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オメガになりたい7
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「如月くん!」
それは、樹くんとカフェに行くときのことだった。僕と樹くんが正門を出ようとしたところで、樹くんを呼ぶ人がいた。
振り返ると、綺麗という言葉がぴったりの人がいた。
「僕、剣持薫って言うんだけど」
そう言って剣持くんは、樹くんにニコリと笑った。見る人が見たら綺麗と言うのだろうな、という微笑みだった。
でも、そう言う剣持くんの目には、僕のことは一切目に入っていないんだろうな、という感じがした。
僕はいない方がいいかな? そう思って樹くんの方を見ると、樹くんは僕の視線に気づいたのか、僕に行くな、という視線を送ってくる。
それでも、この後の話の流れが予想がついてしまい、いたたまれない。
しかし、そう思っているのは僕だけなのか。僕は影以下という存在なのか、剣持くんはこちらを気にもしない。
「なんの用? 急ぐんだけど」
返事をする樹くんの声はつれない。樹くんも話の流れは気づいているだろう。だって、モテる樹くんだ。こんな場面は何度も経験しているだろう。
しかし、そんな樹くんの声を一切気にもしないのか、剣持くんは微笑んだままだ。
「じゃあ、単刀直入に言うね。僕、如月くんのこと好きなんだ。だから僕と付き合って欲しいんだ」
剣持くんは僕が樹くんの隣にいるにも関わらず、まるで目に入っていないかのように告白をする。
まるで僕は影かのような扱いだ。いや、影にさえなっていないのかもしれない。それくらい僕のことは無視だ。
そして気になって樹くんの横顔を見ると、眉をしかめて忌々しげな顔をしている。
「ごめん。俺、優斗と付き合ってるから」
樹くんはそう言って僕の肩を抱く。
「知ってる。でも、ベータなんでしょ。そんな暇つぶしは気にしないよ。だから、僕と付き合ってくれないかな? そんなの別れてくれればいいから」
すごく悪意のある言い方だった。
ベータだから暇つぶし。その言葉が胸を抉った。
確かに母からは出来損ないと言われてきた。でも、他人にここまで言われたのは初めてだった。
僕がベータだから暇つぶしで付き合っていて、来るべき人が来たからポイ捨て。そんなことを見ず知らずの他人に言える剣持くんを怖いと思ってしまった。
親に出来損ないと言われるのはまだ仕方ないと思える。でも、他人にまで言われるのか、と思うと鼻の奥がツンとした。
ダメだ。こんなところで泣くな。
「その言い方って、すごく失礼だってわかってる? 悪いけど、俺そういうこと平気で言う人間は嫌いなんだ。それに、俺は優斗とは何があっても別れないから。他をあたってくれる? 行こう、優斗」
樹くんは、こんな声も出せるのか、という冷たい声でそう言った。
スタスタと歩きだした樹くんだけど、僕は気になって振り返ると、そこには鬼のような顔をしてこちらを睨む剣持くんがいた。
それは、樹くんとカフェに行くときのことだった。僕と樹くんが正門を出ようとしたところで、樹くんを呼ぶ人がいた。
振り返ると、綺麗という言葉がぴったりの人がいた。
「僕、剣持薫って言うんだけど」
そう言って剣持くんは、樹くんにニコリと笑った。見る人が見たら綺麗と言うのだろうな、という微笑みだった。
でも、そう言う剣持くんの目には、僕のことは一切目に入っていないんだろうな、という感じがした。
僕はいない方がいいかな? そう思って樹くんの方を見ると、樹くんは僕の視線に気づいたのか、僕に行くな、という視線を送ってくる。
それでも、この後の話の流れが予想がついてしまい、いたたまれない。
しかし、そう思っているのは僕だけなのか。僕は影以下という存在なのか、剣持くんはこちらを気にもしない。
「なんの用? 急ぐんだけど」
返事をする樹くんの声はつれない。樹くんも話の流れは気づいているだろう。だって、モテる樹くんだ。こんな場面は何度も経験しているだろう。
しかし、そんな樹くんの声を一切気にもしないのか、剣持くんは微笑んだままだ。
「じゃあ、単刀直入に言うね。僕、如月くんのこと好きなんだ。だから僕と付き合って欲しいんだ」
剣持くんは僕が樹くんの隣にいるにも関わらず、まるで目に入っていないかのように告白をする。
まるで僕は影かのような扱いだ。いや、影にさえなっていないのかもしれない。それくらい僕のことは無視だ。
そして気になって樹くんの横顔を見ると、眉をしかめて忌々しげな顔をしている。
「ごめん。俺、優斗と付き合ってるから」
樹くんはそう言って僕の肩を抱く。
「知ってる。でも、ベータなんでしょ。そんな暇つぶしは気にしないよ。だから、僕と付き合ってくれないかな? そんなの別れてくれればいいから」
すごく悪意のある言い方だった。
ベータだから暇つぶし。その言葉が胸を抉った。
確かに母からは出来損ないと言われてきた。でも、他人にここまで言われたのは初めてだった。
僕がベータだから暇つぶしで付き合っていて、来るべき人が来たからポイ捨て。そんなことを見ず知らずの他人に言える剣持くんを怖いと思ってしまった。
親に出来損ないと言われるのはまだ仕方ないと思える。でも、他人にまで言われるのか、と思うと鼻の奥がツンとした。
ダメだ。こんなところで泣くな。
「その言い方って、すごく失礼だってわかってる? 悪いけど、俺そういうこと平気で言う人間は嫌いなんだ。それに、俺は優斗とは何があっても別れないから。他をあたってくれる? 行こう、優斗」
樹くんは、こんな声も出せるのか、という冷たい声でそう言った。
スタスタと歩きだした樹くんだけど、僕は気になって振り返ると、そこには鬼のような顔をしてこちらを睨む剣持くんがいた。
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