あなたが愛してくれたから

水無瀬 蒼

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失踪7

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 それでも、いつまでも泣いていたって仕方がない。身を引くときが来ただけの話だ。
 後天性オメガになって、それで気が緩んでいたけど、オメガになったって身を引くことがあると思っていたはずなのに。本当に気が緩んでいた。
 ぐずぐずしてないで泊まるところを探さなくては。
 とはいえ、どの辺にしたらいいのかわからない。ただ繁華街のど真ん中だと人も多いし、高い。となると、ここみたいな繁華街から少し離れたところがいい。
 でも、ここはホテルがないし、と思ってサイトを見ていると、キャンペーンでいつもより安くなっているチェーン系のホテルを見つけた。
 繁華街から少し離れていて、適度に人がいるし、色んなお店もあるし、いいかもしれない。
 問題は何泊にするか。いつまでも会社を休むわけにも行かない。でも病気ということで休みを取ったから一週間ならなんとかなる。
 着替えも数日分しか持ってきてないし、数日でいいか。でも次の住む家を探す必要もあるから、とりあえず一週間の予約を取った。もし、それより早く見つけられればキャンセルすればいいだけの話だ。
 そして次に不動産サイトに行くが、ここで迷った。どの辺を探したらいいのかわからないのだ。とりあえず、今の職場に通うことも考えなくてはいけないにしても、次の職場にアクセスのいいところ、と考えた場合の次の職場がどうなるのかわからないのだ。
 家が決まらないと仕事が探せないし、仕事が決まらないと家も探せない。
 どうしたらいいんだろう。考えるのにも疲れてきた。ホテルに行って休みたい。でも、チェックインにはまだ少し早かった。アーリーチェックインは可能だろうか。一泊分出てしまうがそれは仕方ない。そう思い、重たい気持ちでホテルへと向かった。
 
 着いたホテルで、アーリーチェックインは可能かどうか訊いたところ、可能だという。しかも一泊分かかるわけではなく、半額程度だったのでアーリーチェックインさせて貰った。
 部屋はシングルなので狭い。けれどベッドは大きかったし、ベッドの手前にあるテーブル兼机は広くてベッドからも手が伸ばせるので便利だ。椅子もソファ式になっていてゆったりできる。
 とりあえず着替えの入ったバッグをソファに起き、ベッドに横になった。
 今日は少し歩いただけで、特に何をした訳でもないのに、妙に疲れていた。それは昨夜、ベッドには入って寝た振りはしたものの一睡もできなかったからだろう。今夜は少しは眠れるだろう。だって家は出てきたから。
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