』
(どうしよう、どうしよう!かあさまとのやくそく、やぶっちゃった。へんっていわれるかな)
「きれい……」
「っ!」
僕は慌てて布団の中に隠れた。
(え? いまなんて?)
「怖がらせてごめんね。えっと……俺の名前は秋也っていうんだ」
「……シューヤ」
「うん。君のお名前は?」
あの時と同じ優しくていい匂いがした。
「……ユリウス」
「ユリウスくんか!いいお名前だね」
この人はかあさまと同じで僕の目をみて綺麗と、言ってくれる。それが凄く嬉しかった。
それからシューヤは僕のお世話をしてくれた。
シューヤは僕のためにぜりーというものを食べさせてくれた。甘くて美味しかった。シューヤと居るとかあさまとの日々に戻れた気がして、心が暖かくなった。
「もふもふ……最高」
シューヤは僕の耳が好きみたいでよく撫でてくれる。暖かくて凄く気持ちいい。
「ユリウスくんはいま、いくつなのかな?ちなみに俺は19歳だよ」
「ご、5さい……」
「そっか~、ねぇここには両親……お父さんとお母さんと住んでるのかな?」
(かあさまは……)
「……かあさまとすんでた。とうさまは……しらない」
「そうなんだ。お母さんは今どこに居るのかな?」
かあさまは死んでしまった。あの黒くて嫌なものにのまれて、もう二度と会えない。
(かあさま…かあさまっ!)
体が震え、涙が溢れてくる。
その時、優しい匂いが僕を包みこんだ。
「ひっく……うぅ、あ〝あ~」
もう涙なんてとっくに枯れたと思ってた。
「大丈夫、俺が側にいるよ」
シューヤはずっと僕の背中を優しく撫でてくれた。
もうひとりぼっちは嫌だ。シューヤお願い、ずっと僕の側にいて——
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
補足:ユリウスの家には結界が張ってあります。そのためシスターはドアを開ける事はできません。
葬儀の時、ユリウスはフードをかぶっていたので、シスターは知りません。
母親は魔法使いでした。ユリウスを守るためにいろいろと残しているので、それは追々出てきます。
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「ユリウス……あなたをひとり置いて逝ってしまう母を許してほしいとは言いません……」
「っ…かあさま!いやです、ぼくをひとりぼっちにしないでっ」
かあさまの体が黒くて嫌なものにのまれていく。
「うっ…ユリウス、愛しています。私とあの人との最愛の子……」
「かあさまああああああああっ!」
◇◆◇
カーン、カーン——
ザッ、ザッ……
かあさまが埋められていく。
「ユリウス……アトラの事、残念でした。不治の病だなんて……うぅ」
シスターが僕を抱きしめながらそう言った。
不治の病?シスターはなにを言ってるの?かあさまはあの黒くて嫌なものに殺されたんだ。
「ユリウス、今日からここの孤児院でみんなと一緒に暮らしましょう」
一緒に暮らす?僕の家はかあさまと一緒に暮らしたあの家だけだ!
「あっ、ユリウス!何処へ行くのです」
僕はシスターを振り切って、家へ帰った。
かあさま、かあさま!ひとりぼっちは嫌だよ、寂しいよ……
暗くて静かな家、かあさまの優しい匂いが日に日に消えていく。
何もする気が起きない……ご飯も食べたいとも思わない。このまま何日も食べなければ死ぬだろう。そしたら、かあさまの所へいける。
コンコン——
「ユリウス?ユリウス居ますか?ご飯、ちゃんと食べていますか?」
毎日のようにシスターが訪ねてくる。
「ユリウス!お願いだからここを開けてください」
僕はシスターを無視し続けた。
ドアの前に食べ物を置いていってくれるが、僕はそれに手をつけなかった。
あれから何日が経っただろうか、もう母さまの匂いはしなくなった……
「ぐすっ、かあさま……かあさまぁ」
寂しいよ、ひとりぼっちは嫌だよ。誰か、誰かぁ……!
その時、体の底から何かが溢れてきた。同時に体が焼けるような痛みが襲ってきた。
「かはっ、ゔぅ……」
あぁ、やっと死ねる……そう思った時——
優しい匂いがした。
そして光の中から誰かが現れた。
僕はそのまま意識を失った。
でも誰かが僕の頭をずっと優しく撫でてくれていたのは知っている。
かあさまよりも濃くて優しくていい匂い。
◇◆◇
誰かが僕の頭を優しく撫でてくれている。
(あったかくてきもちいい……)
「あっ起こしちゃったね、ごめ……」
この人は誰だろ?なんで固まってるの?
はっ、しまった!僕の目は誰にも見せちゃいけないんだった。
『ユリウス、あなたのこの目をかあさま以外に見せちゃダメだよ。約束出来る?』
『それはぼくのめが、ほかのひととちがって、へんだから?』
『どうしてそんな事を言うの?誰かに何か言われたの?』
『……こじいんのこに、へんだっていわれた』
『そうだったの……かあさまはこの愛くるしいお目め、凄く綺麗で大好きだよ。でもあなたの安全のために、むやみに見せないで』
『はい、かあさま』
(どうしよう、どうしよう!かあさまとのやくそく、やぶっちゃった。へんっていわれるかな)
「きれい……」
「っ!」
僕は慌てて布団の中に隠れた。
(え? いまなんて?)
「怖がらせてごめんね。えっと……俺の名前は秋也っていうんだ」
「……シューヤ」
「うん。君のお名前は?」
あの時と同じ優しくていい匂いがした。
「……ユリウス」
「ユリウスくんか!いいお名前だね」
この人はかあさまと同じで僕の目をみて綺麗と、言ってくれる。それが凄く嬉しかった。
それからシューヤは僕のお世話をしてくれた。
シューヤは僕のためにぜりーというものを食べさせてくれた。甘くて美味しかった。シューヤと居るとかあさまとの日々に戻れた気がして、心が暖かくなった。
「もふもふ……最高」
シューヤは僕の耳が好きみたいでよく撫でてくれる。暖かくて凄く気持ちいい。
「ユリウスくんはいま、いくつなのかな?ちなみに俺は19歳だよ」
「ご、5さい……」
「そっか~、ねぇここには両親……お父さんとお母さんと住んでるのかな?」
(かあさまは……)
「……かあさまとすんでた。とうさまは……しらない」
「そうなんだ。お母さんは今どこに居るのかな?」
かあさまは死んでしまった。あの黒くて嫌なものにのまれて、もう二度と会えない。
(かあさま…かあさまっ!)
体が震え、涙が溢れてくる。
その時、優しい匂いが僕を包みこんだ。
「ひっく……うぅ、あ〝あ~」
もう涙なんてとっくに枯れたと思ってた。
「大丈夫、俺が側にいるよ」
シューヤはずっと僕の背中を優しく撫でてくれた。
もうひとりぼっちは嫌だ。シューヤお願い、ずっと僕の側にいて——
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補足:ユリウスの家には結界が張ってあります。そのためシスターはドアを開ける事はできません。
葬儀の時、ユリウスはフードをかぶっていたので、シスターは知りません。
母親は魔法使いでした。ユリウスを守るためにいろいろと残しているので、それは追々出てきます。
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