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失踪3

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 僕たちは美味しいケーキやスコーン、サンドイッチを食べながらイギリスから取り寄せたという紅茶を飲み、最近あった色々な話をした。
 その中で、如月と付き合いのある会社の社長に孫が産まれたらしい、という話になった。僕にはとても痛い話題だ。

「孫が可愛いらしくて、スマートフォンの待ち受けにしていたよ。俺も見せて貰ったけれど、可愛かった。よその子でも可愛いのだから、自分の孫だったらもっと可愛いんだろうな、と思ったよ」

 やっぱり、自分の孫、欲しいって思ったんだろうな。お義父さんも、とても楽しそうに話している。それをお義母さんも隣でにこにこしながら話を聞いている。
 その様子を見ていると、やはり自分たちの血を引いた孫をその手に抱きたいと思っているんだろうな、と思わされる光景だった。
 僕も樹くんと結婚して三年。もう赤ちゃんが産まれていてもおかしくないし、産まれていなくても、妊娠していてもおかしくない。なのに、僕はちっとも妊娠しないのだ。オメガになったのに妊娠もしない。避妊しているわけでもないのに。

「子供が産まれる前からおもちゃや服を買っていて、今はもう物が溢れているらしい」
「そう言ってるけど、お義父さん、樹が産まれてくるときにも、もういらないっていうほどぬいぐるみや服をたくさん買ってきたのよ」

 そうか。樹くんが産まれたときにそうしていたのなら、孫が産まれたら同じようにするだろうな。まして樹くんは一人っ子だから、まだ孫はその手に抱いたことはないんだ。
 そう思うと、申し訳なさで胸がいっぱいになる。

「樹と優斗くんの子供なら絶対に可愛い子だろうから、早く抱きたいものだな」

 お義父さんのその言葉が胸に突き刺さった。そうだよね。早く孫を抱きたいって思うよね。なのに、三年たっても妊娠しないオメガとか。

「父さん!」
「あ、すまない。別に急かしているわけではなくて」
「まぁ、いつかは腕に抱けるから、それまで待っててよ。まだ俺たち二十六だし、もう少し二人でいたいんだよね」

 樹くんがフォローしてくれている。その言葉を唇をぎゅっと噛みしめ聞く。そうするとお義母さんが言葉を繋いだ。

「子供は神様からのプレゼントよ。まだ、っていうことはまだこの子たちには早いということなんだから、この子たちのタイミングを待ちましょう」
「いや、本当にその通りだな。優斗くん、申し訳ない」
「いえ、謝らないでください」

 樹くんとお義母さんにフォローさせて、お義父さんに謝らせて、最低だ、僕。加賀美のオメガを貰ったのに、って思われてないかな。子供を産まない加賀美のオメガなんて価値はない。父の言葉が蘇る。本当にその通りだ。僕は役立たずのオメガだ。役立たずのオメガなんて役立たずのベータよりもたちが悪い。僕はここにいていいんだろうか?
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