14 / 57
オメガになりたい7
しおりを挟む
「如月くん!」
それは、樹くんとカフェに行くときのことだった。僕と樹くんが正門を出ようとしたところで、樹くんを呼ぶ人がいた。
振り返ると、綺麗という言葉がぴったりの人がいた。
「僕、剣持薫って言うんだけど」
そう言って剣持くんは、樹くんにニコリと笑った。見る人が見たら綺麗と言うのだろうな、という微笑みだった。
でも、そう言う剣持くんの目には、僕のことは一切目に入っていないんだろうな、という感じがした。
僕はいない方がいいかな? そう思って樹くんの方を見ると、樹くんは僕の視線に気づいたのか、僕に行くな、という視線を送ってくる。
それでも、この後の話の流れが予想がついてしまい、いたたまれない。
しかし、そう思っているのは僕だけなのか。僕は影以下という存在なのか、剣持くんはこちらを気にもしない。
「なんの用? 急ぐんだけど」
返事をする樹くんの声はつれない。樹くんも話の流れは気づいているだろう。だって、モテる樹くんだ。こんな場面は何度も経験しているだろう。
しかし、そんな樹くんの声を一切気にもしないのか、剣持くんは微笑んだままだ。
「じゃあ、単刀直入に言うね。僕、如月くんのこと好きなんだ。だから僕と付き合って欲しいんだ」
剣持くんは僕が樹くんの隣にいるにも関わらず、まるで目に入っていないかのように告白をする。
まるで僕は影かのような扱いだ。いや、影にさえなっていないのかもしれない。それくらい僕のことは無視だ。
そして気になって樹くんの横顔を見ると、眉をしかめて忌々しげな顔をしている。
「ごめん。俺、優斗と付き合ってるから」
樹くんはそう言って僕の肩を抱く。
「知ってる。でも、ベータなんでしょ。そんな暇つぶしは気にしないよ。だから、僕と付き合ってくれないかな? そんなの別れてくれればいいから」
すごく悪意のある言い方だった。
ベータだから暇つぶし。その言葉が胸を抉った。
確かに母からは出来損ないと言われてきた。でも、他人にここまで言われたのは初めてだった。
僕がベータだから暇つぶしで付き合っていて、来るべき人が来たからポイ捨て。そんなことを見ず知らずの他人に言える剣持くんを怖いと思ってしまった。
親に出来損ないと言われるのはまだ仕方ないと思える。でも、他人にまで言われるのか、と思うと鼻の奥がツンとした。
ダメだ。こんなところで泣くな。
「その言い方って、すごく失礼だってわかってる? 悪いけど、俺そういうこと平気で言う人間は嫌いなんだ。それに、俺は優斗とは何があっても別れないから。他をあたってくれる? 行こう、優斗」
樹くんは、こんな声も出せるのか、という冷たい声でそう言った。
スタスタと歩きだした樹くんだけど、僕は気になって振り返ると、そこには鬼のような顔をしてこちらを睨む剣持くんがいた。
それは、樹くんとカフェに行くときのことだった。僕と樹くんが正門を出ようとしたところで、樹くんを呼ぶ人がいた。
振り返ると、綺麗という言葉がぴったりの人がいた。
「僕、剣持薫って言うんだけど」
そう言って剣持くんは、樹くんにニコリと笑った。見る人が見たら綺麗と言うのだろうな、という微笑みだった。
でも、そう言う剣持くんの目には、僕のことは一切目に入っていないんだろうな、という感じがした。
僕はいない方がいいかな? そう思って樹くんの方を見ると、樹くんは僕の視線に気づいたのか、僕に行くな、という視線を送ってくる。
それでも、この後の話の流れが予想がついてしまい、いたたまれない。
しかし、そう思っているのは僕だけなのか。僕は影以下という存在なのか、剣持くんはこちらを気にもしない。
「なんの用? 急ぐんだけど」
返事をする樹くんの声はつれない。樹くんも話の流れは気づいているだろう。だって、モテる樹くんだ。こんな場面は何度も経験しているだろう。
しかし、そんな樹くんの声を一切気にもしないのか、剣持くんは微笑んだままだ。
「じゃあ、単刀直入に言うね。僕、如月くんのこと好きなんだ。だから僕と付き合って欲しいんだ」
剣持くんは僕が樹くんの隣にいるにも関わらず、まるで目に入っていないかのように告白をする。
まるで僕は影かのような扱いだ。いや、影にさえなっていないのかもしれない。それくらい僕のことは無視だ。
そして気になって樹くんの横顔を見ると、眉をしかめて忌々しげな顔をしている。
「ごめん。俺、優斗と付き合ってるから」
樹くんはそう言って僕の肩を抱く。
「知ってる。でも、ベータなんでしょ。そんな暇つぶしは気にしないよ。だから、僕と付き合ってくれないかな? そんなの別れてくれればいいから」
すごく悪意のある言い方だった。
ベータだから暇つぶし。その言葉が胸を抉った。
確かに母からは出来損ないと言われてきた。でも、他人にここまで言われたのは初めてだった。
僕がベータだから暇つぶしで付き合っていて、来るべき人が来たからポイ捨て。そんなことを見ず知らずの他人に言える剣持くんを怖いと思ってしまった。
親に出来損ないと言われるのはまだ仕方ないと思える。でも、他人にまで言われるのか、と思うと鼻の奥がツンとした。
ダメだ。こんなところで泣くな。
「その言い方って、すごく失礼だってわかってる? 悪いけど、俺そういうこと平気で言う人間は嫌いなんだ。それに、俺は優斗とは何があっても別れないから。他をあたってくれる? 行こう、優斗」
樹くんは、こんな声も出せるのか、という冷たい声でそう言った。
スタスタと歩きだした樹くんだけど、僕は気になって振り返ると、そこには鬼のような顔をしてこちらを睨む剣持くんがいた。
20
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説
俺にとってはあなたが運命でした
ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会
βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂
彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。
その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。
それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。
あなたは僕の運命の番 出会えた奇跡に祝福を
羽兎里
BL
本編完結いたしました。覗きに来て下さった方々。本当にありがとうございました。
番外編を開始しました。
優秀なαの兄達といつも比べられていたΩの僕。
αの父様にも厄介者だと言われていたけど、それは仕方がない事だった。
そんな僕でもようやく家の役に立つ時が来た。
αであるマティアス様の下に嫁ぐことが決まったんだ。
たとえ運命の番でなくても僕をもらってくれると言う優しいマティアス様。
ところが式まであとわずかというある日、マティアス様の前に運命の番が現れてしまった。
僕はもういらないんだね。
その場からそっと僕は立ち去った。
ちょっと切ないけれど、とても優しい作品だと思っています。
他サイトにも公開中。もう一つのサイトにも女性版の始めてしまいました。(今の所シリアスですが、どうやらギャグ要素満載になりそうです。)
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!
【完結】それでも僕は貴方だけを愛してる 〜大手企業副社長秘書α×不憫訳あり美人子持ちΩの純愛ー
葉月
BL
オメガバース。
成瀬瑞稀《みずき》は、他の人とは違う容姿に、幼い頃からいじめられていた。
そんな瑞稀を助けてくれたのは、瑞稀の母親が住み込みで働いていたお屋敷の息子、晴人《はると》
瑞稀と晴人との出会いは、瑞稀が5歳、晴人が13歳の頃。
瑞稀は晴人に憧れと恋心をいただいていたが、女手一人、瑞稀を育てていた母親の再婚で晴人と離れ離れになってしまう。
そんな二人は運命のように再会を果たすも、再び別れが訪れ…。
お互いがお互いを想い、すれ違う二人。
二人の気持ちは一つになるのか…。一緒にいられる時間を大切にしていたが、晴人との別れの時が訪れ…。
運命の出会いと別れ、愛する人の幸せを願うがあまりにすれ違いを繰り返し、お互いを愛する気持ちが大きくなっていく。
瑞稀と晴人の出会いから、二人が愛を育み、すれ違いながらもお互いを想い合い…。
イケメン副社長秘書α×健気美人訳あり子連れ清掃派遣社員Ω
20年越しの愛を貫く、一途な純愛です。
二人の幸せを見守っていただけますと、嬉しいです。
そして皆様人気、あの人のスピンオフも書きました😊
よければあの人の幸せも見守ってやってくだい🥹❤️
また、こちらの作品は第11回BL小説大賞コンテストに応募しております。
もし少しでも興味を持っていただけましたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
金色の恋と愛とが降ってくる
鳩かなこ
BL
もう18歳になるオメガなのに、鶯原あゆたはまだ発情期の来ていない。
引き取られた富豪のアルファ家系の梅渓家で
オメガらしくないあゆたは厄介者扱いされている。
二学期の初めのある日、委員長を務める美化委員会に
転校生だというアルファの一年生・八月一日宮が参加してくれることに。
初のアルファの後輩は初日に遅刻。
やっと顔を出した八月一日宮と出会い頭にぶつかって、あゆたは足に怪我をしてしまう。
転校してきた訳アリ? 一年生のアルファ×幸薄い自覚のない未成熟のオメガのマイペース初恋物語。
オメガバースの世界観ですが、オメガへの差別が社会からなくなりつつある現代が舞台です。
途中主人公がちょっと不憫です。
性描写のあるお話にはタイトルに「*」がついてます。
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる