Always in Love

水無瀬 蒼

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失恋さえできない2

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 タクシーに乗って家に帰ってきて、着替えることもなく、ただソファーに座って考えることはただひとつ。颯矢さんのことだ。
 今頃、見合いの真っ最中だろうか。それとももう終わったのか。もし、真っ最中なら電話でもして邪魔してやろうか、そんなことが頭に浮かぶ。
 そんなことをしたら颯矢さんに怒られるし、嫌われるから絶対しないけれど。でも、そうしたいぐらいの気持ちだ。
 見合い相手ってどんな人なんだろう。綺麗な人? 可愛い人? 社長の知り合いのお嬢様とか言ってたな。結婚するんだろうか。見合いって、よくわからないけど、成立しないことってあるんだろうか。相手が気に入らないとか。それとも、特に何もなければそのまま結婚するんだろうか。
 羨ましいと思う。女というだけで颯矢さんとお見合いできるし、結婚できるんだ。どちらも俺にはできないことだ。
 もし、颯矢さんが結婚すると言ったらどうしよう。いや、どうするもなにもないか。俺は颯矢さんの恋人でもなんでもない。ただのタレントだ。つまり颯矢さんの仕事。
 ああ、そうか。俺は仕事の颯矢さんのことは知っているけれど、私生活の颯矢さんのことはなにも知らない。私生活の颯矢さんを知りたいけれど、颯矢さんは許してくれない。
 告白だって何回もしてる。でも、その度に軽くあしらわれるだけだ。フラれもしない。フラれるのは悲しいけど、でも告白をきちんと受けた上での返事だ。でも、俺の場合は、告白さえきちんと受け取っては貰えないのだ。
 虚しいな、と思う。颯矢さんを好きになって随分たつ。告白なんて数えきれないほどしてる。でも、気持ちさえ受け取っては貰えないのだ。
 こんな状態なら、いっそフラれた方がいい。なのに、それさえできない。気持ちの持って行き場がない。これはフラれるより辛い。そうか、颯矢さんは、失恋さえさせてくれないのか。
 そう考えるとあまりに悲しくて食事をする気にはなれないし、かと言ってふて寝さえできる気がしない。外に行こうか。幸い明日は仕事の始まりが遅い。呑みにでも行こうか。家で呑むことも考えたけれど、酒は切らしている。わざわざ買いにいくなら、呑みに行ったって一緒だ。
 そう結論づけて、そのまま家を出た。どこへ行こうか、と考え、話に聞いたことのあるミックスバーへ行ってみることにした。
 俺は自分のセクシャリティがよくわからない。芸能界に入る前に付き合った彼女はいる。でも、告白されて付き合ったもので、自分からアプローチしたことはない。付き合ったのも、誰とも付き合ってなくて、その子のことが嫌いじゃないから。そんな感じだった。
 自分から好きになってアプローチしたのは、颯矢さんが初めてだ。欲しい、と思うのも颯矢さんが初めてだ。そう考えるとゲイなのだろうか?
 ゲイやノンケの線引ってどこなんだろう? 好きになったら? それともセックスできたら?
 颯矢さんとのことはわからない。セックスできるのだろうか? 颯矢さんで抜くことはある。つまり、勃つということだ。颯矢さんのことを考えて俺のモノは勃つ。つまり、セックスできるっていうことだろう。ということはゲイなのだろうか。でも、女性ともできるからバイなのだろうか。
 そんなことを考えて、一度ミックスバーに行ってみたいと思った。そこには、ゲイもレズビアンも、バイもノンケも全てのセクシャリティの人がいるらしい。
 俺は出会いは求めていないし、ゲイかどうかもわからないから、ゲイバーには行けない。店の人にバレるのもまずいけれど、週刊誌にすっぱ抜かれるのはまずい。でも、ミックスバーなら言い訳もできだろう。そう思って、一度見かけたミックスバーへ行ってみることにした。
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