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届かない想い3
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その日の撮影は散々だった。集中力に欠いていて、NGを連発してしまった。亜美さんをはじめ、その他の共演者の人はもちろん監督さんやスタッフさんに迷惑をかけてしまった。
「城崎くん疲れてる? ちょっと休憩入れようか」
最近の俺のタイトなスケジュールをなんとなく知っている監督が気を使ってくれている。疲れていないわけではない。それなりに疲れてはいる。でも、こんなにNGを連発するほどじゃない。集中力を欠いているのは、全く個人的な理由からだ。
「城崎さん、大丈夫ですか? やっぱり雑誌の後、病院へ行ったから疲れちゃいましたかね?」
氏原さんにも心配をかけてしまっている。
「ちょっとコーヒー買ってきます」
「あ、それなら自分が買ってきますから、城崎さんは休んでいてください」
そう言って氏原さんはコーヒーを買いに行った。俺が飲むのはアイスコーヒー。よっぽど寒いとき以外はずっとそうだ。その代わり氷が溶けていてもあまり気にしない。
だから、これが颯矢さんなら休憩になってから買いに行くのではなく、撮影の間に買っておいてくれる。それは付き合いが長いからできたことなのか、颯矢さんの性格なのかはわからない。ただ、颯矢さんなら、と思ってしまう。
颯矢さんのことを考えるのはやめよう。俺が今集中力を欠いているのは颯矢さんが原因なのだから。
香織さんといる颯矢さん。そんな見たくもないツーショットを見てしまったんだ。集中できないのは当たり前だ。
そう思うと、やっぱり芸能界は引退させて貰おう。颯矢さんの記憶がもどらなくても怪我が良くなればまたマネージャーとして復帰すると言っていた。もちろん、俺のマネージャーとして。
でも、颯矢さんが香織さんと結婚したら色々と考えてしまって今日のように集中力を欠いてしまうことは多々あるだろう。それはさすがにまずい。
じゃあ社長に言って他のマネージャーに変えて貰ったとしても、こうやって颯矢さんと比較しちゃうことはある。それじゃあ意味がない。
もう颯矢さんのことを思い出さないようにしなくちゃダメだ。
この間社長は頷いてはくれなかったけれど、頷いてくれるまで根気よく説得するしかない。
と、そこまで考えたところで氏原さんが戻ってきた。
「城崎さん、お待たせしました」
「いえ。ありがとうございます」
「買っておけば良かったって思いましたよ。気、きかないですよね。すいません。今度からは用意しておきます」
そうやって言ってくれる氏原さんは真面目でいい人だ。それで颯矢さんと比較してしまうのは申し訳ない。きっと氏原さんだって付き合いが長くなれば気がきくことだってあるだろう。
でも、だからと言ってマネージャーを氏原さんに変えて貰うことはしない。だって、芸能界という狭い世界の中では、いつ颯矢さんと会うかわからないし、何より颯矢さんとの思い出が消えない。それは芸能界から離れるしかない。氏原さんが悪いわけじゃない。
休憩を挟んだ後もNGは出したけれど、時間はそれほど押さなかった。それでも、撮影が終わった後は共演者さん、スタッフさんに謝った。
みんな、俺にしては珍しいねと温かく言ってくれたけど、もう今後同じようなことを繰り返したらダメだ。
明日は休みだから、気分転換しなきゃ。母さんが元気な頃だったらケーキビュッフェかスイーツの美味しい店に行っただろう。アフタヌーンティーの美味しいお店もあったなと思い出す。もう行くことはないだろうお店たち。
なんで母さんはいないんだろう。なんで俺1人残して先に行ってしまったんだろう。そう思うと泣きそうになる。最近の俺は涙脆くてダメだ。
食べに行かれないなら、なにか美味しいものでも食べてお酒を呑もう。お酒を呑むならミックスバーに行きたいけれど、行くことは禁止されているからそうもいかない。だから家で呑むしかない。そう思って気持ちを切り替えた。
「城崎くん疲れてる? ちょっと休憩入れようか」
最近の俺のタイトなスケジュールをなんとなく知っている監督が気を使ってくれている。疲れていないわけではない。それなりに疲れてはいる。でも、こんなにNGを連発するほどじゃない。集中力を欠いているのは、全く個人的な理由からだ。
「城崎さん、大丈夫ですか? やっぱり雑誌の後、病院へ行ったから疲れちゃいましたかね?」
氏原さんにも心配をかけてしまっている。
「ちょっとコーヒー買ってきます」
「あ、それなら自分が買ってきますから、城崎さんは休んでいてください」
そう言って氏原さんはコーヒーを買いに行った。俺が飲むのはアイスコーヒー。よっぽど寒いとき以外はずっとそうだ。その代わり氷が溶けていてもあまり気にしない。
だから、これが颯矢さんなら休憩になってから買いに行くのではなく、撮影の間に買っておいてくれる。それは付き合いが長いからできたことなのか、颯矢さんの性格なのかはわからない。ただ、颯矢さんなら、と思ってしまう。
颯矢さんのことを考えるのはやめよう。俺が今集中力を欠いているのは颯矢さんが原因なのだから。
香織さんといる颯矢さん。そんな見たくもないツーショットを見てしまったんだ。集中できないのは当たり前だ。
そう思うと、やっぱり芸能界は引退させて貰おう。颯矢さんの記憶がもどらなくても怪我が良くなればまたマネージャーとして復帰すると言っていた。もちろん、俺のマネージャーとして。
でも、颯矢さんが香織さんと結婚したら色々と考えてしまって今日のように集中力を欠いてしまうことは多々あるだろう。それはさすがにまずい。
じゃあ社長に言って他のマネージャーに変えて貰ったとしても、こうやって颯矢さんと比較しちゃうことはある。それじゃあ意味がない。
もう颯矢さんのことを思い出さないようにしなくちゃダメだ。
この間社長は頷いてはくれなかったけれど、頷いてくれるまで根気よく説得するしかない。
と、そこまで考えたところで氏原さんが戻ってきた。
「城崎さん、お待たせしました」
「いえ。ありがとうございます」
「買っておけば良かったって思いましたよ。気、きかないですよね。すいません。今度からは用意しておきます」
そうやって言ってくれる氏原さんは真面目でいい人だ。それで颯矢さんと比較してしまうのは申し訳ない。きっと氏原さんだって付き合いが長くなれば気がきくことだってあるだろう。
でも、だからと言ってマネージャーを氏原さんに変えて貰うことはしない。だって、芸能界という狭い世界の中では、いつ颯矢さんと会うかわからないし、何より颯矢さんとの思い出が消えない。それは芸能界から離れるしかない。氏原さんが悪いわけじゃない。
休憩を挟んだ後もNGは出したけれど、時間はそれほど押さなかった。それでも、撮影が終わった後は共演者さん、スタッフさんに謝った。
みんな、俺にしては珍しいねと温かく言ってくれたけど、もう今後同じようなことを繰り返したらダメだ。
明日は休みだから、気分転換しなきゃ。母さんが元気な頃だったらケーキビュッフェかスイーツの美味しい店に行っただろう。アフタヌーンティーの美味しいお店もあったなと思い出す。もう行くことはないだろうお店たち。
なんで母さんはいないんだろう。なんで俺1人残して先に行ってしまったんだろう。そう思うと泣きそうになる。最近の俺は涙脆くてダメだ。
食べに行かれないなら、なにか美味しいものでも食べてお酒を呑もう。お酒を呑むならミックスバーに行きたいけれど、行くことは禁止されているからそうもいかない。だから家で呑むしかない。そう思って気持ちを切り替えた。
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