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オメガになりたい2
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樹くんに話そうと思ってもどう言い出せばいいのかわからなかった。
そうやって悶々とした時間をどれくらい過ごしたのだろう。ある時、樹くんの家で映画を観ているときに樹くんが言った。
「何か話したいことがあるんじゃない?」
突然だったから、ドキっとした。
「最近、何か言いたそうな顔してる。どうしたの?」
僕がごちゃごちゃ考えていることなんて、やっぱり樹くんにはお見通しなんだ。
「なんでもいいら言ってごらん。何か言いたいんだろう、とはわかるけど、何が言いたいかまではわからないから、言って。どんなことでもいいから」
「……ほんとになんでもいいの? 呆れたり怒ったりしない?」
「俺は今まで優斗に対して呆れたことも怒ったこともないよ」
確かに今まではない。でも、これが初になるかもしれない。だけど、自分から言い出せない僕では今が言うチャンスだろう。
「僕、オメガになりたい」
「え?」
「樹くんと付き合うまでは、出来損ないでもベータでいいと思ってた。でも、今はオメガになりたい」
「理由訊いてもいい?」
「樹くんとずっと一緒にいたいから」
「俺、ずっと一緒にいようって言ったよね? 優斗がベータでもオメガでも変わらないよ。ずっと一緒にいたいって思ってる」
「でもベータの僕では樹くんの子供は産めないんだ。でも、オメガなら産める」
「なんで子供に拘るの?」
「樹くんはKコーポレーションの跡取りでしょう。そうしたら、いつか子供を望まれる。でも、僕じゃ産めない」
「子供を産めないベータだとダメになるって?」
「樹くんは言わないにしても、樹くんのご両親や周りの人は違うでしょう?」
「でも、ホルモン剤は打ったことあるんだよね?」
「うん。でもオメガにはなれなかった」
「じゃあ、セックスする方を試したい?」
樹くんの口からセックスと聞いてドキドキしてしまった。そのものずばりで。いや、でも他に言い方ないんだけれど。
僕と樹くんは、セックスの経験はある。そんなにしょっちゅうではないけれど。男同士のセックスでは、どうしても受けの僕の方の負担が大きいから、樹くんは僕の体を第一にしてくれている。
「でも、やったからって絶対にオメガになれるわけじゃないよ?」
「わかってる。ダメなら……そのときは諦めるよ」
そう。そのときは別れることを受け入れなきゃいけない。だって、ベータの僕が樹くんを独り占めしていていいわけがないから。
そうやって悶々とした時間をどれくらい過ごしたのだろう。ある時、樹くんの家で映画を観ているときに樹くんが言った。
「何か話したいことがあるんじゃない?」
突然だったから、ドキっとした。
「最近、何か言いたそうな顔してる。どうしたの?」
僕がごちゃごちゃ考えていることなんて、やっぱり樹くんにはお見通しなんだ。
「なんでもいいら言ってごらん。何か言いたいんだろう、とはわかるけど、何が言いたいかまではわからないから、言って。どんなことでもいいから」
「……ほんとになんでもいいの? 呆れたり怒ったりしない?」
「俺は今まで優斗に対して呆れたことも怒ったこともないよ」
確かに今まではない。でも、これが初になるかもしれない。だけど、自分から言い出せない僕では今が言うチャンスだろう。
「僕、オメガになりたい」
「え?」
「樹くんと付き合うまでは、出来損ないでもベータでいいと思ってた。でも、今はオメガになりたい」
「理由訊いてもいい?」
「樹くんとずっと一緒にいたいから」
「俺、ずっと一緒にいようって言ったよね? 優斗がベータでもオメガでも変わらないよ。ずっと一緒にいたいって思ってる」
「でもベータの僕では樹くんの子供は産めないんだ。でも、オメガなら産める」
「なんで子供に拘るの?」
「樹くんはKコーポレーションの跡取りでしょう。そうしたら、いつか子供を望まれる。でも、僕じゃ産めない」
「子供を産めないベータだとダメになるって?」
「樹くんは言わないにしても、樹くんのご両親や周りの人は違うでしょう?」
「でも、ホルモン剤は打ったことあるんだよね?」
「うん。でもオメガにはなれなかった」
「じゃあ、セックスする方を試したい?」
樹くんの口からセックスと聞いてドキドキしてしまった。そのものずばりで。いや、でも他に言い方ないんだけれど。
僕と樹くんは、セックスの経験はある。そんなにしょっちゅうではないけれど。男同士のセックスでは、どうしても受けの僕の方の負担が大きいから、樹くんは僕の体を第一にしてくれている。
「でも、やったからって絶対にオメガになれるわけじゃないよ?」
「わかってる。ダメなら……そのときは諦めるよ」
そう。そのときは別れることを受け入れなきゃいけない。だって、ベータの僕が樹くんを独り占めしていていいわけがないから。
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