10 / 30
花雨の中2
しおりを挟む
「都谷先生、ですよね?」
声のする方へ顔を向けると、そこには金髪で薄いブルーのサングラスをした男がいた。誰だ? 夜にサングラス? それが怖くて後ずさると、そう思ったことに気づかれたのかサングラスを外す。そこで現れた顔はこの間パーティーで紹介された薬井さんだった。
「こんばんは。驚かせてしまってすいません。でも、こんなところで先生にお会いできるとは思いませんでした」
それはこっちのセリフだ。なんでこんなところで会うのだろうか。
「先生はこの辺に住まわれているんですか?」
「ええ、まぁ」
「そうなんですね。僕は隣の市に住んでいるんですが、桜が綺麗だと言うのでそろそろ桜の時期も終わるから夜桜を見に来たんです。綺麗ですよね」
「ええ」
ふと薬井さんの手元を見ると一眼レフを手に持っていた。
「写真ですか?」
「はい。写真は単純に後で見返すこともできるし、後から絵にするときに見ることもできるし。なので出かけるときはカメラを持っていることが多いんです。って、単に写真が好きなんですけどね」
「今日はもう撮ったんですか?」
「ええ。奥の方で数枚」
「絵を描く方だからスケッチをするのかと思ってました」
「スケッチもしますよ。でも、結構写真に撮って、それを見ながら思いだして絵にすることもします。スケッチって時間かかるし」
言われてみれば確かにそうだ。スケッチには時間がかかるだろうし、こんな暗いところではスケッチはできない。
しかし、絵を描く人は写真も好きなのだろうか。よくわからないけれど共通するところもあるのだろうか。
「先生は気分転換ですか?」
「ええ。締め切り近いのに全然進まなくて。だから気分転換に桜でも見ようかと思って。最近は家に籠もってたから桜を見ていなかったので」
「そうか。それでこんな風に会えるなんてラッキーだな。遠出してきて良かった。でも、先生が忙しいとなるとそれだけ読むものがあるってことですよね。早く読みたいな。今はなにを書いてるんですか?」
「今はアンソロジーです。ミステリーのアンソロジー」
「アンソロジーか。他にどんな先生が書くんですか?」
「長生先生も書かれますよ。千屋の勤めてる出版社から出ます」
「そうなんですね。楽しみがひとつ増えたな。ありがとうございます。頑張って下さい」
「ありがとうございます」
薬井さんはにこにことこちらを見ているけれど、人見知りの俺は一度会っただけの人となにを話したらいいのかわからなくて黙ってしまう。
人好きしそうなこの人にはそう言ったことはないのだろうか。この人は人見知りもしないみたいだし。
「先生、まだ見てますか?」
ふいにそう声をかけられてスマホで時間を確認すると、結構ここにいたみたいだ。最後に桜でも撮ってから帰ろうか。最近のスマホは夜景も綺麗に撮れるらしいし。
「良かったら写真現像しましょうか?」
「え?」
「素人なんでそんなに上手く撮れてはいないと思うけど、一眼レフだからスマホよりは綺麗かなって」
「いいんですか?」
「はい」
確かにいくらスマホのカメラ性能が良くなっても一眼レフには敵わない。
「じゃあ先生の連絡先教えて下さい。現像しておきます」
そう言ってスマホを出してくるのでメッセージアプリで連絡先を交換する。
「現像が出来たら連絡しますね。先生がお忙しいなら住所を教えて頂ければ送りますし」
「ありがとうございます」
「もう帰るなら送りますよ」
「え、いや、迷惑だし。それに近いので」
「迷惑なんかじゃないです。ほら、もう夜も遅いし。行きましょう」
薬井さんは急かすようにそう言うと、にっこりと笑ってから俺に背を向けて歩き出す。
どうしたらいいのかわからなくて少しの間そこに突っ立っていると、薬井さんは俺を振り返る。
「ほら、行きましょう先生」
念押しで言われると断ることもできずに薬井さんの後をついて歩きだした。
声のする方へ顔を向けると、そこには金髪で薄いブルーのサングラスをした男がいた。誰だ? 夜にサングラス? それが怖くて後ずさると、そう思ったことに気づかれたのかサングラスを外す。そこで現れた顔はこの間パーティーで紹介された薬井さんだった。
「こんばんは。驚かせてしまってすいません。でも、こんなところで先生にお会いできるとは思いませんでした」
それはこっちのセリフだ。なんでこんなところで会うのだろうか。
「先生はこの辺に住まわれているんですか?」
「ええ、まぁ」
「そうなんですね。僕は隣の市に住んでいるんですが、桜が綺麗だと言うのでそろそろ桜の時期も終わるから夜桜を見に来たんです。綺麗ですよね」
「ええ」
ふと薬井さんの手元を見ると一眼レフを手に持っていた。
「写真ですか?」
「はい。写真は単純に後で見返すこともできるし、後から絵にするときに見ることもできるし。なので出かけるときはカメラを持っていることが多いんです。って、単に写真が好きなんですけどね」
「今日はもう撮ったんですか?」
「ええ。奥の方で数枚」
「絵を描く方だからスケッチをするのかと思ってました」
「スケッチもしますよ。でも、結構写真に撮って、それを見ながら思いだして絵にすることもします。スケッチって時間かかるし」
言われてみれば確かにそうだ。スケッチには時間がかかるだろうし、こんな暗いところではスケッチはできない。
しかし、絵を描く人は写真も好きなのだろうか。よくわからないけれど共通するところもあるのだろうか。
「先生は気分転換ですか?」
「ええ。締め切り近いのに全然進まなくて。だから気分転換に桜でも見ようかと思って。最近は家に籠もってたから桜を見ていなかったので」
「そうか。それでこんな風に会えるなんてラッキーだな。遠出してきて良かった。でも、先生が忙しいとなるとそれだけ読むものがあるってことですよね。早く読みたいな。今はなにを書いてるんですか?」
「今はアンソロジーです。ミステリーのアンソロジー」
「アンソロジーか。他にどんな先生が書くんですか?」
「長生先生も書かれますよ。千屋の勤めてる出版社から出ます」
「そうなんですね。楽しみがひとつ増えたな。ありがとうございます。頑張って下さい」
「ありがとうございます」
薬井さんはにこにことこちらを見ているけれど、人見知りの俺は一度会っただけの人となにを話したらいいのかわからなくて黙ってしまう。
人好きしそうなこの人にはそう言ったことはないのだろうか。この人は人見知りもしないみたいだし。
「先生、まだ見てますか?」
ふいにそう声をかけられてスマホで時間を確認すると、結構ここにいたみたいだ。最後に桜でも撮ってから帰ろうか。最近のスマホは夜景も綺麗に撮れるらしいし。
「良かったら写真現像しましょうか?」
「え?」
「素人なんでそんなに上手く撮れてはいないと思うけど、一眼レフだからスマホよりは綺麗かなって」
「いいんですか?」
「はい」
確かにいくらスマホのカメラ性能が良くなっても一眼レフには敵わない。
「じゃあ先生の連絡先教えて下さい。現像しておきます」
そう言ってスマホを出してくるのでメッセージアプリで連絡先を交換する。
「現像が出来たら連絡しますね。先生がお忙しいなら住所を教えて頂ければ送りますし」
「ありがとうございます」
「もう帰るなら送りますよ」
「え、いや、迷惑だし。それに近いので」
「迷惑なんかじゃないです。ほら、もう夜も遅いし。行きましょう」
薬井さんは急かすようにそう言うと、にっこりと笑ってから俺に背を向けて歩き出す。
どうしたらいいのかわからなくて少しの間そこに突っ立っていると、薬井さんは俺を振り返る。
「ほら、行きましょう先生」
念押しで言われると断ることもできずに薬井さんの後をついて歩きだした。
16
あなたにおすすめの小説
悋気応変!
七賀ごふん
BL
激務のイベント会社に勤める弦美(つるみ)は、他人の“焼きもち”を感じ取ると反射的に号泣してしまう。
厄介な体質に苦しんできたものの、感情を表に出さないクールな幼なじみ、友悠(ともひさ)の存在にいつも救われていたが…。
──────────
クール&独占欲強め×前向き&不幸体質。
◇BLove様 主催コンテスト 猫野まりこ先生賞受賞作。
◇プロローグ漫画も公開中です。
表紙:七賀ごふん
あなたと夕陽と心
すずかけあおい
BL
光輝が海司に呼び出されて行った飲み会に来た男性・千明は、海司から光輝を奪ってその場から連れ出し、「大切にするから、そばにいてほしい」と言って抱き締めた。
〔攻め〕千明(ちあき)30歳
〔受け〕光輝(みつき)26歳
〔光輝の彼氏?〕海司(かいじ)29歳
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる