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第一章 一度目の異世界
06.子守唄
しおりを挟む5話の誤字脱字と少し加筆修正をしました。
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「ねぇシュウ!おうた、うたって」
「いいよ」
ユリウスは寝る前に子守唄を歌ってほしいとお願いされる。
元の世界で瑠夏と冬真に聞かせていた子守唄で、これを聞かせると夜泣きが酷かった冬真が朝までぐっすり寝てくれる。これは俺の特技だ。
「~♪」
(ふぅ)
「すぅ……」
(あ、眠ったね)
俺はユリウスを優しく撫でた。
ユリウスは最近まで夜が眠れていなかった。理由は母親を失ったショックだ。シスターの話では、ユリウスは20日以上何も食べずに家に引きこもっていたそうだ。
その間に心を閉し絶望した傷は中々癒えない。
俺が異世界に来て、初めての夜。
正確には俺が気絶した次の日の夜に、ユリウスと一緒にベッドで寝ていたら、深夜にユリウスは起き、ふらふらと部屋を歩き回った。
『ユリウス?どうしたの?』
『……』
『夜は冷えるから、ベッドに戻ろう?』
『……(ぼそぼそ)』
囁くほどの小さな声で何か言っている。
『……っ』
【夢遊病】
その病名が頭に浮かんだ。
(さっきから何かを探してる?)
『……かあさま、かあさまどこ……』
俺はユリウスを後ろから抱きしめた。
(ユリウス……ユリウスっ)
その時初めて子守唄を歌った。ユリウスが眠るまで背中を撫でながら歌い続けた。
その次の日もそのまた次の日も、ユリウスが夜に歩き回る度に子守唄を歌った。
この子守唄を歌うと、ユリウスは落ち着いてくれる。さすがに少し不思議に思ったが、確証がなかったため単なる偶然だと思いそれ以上考えなかった。
ユリウスについて、シスターに相談したが、孤児院の子どもにも親を亡くした子どもがそういった行動をするそうだが、何も出来ないと言われた。見守り、時間が解決してくれるのを待つしかないと——
でもユリウスはまだ5歳だ。心も体も未成熟で、まだまだ親の愛が必要な時期なのに、俺は何も出来ない自分が歯がゆかった……だからせめて
『俺はこの子の親にはなれないけど、でもせめて兄のような存在でこの子の支えになりたい』
と、シスターに伝えた。
『ありがとうございます。ユリウスのこと、どうかよろしくお願いします』
シスターは涙を流して言った。
それから俺は、ユリウスを心から可愛がり、愛情を注いだ。ユリウスのやりたい事、楽しいことなどを一緒にたくさん経験した。
そのおかげで今は夜中に歩き回っていない。
でも子守唄はユリウスの耳に残っていたみたいで、寝る前に歌ってほしいとお願いさせる。
「さて、俺もそろそろ寝ますか」
もぞもぞと体勢を整えてユリウスの隣に寝転がる。その時窓の外に光るものがみえた
(あ、今日もあの日みた光が飛んでる)
光るものは窓の周りをしばらくクルクルと飛んでどこかへ行ってしまう。
「蛍みたいなものなのかな……」
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本日からBL大賞が始まります。
よろしくお願いします。
この話を入れるタイミングがここだったので、中々話が進まずすみません……
第一章は16話程で終わる予定です。
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