5 / 17
心がしょんぼり2
しおりを挟む
律くんが暴力を振るわれるのは変わらないようで、その後もうちで湿布を貼って一晩泊めてあげるというのを何度か繰り返した。
事情を知らないから口を挟めないけれど、そこまで暴力を振るわれるのなら家を出ていけばいいのにと思ってしまう。
暴力を振るわれてまで一緒にいたいのだろうか。体中に痣を作ってまで。
律くんに好意を持っている俺としたら家を出ていけばいいのにと思う。
暴力を振るわれているのを見るのは辛い。
でも、暴力を振るっている彼も俺に見られているのを知っていながら暴力をやめないのは驚きだ。
それに律くんが翌日、湿布を貼った状態で帰ってくるのだから、誰かに手当して貰っているのもわかるだろう。
それでも暴力は変わらない。律くんに何か非があって暴力を振るわれているのだろうか。だとしたら目撃されていても暴力は変わらないかもしれない。
本当は律くんに忠告をしたい。逃げた方がいいと。でも彼らの事情を何も知らないから何も言えないのだ。
そしてある週末。ここ2週間くらい律くんを見ていなかった。
暴力を振るわれていないのか、それとも時間が違うのかは知らない。できれば暴力を振るわれていなければ良いけれど。
でもそうなると律くんに会うことはできなくて複雑だと思っていたとき、思いがけないところで律くんを見かけた。
部屋着がだいぶヨレてきたので新しいのを買おうとショッピングモールに行ったときに、律くんがあの彼と一緒にいるのを見かけた。
律くんは暴力を振るっているあの彼の横で、楽しそうな笑顔を浮かべていた。その笑顔は、あぁ、あんなふうに笑う子なんだな、と思わず見惚れてしまうくらいに綺麗だった。
そして、その表情を見てやっぱり二人は恋人だったのだとわかった。
家族に対してあんな表情を見せはしない。
そうか。恋人か。だからあんなに暴力を振るわれていても出ていかないのか。家族ならとっくに出ていっているはずだ。
俺はそのまま通り過ぎることもできるし、そうすべきなのかもしれないけれど、つい声をかけてしまった。
「律くん」
俺が律くんの名前を呼ぶと、律くんと隣の彼とがこちらを向いた。
律くんは俺と会ったことに純粋に驚いていたが、隣の彼は忌々しげに俺を見る。
彼が律くんに暴力を振るっているのを俺は知っていて、恐らく律くんに湿布を貼っているのは俺だと気づいているのかもしれない。
そんな男とばったり会ったって嬉しくないよなと思う。肝心の律くんは隣の彼がそんな顔をしているとは思わないだろうけれど。
「直樹さん! こんなところで奇遇ですね。買い物ですか?」
そういう律くんの顔は驚いていると同時に少し気まずい顔をしている。
それはそうだろう。俺は律くんが隣の彼から暴力を振るわれているのを知っているのだから。
でも俺は敢えて知らないふりをする。
「ちょっと部屋着を買い替えようと思ってね」
「そうなんですね。あ、賢人。こちら直樹さんだよ。うちの階の一番奥の家に住んでる人。すごく親切なんだ。直樹さん、同居人の賢人です」
「どうも?」
賢人と呼ばれた彼は小さく頭を下げながらも上目で俺を見る。ほんとは挨拶なんてしたくないだろう。ただ律くんの手前するしかないだけで。
「高地です。よろしく」
俺も挨拶を返す。笑顔で。
ほんとは笑顔でなんて返したくない。でも律くんが見ている手前、無下にもできないだけで。
「律くんも買い物?」
「ウィンドウショッピングです」
「そうなんだ? 今日はお天気もいいし家にいたくないよね」
「そうなんです。そのついででここまで来たんですけど」
「そうなんだ? お友達といるところ声かけてごめんね」
「あ、いえ。全然」
「じゃあまたね」
「あ、はい」
俺は去っていく2人をじっと見ていた。
俺の律くんに対する好意は少ししょんぼりしたけれど、それでなくなることはないようだった。
あれだけ暴力を振るわれても休みの日にこうやって一緒に出かけるくらいだから、きっと律くんは彼のことが好きなんだろう。
だけど、彼の方はどうなんだろう。律くんに対して気持ちはあるのだろうか? それとも、暴力を振るうだけでなく、出ていけと言えるくらいだから律くんに対して気持ちは残っているのかわからない。
出ていけと言っても翌日には帰ってこい、と言うのだから全く気持ちがないということはないだろう。
少しは律くんに情はあるということだろうけど、だとしたらどうして暴力なんて振るえるのかわからない。
好きな人に暴力を振るうということは俺にとっては理解できないことだった。
事情を知らないから口を挟めないけれど、そこまで暴力を振るわれるのなら家を出ていけばいいのにと思ってしまう。
暴力を振るわれてまで一緒にいたいのだろうか。体中に痣を作ってまで。
律くんに好意を持っている俺としたら家を出ていけばいいのにと思う。
暴力を振るわれているのを見るのは辛い。
でも、暴力を振るっている彼も俺に見られているのを知っていながら暴力をやめないのは驚きだ。
それに律くんが翌日、湿布を貼った状態で帰ってくるのだから、誰かに手当して貰っているのもわかるだろう。
それでも暴力は変わらない。律くんに何か非があって暴力を振るわれているのだろうか。だとしたら目撃されていても暴力は変わらないかもしれない。
本当は律くんに忠告をしたい。逃げた方がいいと。でも彼らの事情を何も知らないから何も言えないのだ。
そしてある週末。ここ2週間くらい律くんを見ていなかった。
暴力を振るわれていないのか、それとも時間が違うのかは知らない。できれば暴力を振るわれていなければ良いけれど。
でもそうなると律くんに会うことはできなくて複雑だと思っていたとき、思いがけないところで律くんを見かけた。
部屋着がだいぶヨレてきたので新しいのを買おうとショッピングモールに行ったときに、律くんがあの彼と一緒にいるのを見かけた。
律くんは暴力を振るっているあの彼の横で、楽しそうな笑顔を浮かべていた。その笑顔は、あぁ、あんなふうに笑う子なんだな、と思わず見惚れてしまうくらいに綺麗だった。
そして、その表情を見てやっぱり二人は恋人だったのだとわかった。
家族に対してあんな表情を見せはしない。
そうか。恋人か。だからあんなに暴力を振るわれていても出ていかないのか。家族ならとっくに出ていっているはずだ。
俺はそのまま通り過ぎることもできるし、そうすべきなのかもしれないけれど、つい声をかけてしまった。
「律くん」
俺が律くんの名前を呼ぶと、律くんと隣の彼とがこちらを向いた。
律くんは俺と会ったことに純粋に驚いていたが、隣の彼は忌々しげに俺を見る。
彼が律くんに暴力を振るっているのを俺は知っていて、恐らく律くんに湿布を貼っているのは俺だと気づいているのかもしれない。
そんな男とばったり会ったって嬉しくないよなと思う。肝心の律くんは隣の彼がそんな顔をしているとは思わないだろうけれど。
「直樹さん! こんなところで奇遇ですね。買い物ですか?」
そういう律くんの顔は驚いていると同時に少し気まずい顔をしている。
それはそうだろう。俺は律くんが隣の彼から暴力を振るわれているのを知っているのだから。
でも俺は敢えて知らないふりをする。
「ちょっと部屋着を買い替えようと思ってね」
「そうなんですね。あ、賢人。こちら直樹さんだよ。うちの階の一番奥の家に住んでる人。すごく親切なんだ。直樹さん、同居人の賢人です」
「どうも?」
賢人と呼ばれた彼は小さく頭を下げながらも上目で俺を見る。ほんとは挨拶なんてしたくないだろう。ただ律くんの手前するしかないだけで。
「高地です。よろしく」
俺も挨拶を返す。笑顔で。
ほんとは笑顔でなんて返したくない。でも律くんが見ている手前、無下にもできないだけで。
「律くんも買い物?」
「ウィンドウショッピングです」
「そうなんだ? 今日はお天気もいいし家にいたくないよね」
「そうなんです。そのついででここまで来たんですけど」
「そうなんだ? お友達といるところ声かけてごめんね」
「あ、いえ。全然」
「じゃあまたね」
「あ、はい」
俺は去っていく2人をじっと見ていた。
俺の律くんに対する好意は少ししょんぼりしたけれど、それでなくなることはないようだった。
あれだけ暴力を振るわれても休みの日にこうやって一緒に出かけるくらいだから、きっと律くんは彼のことが好きなんだろう。
だけど、彼の方はどうなんだろう。律くんに対して気持ちはあるのだろうか? それとも、暴力を振るうだけでなく、出ていけと言えるくらいだから律くんに対して気持ちは残っているのかわからない。
出ていけと言っても翌日には帰ってこい、と言うのだから全く気持ちがないということはないだろう。
少しは律くんに情はあるということだろうけど、だとしたらどうして暴力なんて振るえるのかわからない。
好きな人に暴力を振るうということは俺にとっては理解できないことだった。
36
あなたにおすすめの小説
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ/Ⅱ
MITARASI_
BL
I
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。
揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。
不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。
すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。
切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。
Ⅱ
高校を卒業し、同じ大学へ進学した陸と颯馬。
別々の学部に進みながらも支え合い、やがて同棲を始めた二人は、通学の疲れや家事の分担といった小さな現実に向き合いながら、少しずつ【これから】を形にしていく。
未来の旅行を計画し、バイトを始め、日常を重ねていく日々。
恋人として選び合った関係は、穏やかに、けれど確かに深まっていく。
そんな中、陸の前に思いがけない再会をする。
過去と現在が交差するその瞬間が、二人の日常に小さな影を落としていく。
不安も、すれ違いも、言葉にできない想いも抱えながら。
それでも陸と颯馬は、互いの手を離さずに進もうとする。
高校編のその先を描く大学生活編。
選び続けることの意味を問いかける、二人の新たな物語。
続編執筆中
六日の菖蒲
あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。
落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。
▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。
▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず)
▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。
▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。
▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。
▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
キミがいる
hosimure
BL
ボクは学校でイジメを受けていた。
何が原因でイジメられていたかなんて分からない。
けれどずっと続いているイジメ。
だけどボクには親友の彼がいた。
明るく、優しい彼がいたからこそ、ボクは学校へ行けた。
彼のことを心から信じていたけれど…。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる