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後日談②
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「うわー、すごいっ! グツグツいってる」
「危ないから気をつけてね」
「はーい」
廉は噴火爆裂火口跡を身を乗り出して見ている。
「はい。名物、黒たまご」
そこへ神宮寺が名物の黒たまごを持ってやってくる。この黒たまごは一個食べると七年長生きをすると有名だ。
「お父さんもお母さんも、これ食べて長生きしてね」
そう言う廉に直生は苦笑いする。
「まだまだ死ぬような歳じゃないよ」
「そうだけど。でも、お父さんは危険あるでしょう?」
廉は神宮寺のことを心配して言っているのだ、とわかった。
神宮寺はやくざの組長だ。いつ何時襲われるかわからない。廉が物心つく頃には、神宮寺は若頭から組長に昇進していた。そのため、廉は組長の子供として育ってきた。他所の子と違って危険があるということ、父親である神宮寺は常に危険にさらされていることを口をすっぱくしてずっと言ってきた。だから小学生ながらに廉は親である神宮寺の、そして自分と直生の立場をしっかりと認識している。
「浅田たちが有能だからお父さんは大丈夫だよ」
「うん。でも心配だよ。だから、この黒たまご食べて長生きして。いっぱい食べていっぱい長生きしてね」
そう言って廉は、渡された黒たまごを半分こにしようとする。それを見て神宮寺が笑う。
「わらなくても大丈夫だよ。また買ってくればいいことだから。でも、ありがとうな」
「俺も誉さんも大丈夫だから、廉はそれ食べな」
直生がそう言うと、廉は、はーいと返事をしてたまごを食べる。廉が素直に食べる姿を見て神宮寺や直生もたまごを食べる。次は湖に行く予定だ。
「お父さんもお母さんも食べた? じゃ行こう。次は湖でしょ? 早く早く!」
急いで咀嚼して、早く次へ行こうとする廉の姿に笑いが漏れた。
二人が黒たまごを食べた後は、湖へと行き、海賊船で湖から見える景色を堪能し、その後は湖近くの神社で参拝してから予約してある旅館へと来た。
予約した部屋は、別邸と呼ばれる離れで、部屋が四部屋あった。リビングがあり、隣にツインのベッドの置かれた寝室、さらに奥にも二間あるため、神宮寺たち家族三人が寝泊まりしても部屋は余るので、用心棒として浅田と友野が泊まってもプライベート感は薄れないのだ。
当初、浅田と友野は、自分たちがそんな部屋に泊まるわけにはいかない、と辞退したが、別邸となっているため、同室でないと警護ができない、と直生が言ったために浅田と友野も同室となったのだ。
部屋には、巨石庭園露天風呂、内風呂、サウナとあり、露天風呂からは季節の楽しめる日本庭園が広がっており、夏ならば大文字焼きを楽しむことができ、とても贅沢だ。
部屋に入った途端、朝からテンションの高かった廉だけれど、さらにテンションも高く部屋を探検して回った。ウエルカムドリンクが運ばれてきてやっと座ったほどだ。
「すっごい綺麗だね!」
母の日のプレゼントでこの旅館にしたが、子供受けはしないと思っていた。しかし、意外にも廉は気に入ったようだ。
「廉、一緒に露天風呂入る?」
「うん!」
「誉さんも入るでしょう? これだけ大きければ三人大丈夫そう」
風呂は、さすがに大浴場のように三人で手足を伸ばして、というわけにはいかないが、普通に入る分には十分だ。
山をバックにした日本庭園は趣があり、いつもの慌ただしさを忘れることができる。
「誉さん、ありがとう」
「いつも頑張ってくれてる礼だ」
「でも、この部屋高かったでしょう?」
「母の日だから特別だ。それでも、この設備を見れば決して高くない。景色だっていいし、気に入ってくれればそれでいい。それよりマッサージも受けられるがいいのか?」
「こんなすごいところ気に入るに決まってる。マッサージはいいです。するほど働いてないから」
「それならいいが、受けたかったら言え」
「ありがとう」
そう言って笑う神宮寺に、直生は幸せだな、と思った。
「危ないから気をつけてね」
「はーい」
廉は噴火爆裂火口跡を身を乗り出して見ている。
「はい。名物、黒たまご」
そこへ神宮寺が名物の黒たまごを持ってやってくる。この黒たまごは一個食べると七年長生きをすると有名だ。
「お父さんもお母さんも、これ食べて長生きしてね」
そう言う廉に直生は苦笑いする。
「まだまだ死ぬような歳じゃないよ」
「そうだけど。でも、お父さんは危険あるでしょう?」
廉は神宮寺のことを心配して言っているのだ、とわかった。
神宮寺はやくざの組長だ。いつ何時襲われるかわからない。廉が物心つく頃には、神宮寺は若頭から組長に昇進していた。そのため、廉は組長の子供として育ってきた。他所の子と違って危険があるということ、父親である神宮寺は常に危険にさらされていることを口をすっぱくしてずっと言ってきた。だから小学生ながらに廉は親である神宮寺の、そして自分と直生の立場をしっかりと認識している。
「浅田たちが有能だからお父さんは大丈夫だよ」
「うん。でも心配だよ。だから、この黒たまご食べて長生きして。いっぱい食べていっぱい長生きしてね」
そう言って廉は、渡された黒たまごを半分こにしようとする。それを見て神宮寺が笑う。
「わらなくても大丈夫だよ。また買ってくればいいことだから。でも、ありがとうな」
「俺も誉さんも大丈夫だから、廉はそれ食べな」
直生がそう言うと、廉は、はーいと返事をしてたまごを食べる。廉が素直に食べる姿を見て神宮寺や直生もたまごを食べる。次は湖に行く予定だ。
「お父さんもお母さんも食べた? じゃ行こう。次は湖でしょ? 早く早く!」
急いで咀嚼して、早く次へ行こうとする廉の姿に笑いが漏れた。
二人が黒たまごを食べた後は、湖へと行き、海賊船で湖から見える景色を堪能し、その後は湖近くの神社で参拝してから予約してある旅館へと来た。
予約した部屋は、別邸と呼ばれる離れで、部屋が四部屋あった。リビングがあり、隣にツインのベッドの置かれた寝室、さらに奥にも二間あるため、神宮寺たち家族三人が寝泊まりしても部屋は余るので、用心棒として浅田と友野が泊まってもプライベート感は薄れないのだ。
当初、浅田と友野は、自分たちがそんな部屋に泊まるわけにはいかない、と辞退したが、別邸となっているため、同室でないと警護ができない、と直生が言ったために浅田と友野も同室となったのだ。
部屋には、巨石庭園露天風呂、内風呂、サウナとあり、露天風呂からは季節の楽しめる日本庭園が広がっており、夏ならば大文字焼きを楽しむことができ、とても贅沢だ。
部屋に入った途端、朝からテンションの高かった廉だけれど、さらにテンションも高く部屋を探検して回った。ウエルカムドリンクが運ばれてきてやっと座ったほどだ。
「すっごい綺麗だね!」
母の日のプレゼントでこの旅館にしたが、子供受けはしないと思っていた。しかし、意外にも廉は気に入ったようだ。
「廉、一緒に露天風呂入る?」
「うん!」
「誉さんも入るでしょう? これだけ大きければ三人大丈夫そう」
風呂は、さすがに大浴場のように三人で手足を伸ばして、というわけにはいかないが、普通に入る分には十分だ。
山をバックにした日本庭園は趣があり、いつもの慌ただしさを忘れることができる。
「誉さん、ありがとう」
「いつも頑張ってくれてる礼だ」
「でも、この部屋高かったでしょう?」
「母の日だから特別だ。それでも、この設備を見れば決して高くない。景色だっていいし、気に入ってくれればそれでいい。それよりマッサージも受けられるがいいのか?」
「こんなすごいところ気に入るに決まってる。マッサージはいいです。するほど働いてないから」
「それならいいが、受けたかったら言え」
「ありがとう」
そう言って笑う神宮寺に、直生は幸せだな、と思った。
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