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束の間の幸せ9

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 樹くんに離れていって欲しくなくて、僕は自分からキスをした。僕から樹くんにキスをしたのは初めてだ。と言っても触れるだけのキスだけど。

「どうしたの? 優斗からキスをくれるなんて。結婚式のお祝い?」

 樹くんはそう言うと、上から優しいキスのお返しをくれた。でも、そんな優しいキスは初めだけで、角度を変えてキスを繰り返すうちにどんどんと激しいキスに変わっていき、すぐに僕は呼吸が苦しくなった。

「樹くん、苦しい」
「自分からキスするなんて可愛いことした優斗が悪い。俺の火をつけたんだから、どうなるのかはわかるよね」
「寝るんじゃないの?」
「火つけられたら止まらないでしょ」

 そう言うと、僕の唇をぺろりと舐めた後、口の中に樹くんの舌が入ってきて、口の中を縦横無尽に動き回る。その動きに翻弄されて、僕は呼吸をするのが精いっぱいだ。
 
「キスのお礼、するから」

 キスのお礼? なんだろう? 思ったのはほんの一瞬で、服の上から乳首を触られたことで、どういうことなのかわかった。
 僕の咥内を犯していた樹くんの唇は、頬を通り、耳へと来た。僕は特に耳が弱いので、それを知っている樹くんはセックスの初めは執拗なくらい耳を愛撫する。
 耳朶を執拗なくらい食む。耳たぶが溶けて食べられちゃいそうだ。

「んっ……」
「いい声。もっと啼いて」

 耳朶を食むことに満足したのか、今度は耳全体をぱくりとされてしまった。耳全体を散々食まれて、僕は何も考えられなくなる。耳全体を食むことに飽きたのか、耳の中をぴちゃぴちゃと舐められる。
 僕は樹くんの舌の動きに翻弄され、その度に背をのけ反らせる。こうなると僕ができることは、樹くんの愛撫にただただ感じるしかなくなるのだ。耳への愛撫を受けていると、いつの間に脱がされたのか、僕は産まれたままの姿になっていた。
 耳への愛撫で満足な反応を得た樹くんの唇は、喉、鎖骨と通り、胸へと到達する。そしてためらいもなく、胸の頂きを猫がミルクを舐めるように執拗なくらい舐めた後は、乳首にカリッと歯をたてる。甘咬みよりは強いその衝撃に、僕は声をあげる。

「あぁ。そんな、噛まないで」
「なんで? 気持ちいいから?」
「そんな……」
「気持ちいいでしょ? 優斗は甘咬みよりは少し痛めの方が感じるんだよね。知ってるよ」

 そう。樹くんの言う通り、僕は甘咬みよりは少し痛みを感じるぐらいの方が感じてしまうのだ。

「んぅぅ」

 片方の胸は口で好きに愛撫され、もう片方の胸は手で愛撫される。
 手で愛撫されている側の胸は、平らな胸を弄られ、乳輪をなぞるように円を描く。もう片方の胸とは違い、簡単に乳首にはこないで焦らされる。それが焦れったくて焦れったくて、身をくねらせてしまう。

「乳首、弄って欲しいんでしょう。言ってごらん。乳首弄って、って」
「やぁ。言えないぃ」
「言えるでしょう。乳首弄って、っていうだけだよ」
「むり……。意地悪しないで」

 こうなると僕はもう半泣きで、樹くんの言うがままにおねだりしてしまう。

「……乳首、いじって」
「いい子。よく言えました」

 そう言うと樹くんはやっともう片方の僕の乳首も触ってくれる。
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