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花雨の中5
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花が好きで季節折々、綺麗な花を見ては写真を撮っているという薬井さん曰く、この辺りで八重桜が一番綺麗なのはこれから行くところだと言う。
「日本全国で言ったらわかりませんけどね。でも、この辺りだと間違いなくこれから行くところです。毎年見に行ってるんです。それに八重桜って言っても一種類だけじゃなくて数種類の木があるから長く楽しめるんですよ」
「え、八重桜っていう品種がひとつあるんじゃないんですか?」
「違いますよ。普通のソメイヨシノの花びらは5枚なんですが、それ以上の花びらをつける桜の総称なんです。だから沢山の種類があるんですよ」
「そうなんですね。八重桜っていう品種なのかと思ってました。あ、だから色が薄かったり濃かったりするんですね」
「そうです。さすがに俺も花を見て品種がわかるほど詳しくはないですけどね」
「いや、十分ですよ」
八重桜という品種だと思っていた俺からしたら薬井さんは十分に詳しいと言える。
花を見て綺麗だなと思うことはあるけれど、それがなんという花なのかとかは全くわからない。桜やチューリップ、紫陽花、向日葵、薔薇、コスモス……。それくらいはわかるけれど、それ以外の花なんてよくわからない。
「あ、今日もカメラ持って来たので写真撮りますよ」
「ありがとうございます」
スマホのカメラ性能は良くなっているけれど、さすがに一眼レフには敵わない。最も、一眼レフ並に撮れたらカメラなんて売れなくなってしまうけれど。
薬井さんに会うのは3回目(薬井さん曰く4回目)だけど、薬井さんが話し上手なおかげで会話に変な間が空いて気まずくなったりすることはない。
そんなふうに会話していると車はお目当ての公園に着いた。
駐車場に車を止め、公園の奥へと行く。少し行くと瑞々しい緑の葉にピンク色の花をつけた八重桜が見えてくる。そんな木が並木になっていて、その下を歩くとピンク色の花びらが降ってくる。それはとても綺麗で、そんな綺麗な光景が見られる日本はいいなと思う。
隣を見ると薬井さんがシャッターを切っていた。その口元を見ると口角が上がっているのが見える。写真を撮りながら桜を楽しんでいるんだろう。
今日の写真も薬井さんがくれると言っていたけれど、昼間だからスマホでも撮れるだろうと自分でも何枚か撮ってみる。撮った写真を確認するけれど、どうも綺麗には撮れない。これはカメラ機能の問題ではなく俺の腕が悪いようだ。なので、そこそこ見れる写真を一枚だけ残して他は全て消す。自分のカメラで残せないのなら自分の目に焼き付けるしかない。
「ソメイヨシノもいいけど八重桜もいいですよね」
声が聞こえたので隣を見ると薬井さんはカメラをおろして桜を見ていた。
「そうですね」
「桜を見ると日本に生まれて良かったなって思いますね。綺麗な花はたくさんあるけれど、桜の綺麗さってちょっと違うというか」
言わんとしていることはわかる。
「だから桜の写真はいっぱいあるんですよ。今日もたくさん撮りました。綺麗に撮れたやつ現像しますね」
「お願いします」
今日貰ったソメイヨシノの写真もあるし、殺風景な机の上にでも写真を飾ろうか。家にいながらにして息抜きができるかもしれない。原稿が詰まると引き籠もりになる俺にはいいかもしれない。
「日本全国で言ったらわかりませんけどね。でも、この辺りだと間違いなくこれから行くところです。毎年見に行ってるんです。それに八重桜って言っても一種類だけじゃなくて数種類の木があるから長く楽しめるんですよ」
「え、八重桜っていう品種がひとつあるんじゃないんですか?」
「違いますよ。普通のソメイヨシノの花びらは5枚なんですが、それ以上の花びらをつける桜の総称なんです。だから沢山の種類があるんですよ」
「そうなんですね。八重桜っていう品種なのかと思ってました。あ、だから色が薄かったり濃かったりするんですね」
「そうです。さすがに俺も花を見て品種がわかるほど詳しくはないですけどね」
「いや、十分ですよ」
八重桜という品種だと思っていた俺からしたら薬井さんは十分に詳しいと言える。
花を見て綺麗だなと思うことはあるけれど、それがなんという花なのかとかは全くわからない。桜やチューリップ、紫陽花、向日葵、薔薇、コスモス……。それくらいはわかるけれど、それ以外の花なんてよくわからない。
「あ、今日もカメラ持って来たので写真撮りますよ」
「ありがとうございます」
スマホのカメラ性能は良くなっているけれど、さすがに一眼レフには敵わない。最も、一眼レフ並に撮れたらカメラなんて売れなくなってしまうけれど。
薬井さんに会うのは3回目(薬井さん曰く4回目)だけど、薬井さんが話し上手なおかげで会話に変な間が空いて気まずくなったりすることはない。
そんなふうに会話していると車はお目当ての公園に着いた。
駐車場に車を止め、公園の奥へと行く。少し行くと瑞々しい緑の葉にピンク色の花をつけた八重桜が見えてくる。そんな木が並木になっていて、その下を歩くとピンク色の花びらが降ってくる。それはとても綺麗で、そんな綺麗な光景が見られる日本はいいなと思う。
隣を見ると薬井さんがシャッターを切っていた。その口元を見ると口角が上がっているのが見える。写真を撮りながら桜を楽しんでいるんだろう。
今日の写真も薬井さんがくれると言っていたけれど、昼間だからスマホでも撮れるだろうと自分でも何枚か撮ってみる。撮った写真を確認するけれど、どうも綺麗には撮れない。これはカメラ機能の問題ではなく俺の腕が悪いようだ。なので、そこそこ見れる写真を一枚だけ残して他は全て消す。自分のカメラで残せないのなら自分の目に焼き付けるしかない。
「ソメイヨシノもいいけど八重桜もいいですよね」
声が聞こえたので隣を見ると薬井さんはカメラをおろして桜を見ていた。
「そうですね」
「桜を見ると日本に生まれて良かったなって思いますね。綺麗な花はたくさんあるけれど、桜の綺麗さってちょっと違うというか」
言わんとしていることはわかる。
「だから桜の写真はいっぱいあるんですよ。今日もたくさん撮りました。綺麗に撮れたやつ現像しますね」
「お願いします」
今日貰ったソメイヨシノの写真もあるし、殺風景な机の上にでも写真を飾ろうか。家にいながらにして息抜きができるかもしれない。原稿が詰まると引き籠もりになる俺にはいいかもしれない。
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