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向けられた刃7
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カップの片付けを涼に任せて、俺は他のお客さんにお代わりとして注文頂いたメニューと同じものを淹れた。お客さんが5人で、みんなよく来るお客さんなのでメニューを覚えていたのが幸いした。
コーヒーを淹れながら優馬さんが女性に話しているのを聞いていた。
「なんでこんなことをしたの?」
「……だって、吉澤さんが!」
「僕がなに?」
「こんな男なんかを好きになるから!」
「こんな男って言うけど、じゃあ君は彼のことを知ってるの?」
「それは……知らない、けど。でも!」
「知りもしない人のことをそんな風に言ったり、インターネット掲示板にありもしないことを書いたり、ましてやお店で騒ぐとか普通ならやらないでしょう。ましてや僕はあなたの恋人じゃない。僕が誰を好きでも関係ないよね。それに僕の片想いだ。そんなに面白くないのなら僕に文句を言えばいい。あなたのやったことは威力業務妨害だよ。立派な犯罪だよ。インターネット掲示板に書いたことも罪になるんじゃないかな」
「……」
優馬さんの言葉に女性は言葉をなくしたようだ。
そうしていると警察官が2人連れでやってきて、俺になにがあったのかを訊き、それに答えると女性は連行されていった。俺はなにも言えずに店を出て行くのを見送った。
迷惑をかけたお客さんにお詫びのコーヒーをサーブし、今日のお代は必要ない旨伝える。ゆっくりしたい場所でこんな事件にぶつかるなんてお客さんにとってはいい迷惑だ。
お客さんにお詫びのコーヒーを淹れたあとは優馬さんと涼にもコーヒーを淹れる。優馬さんにはブレンドを、そして涼にはマンデリンを淹れた。
「ありがとうございます。助かりました」
カウンターに並んで座った2人の前にカップを出す。
「一緒に来たんですか?」
2人が一緒にお店に入ってきてびっくりはしたんだ。数回しか顔を合わせていないから。
「いや、お店の前でばったり会ってさ、暢気に挨拶してたらカップの割れる音がしたと思ったら怒声が聞こえたから急いで入ってきたんだ」
あれだけの声だ。お店の外に聞こえていても当然だ。
結局、インターネット掲示板への書き込みもあの彼女がやったっていうことか。優馬さんのことを好きな人。自分の好きな人が他の人を好きなのは悲しい。それが同性なら余計にそうだろう。でも、だからといってやっていいことと悪いことがある。あんなことをやってスッキリすると思ったかもしれないけれど、自分の品位を下げただけで終わった。それって惨めじゃないのかな? そんな風に考えた。
「湊斗くん。僕のせいでごめんね」
そう言って優馬さんは頭を下げる。
「頭を上げてください。優馬さんが悪いことじゃないので」
「そうですよ。悪いのはあの女であって優馬さんじゃないじゃないですか」
涼からもそう言われて優馬さんは頭を上げて、再度ごめんと言った。
「そんなことより、コーヒー飲んでください。優馬さんには今日のブレンドを、涼にはマンデリンを淹れたので」
「ありがとな。俺、マンデリンは湊斗の淹れたのしか飲んでないからな。他の店ではブレンドかアメリカン」
涼がマンデリンは俺が淹れたのしか飲んでないというのはびっくりした。そんなこと知らなかった。
「美味しいっていうコーヒーはさ、こことカフェ・サンクしかないから」
「そう言ってくれてありがとう」
「でも、その気持ちわかるな。美味しいコーヒーを飲みたいって思ったらここだよね。あ、今日のブレンドはなに?」
「今日はモカブレンドです」
「モカブレンドか。モカを使うってあまりないんじゃない?」
「言われてみればそうかもですね。モカはモカで魅力のあるいいものなんですけどね」
「俺、モカ飲んだことあったっけ?」
「ないよ」
「そっかー。じゃ、後でモカ淹れて。ストレートで」
「了解」
涼と優馬さんのコーヒー談義で、お店の中はまるでなにもなかったかのように穏やかになっていった。
コーヒーを淹れながら優馬さんが女性に話しているのを聞いていた。
「なんでこんなことをしたの?」
「……だって、吉澤さんが!」
「僕がなに?」
「こんな男なんかを好きになるから!」
「こんな男って言うけど、じゃあ君は彼のことを知ってるの?」
「それは……知らない、けど。でも!」
「知りもしない人のことをそんな風に言ったり、インターネット掲示板にありもしないことを書いたり、ましてやお店で騒ぐとか普通ならやらないでしょう。ましてや僕はあなたの恋人じゃない。僕が誰を好きでも関係ないよね。それに僕の片想いだ。そんなに面白くないのなら僕に文句を言えばいい。あなたのやったことは威力業務妨害だよ。立派な犯罪だよ。インターネット掲示板に書いたことも罪になるんじゃないかな」
「……」
優馬さんの言葉に女性は言葉をなくしたようだ。
そうしていると警察官が2人連れでやってきて、俺になにがあったのかを訊き、それに答えると女性は連行されていった。俺はなにも言えずに店を出て行くのを見送った。
迷惑をかけたお客さんにお詫びのコーヒーをサーブし、今日のお代は必要ない旨伝える。ゆっくりしたい場所でこんな事件にぶつかるなんてお客さんにとってはいい迷惑だ。
お客さんにお詫びのコーヒーを淹れたあとは優馬さんと涼にもコーヒーを淹れる。優馬さんにはブレンドを、そして涼にはマンデリンを淹れた。
「ありがとうございます。助かりました」
カウンターに並んで座った2人の前にカップを出す。
「一緒に来たんですか?」
2人が一緒にお店に入ってきてびっくりはしたんだ。数回しか顔を合わせていないから。
「いや、お店の前でばったり会ってさ、暢気に挨拶してたらカップの割れる音がしたと思ったら怒声が聞こえたから急いで入ってきたんだ」
あれだけの声だ。お店の外に聞こえていても当然だ。
結局、インターネット掲示板への書き込みもあの彼女がやったっていうことか。優馬さんのことを好きな人。自分の好きな人が他の人を好きなのは悲しい。それが同性なら余計にそうだろう。でも、だからといってやっていいことと悪いことがある。あんなことをやってスッキリすると思ったかもしれないけれど、自分の品位を下げただけで終わった。それって惨めじゃないのかな? そんな風に考えた。
「湊斗くん。僕のせいでごめんね」
そう言って優馬さんは頭を下げる。
「頭を上げてください。優馬さんが悪いことじゃないので」
「そうですよ。悪いのはあの女であって優馬さんじゃないじゃないですか」
涼からもそう言われて優馬さんは頭を上げて、再度ごめんと言った。
「そんなことより、コーヒー飲んでください。優馬さんには今日のブレンドを、涼にはマンデリンを淹れたので」
「ありがとな。俺、マンデリンは湊斗の淹れたのしか飲んでないからな。他の店ではブレンドかアメリカン」
涼がマンデリンは俺が淹れたのしか飲んでないというのはびっくりした。そんなこと知らなかった。
「美味しいっていうコーヒーはさ、こことカフェ・サンクしかないから」
「そう言ってくれてありがとう」
「でも、その気持ちわかるな。美味しいコーヒーを飲みたいって思ったらここだよね。あ、今日のブレンドはなに?」
「今日はモカブレンドです」
「モカブレンドか。モカを使うってあまりないんじゃない?」
「言われてみればそうかもですね。モカはモカで魅力のあるいいものなんですけどね」
「俺、モカ飲んだことあったっけ?」
「ないよ」
「そっかー。じゃ、後でモカ淹れて。ストレートで」
「了解」
涼と優馬さんのコーヒー談義で、お店の中はまるでなにもなかったかのように穏やかになっていった。
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