ダークオベリオン ~剣と魔法が支配する世界~ 

詩樹

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第11章 新たなる仲間

宮殿への探索

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長いこと馬で移動中、さすがに馬も疲れてきたのか、息切れをしているようにも見えた。
森の中に丁度開けた場所があり、きれいな川も流れていた。

「なぁ涼音、ここらで休憩しないか?馬も疲れてるようだし、腹も減って来たしなー」

「そうね。今日はここで野宿するしかないわね。夜になれば魔物の出現も考えて交代交代で見張りをして休もっか」

和人と涼音は馬を降り、薪を集め、火を焚くとルークからもらった食料を料理して昼食をとった。
馬は川の水を飲み草を食べてくつろいでいる感じだった。

「はぁー、野宿か・・・女の子にとっては最悪だわ。でも仕方ないわね。街まではまだまだ先だしね。あ、私、ちょっとあっちの方で水浴びしてくるわ。ぜーったいに覗いちゃダメなんだからね!」

「誰がお前の身体なんか覗くかよ。まったく興味なんかねぇーよ。ふっ、俺の嫁は2次元にいるのさ~」

「まーたヲタクなことばっか言って。あんたって、ほんと昔から変わらないわね。まぁいいわ、ちょっと行ってくる」

和人は草むらに横になり、雲の流れを見ながら思いふけっていた。
これから先に、何が待ち受けているのか。元の世界に帰るすべはあるのか。
ほどなくすると、さっぱりした顔で涼音が戻って来た。
日は傾き始め夕暮れに差し掛かっていった。

「日が落ちる前に薪を拾ってくるよ。火が消えたら、もしも魔物が出てきたら対処できないからな。拾って来たら、先に俺が休むから、涼音が見張りをしておいてくれる?夜が更けると共に夜行性の何かが襲ってくるかもしれないから、出てきたら俺が対処するから」

和人は立ち上がり、森の中に入っていった。
焚き木になりそうな木を山ほど持ってくると和人は横になり仮眠をとった。
そして、夜が更け、夜空には満天の星空と綺麗な月が輝いていた。

「和人、起きて。交代の時間だわ。私も仮眠をとるから、見張りよろしくね」

交代で涼音が仮眠を取るために横になった。
静まり返った森は川のせせらぎと夜行性の鳥だろうか、鳴き声が聞こえてくる。

「このまま明け方まで寝かせてやるか。さて、水の魔法書でも読んで明け方までに何か習得しておくか。ルークの村のところにあった遺跡は今日的な魔物だったしな。この先、更に手強くなりそうだし、覚えておくに越したことはないな」

そして、闇が深まり、星々が輝き始める頃、森の奥から奇妙な音が聞こえてきた。
和人は戦闘態勢をとり、音のする方に忍び寄ってみると、複数の魔物が見えた。

「あれは・・・こっちにはまだ気づいていないみたいだな。一発で塵にするか。でも魔物だからといって悪意を持った魔物ばかりとも限られないし、どうするかな、気づいてないようだし、そろそろ夜が明ける。戦わずにやり過ごすか」

和人はひっそりと身を隠して元の場所に戻ると焚き火を消して気づかれないようにした。
ほどなくすると、夜明けが来た。
まだ朝日は昇っていないが、涼音を起こした。

「おい、起きろ涼音。そろそろ夜明けだ」

「んー・・・あと5分だけ~」

朝に弱い涼音を起こすのにはいつも一苦労していた。
寝ぼけている涼音を激しくゆすって無理やり起こすと、涼音はハッと目を開けて起きた。
朝食を食べながら和人は地図を広げるとこれからの方針を話し出した。

「デルフィーまではあと少しだが、どうする?とりあえず、街を見回って宮殿とやらの情報を集めるか?それともギルドがあるって話だから簡単な依頼を受けて少し資金を貯めるか?」

「資金は後回しでも良いんじゃないかしら。私もお金持ってるし、情報を集めるのが先決だと思う。たぶん、宮殿というくらいだから広いだろうし、魔物の住処になっている可能性も高いわ。前回は運よく弱点があったから何とかなったけど、この先、もっと強い魔物が出るかもしれないから、情報集めを先にしましょ。今までのパターンから行くと、また古代文字もありそうだし、何かが隠させ例る可能性も高いわ。」

和人は涼音の考えに頷き、荷物をまとめるとデルフィーへと出発した。
太陽が大分上ってきた頃、遠くの方にかすかだが街が見えてきた。
そして涼音が指をさした。

「たぶん、あそこね。急ぎましょ」

二人は昼食は取らずに馬を走らせて速足でデルフィーへと向かった。
街の入り口まで行くと兵士が二人立っていて、警備もしっかりしているように思えた。
旅の途中だと説明をすると、快く街に入れてくれた。
まずは宿屋を探し、馬を降りて宿を借りた。
村と違って少し豪勢な感じの宿屋で代金も少し高かったが支払いを済ませると、二人は食堂へ向かいランチを食べていると、色々な会話が聞こえてくる。
魔物の数が大分増えたことや、デュランダルとヴァリアスとの戦争の激化。
その中でも一番気になったのは古代の宮殿について話している一団だった。
古代の宮殿には、錬金術師が作り出した至宝が眠っているという噂が広まっているとのことだった。

「宮殿は錬金術師が集う場所だったらしいな。宮殿の奥には、古代の名のある錬金術師が作り出したと言われてる至宝があるらしいよ。それを手に入れれば、力を得ることができるとかって話だ。どんな力なんだろうな」

涼音が興味津々で、その一団の話している様子に、和人も興味を持った。

「それは確かに魅力的だな。でも、宮殿は魔物の住処になって誰も近づけないって話だ。用心しないといけないな。情報を集めたら、宮殿に向かおう。」

二人は食事を終えると、宿の近くにあるギルドへ向かった。
ギルドでは、冒険者たちが集まり、依頼を受けたり情報を交換したりしている場所だった。
ギルドの掲示板には、さまざまな依頼が掲示されていた。
中には、宮殿の魔物討伐といった依頼もあったが賞金は結構な額だった。

「どうする?依頼を受ける?結構な賞金だから強力な魔物がいると思うけど。誰か誘って依頼を受ける?それとも自分たちで宮殿に入る?」

和人が涼音に尋ねる。
涼音はどうするか考えこんでいた。
それなりの賞金ということはかなりの危険を伴う可能性が高いし、強さも知らない仲間を募っても足手まといになりかねない。
だが、二人で行くのも少々心もとない。

「ねぇ、和人。ここの人たちに回復援護の魔法が得意な人はいないかしら?むやみに戦わせるよりも、援護魔法が得意な人を仲間にした方が足手まといにはならないと思うのよ」

「んー、それが無難かな。夕べさ、お前が寝てる間に水の魔法の書でいくつか習得した魔法があるんだよ。攻撃と援護の魔法な。強さも分からんやつを誘うよりも俺たちが前に出て戦った方が効率がいいよな。それなりに場数は踏んでるし」

二人は周りを見渡すと、何やらペットを連れた少女に目が留まった。
いかにも魔法を使えますって格好をしていることから近寄って涼音が話しかけてみた。

「ねぇ、ちょっといいかしら。あなたもギルドで仕事を探しに来ているの?援護魔法とかなんか使えたりしない?」

「え?私ですか?私は攻撃できないからこの子に戦ってもらってるの。私はテイマーなの。風系統の魔法で援護魔法と攻撃魔法なら少しは使えますよ。主にこの子、ケルビーに援護の魔法をかけて戦ってもらってるの。でも難しい依頼は受けたことがありませんよ」

見た目は同じくらいの年齢で名前はエリーと名乗り、ペットは3段階まで変形できるらしいことが分かった。
涼音たちも自己紹介をして事情を説明すると、心よく引き受けてくれた。

「エリーちゃん、ありがと。宿代と食事代は私たちが出すわ。それと賞金も半分あげるわ。エリーちゃんは後方で回復と援護魔法に集中して私たちが戦うから。たぶん、その子にも戦ってもらうことになると思うけど、それでいいかしら?」

エリーもどうやら旅をして回っているらしい。
目的はデュランダルとヴァリアスの戦争の被害にあって離れ離れになった両親を探し回っているとのこと。
涼音はフレンドリーな性格のおかげで少し警戒していたエリーの心をやわらげ、手をつないで受付係のところに行って署名をして依頼を受けることになった。
その後、エリーを連れて宿屋に向かい部屋に着くなり、テーブルに地図を広げた。

「宮殿の位置は・・・ここからそう遠くないわね。明日の朝に出発でいいかしら?」

涼音が言うと、エリーも懐から地図を2枚取り出してテーブルにを広げた。
それは宮殿内部の構造の地図と涼音たちが持っているよりも細かく乗っているデュアル領土の地図だった。
地図には、所々丸印が付いていて、それについて聞くとエリーが旅をして回った場所だった。

「エリーも災難だったな。両親と離れ離れになってどれくらい経つんだ?俺たちも旅してまわってるから、特徴を教えてくれれば手伝えるかもしれんな」

和人が言うとエリーは少し悲しげな表情をして話し始めた。

「私の家はヴァリアス領土とデュランダル領土に近い小さな村に住んでいました。3年くらい前に大規模な戦争が起こって、村が全滅してしまいました。村人の半数は巻き込まれて死んでしまって、家とかも殆ど燃えてしまって、生き残った人たちは散り散りになってしまいました。ヴァリアス領土に向かった人もいましたが、私の両親はデュランダル領土のどこかにいるはずなんです」

「なるほどなー。あの2国も下らんことするなー。いっそうのこと二つの国をつぶしちまうかー。そうすれば戦争もなくなるしな」

和人は冗談交じりに行ってはみるが、デュランダルもヴァリアスも強大な戦力とかなりの兵士の数がいる。
とても太刀打ちできたものではない。

「エリーちゃん、私の部屋で一緒に寝よっか。明日の朝、早朝に宮殿に向かいましょ」

涼音はエリーの手を取り、涼音は部屋へ戻り翌朝を待った。
同じベッドで横になりながら涼音は色々なことを聞いたり、今までの旅の話をしたりして打ち解けていた。
エリーの両親は小さな村に引っ越す前にデュランダルの城下町に住んでいたらしく、司書官をしていたらしく、古代文字も読めるという。
エリーは学業にはげみ、父親からも古代文字を教えてもらっていたらしい。

「そうなんだ~。エリーちゃんは古代文字の他にも古代の魔法文字も読めたりするの?」

「はい、少しだったらなんとか読むことが出来ると思います。もともと私が魔法を使えるようになったのは、お父さんがヴァリアス出身で魔法の書を持っていて、お父さんから教わりました。その魔法の書が古代の魔法文字だったんです。お母さんはデュランダルの生まれで元々は城の近衛兵をして居ました。お母さんからも剣の稽古もしてもらっていました。私には剣術の素質はあまりなかったので強くはないです。ソートソードを使えるくらいです」

思わぬ情報に涼音は驚いていた。
もし読めるのなら、探す手間も省けるし、何よりも魔法も使えてケルビーを従えている。

「へぇ~。エリーちゃんは案外何でもできるのね。頼りにしてるわ。明日からよろしくね!おやすみなさい」

「あ、はい。頑張ります。パーティーを組むなんて初めてでドキドキしますが、よろしくお願いします。おやすみなさい」

翌朝になると3人は荷物をまとめて、準備を整えると食堂へ行き、朝食を済ませてから、宮殿に向かって出発した。
和人と涼音は馬での移動だが、和人はエリーを見て少しびっくりしていた。

「あれ?エリー、エルビーはケルビーに乗って移動してるんだな。昨日は小さかったけど、なんか狼みたいだな」

「はい、これはケルビーの2段階目の変形なのです。移動するときは、いつもケルビーに乗って移動してます。とっても速いし変形すると攻撃力も上がるんです」

和人は一人で旅が出来ている理由が飲み込めた。
恐らくはケルビーは結構な戦闘力があるかもしれないと思っていた。
すると涼音が前方を指さした。

「和人、エリーちゃん、あれじゃない?たぶん目的地の宮殿ね」

目的地が見えると、足早に移動して到着すると、馬の手綱を適当な場所にくくりつけて和人たちは宮殿を眺めた。

「結構な大きさだな~。またボロボロなのかと思ったけど、他の遺跡よりはひどくは崩れていないな。
魔物の数や強敵がいるのか情報を集めればよかったな」

3人は周りを見渡しながら奥へと足を踏み入れていった。
物静かで3人の足音が響き渡っていて壁を見ても遺跡のように壁画とかはなく、今のところ、謎めいたところはない。
更に奥に進むと少しだけ開いた扉があり、和人はおもむろに開けてみた。
そして3人が目にしたものは、魔物の大群。
小型だが、数はザっとみて100体くらいでボスらしき魔物は見受けられなかった。
更に、その奥に扉があり、そこに行くにはすべての魔物を排除しなければならない。

「どうする?おれの範囲魔法で一網打尽にしてみるか?気づかれてはいないし詠唱ならいつでもできるぞ」

「遺跡と違って丈夫そうだし、多少威力のある魔法を使っても崩れそうにないわね」

エリーは考えがあるようでおもむろに口を開いた。

「和人さんは炎の魔法を得意としているんですよね?私の風魔法と相性が良さそうな気がします。ここは二人で協力して魔力を温存してみてはどうでしょうか?奥の部屋に手強い魔物がいた時に消耗は最小限に抑えてボスらしい魔物がいた時のために・・・」

「なるほど、そういう手もあるのか・・・確かに、炎に風を乗せれば威力は増しそうだな~。で、俺はどんな魔法を使えばいい?判断はエリーに任せるよ」

エリーはしばらく考えると和人に、最小の出力で放てる範囲魔法を提案してきた。
その範囲魔法にエリーの風の範囲魔法を乗せて威力を上げるのだという。

「魔力を抑えるとエクスプロードだけど、小規模な爆発しかできないし、中範囲ならフレアブレスかな。でも一塊になっていないから、もっと広範囲の方が良いのかな?スピリームエクスプロードなら多少多めの魔力は使うけど広範囲だよ?」

「和人さんの方が魔力が高いので、フレアブレスというのを使っていただけますか?私はそうですねぇ~。ケルビーが3段階の変形で一か所に集めて、ウィンドジェイルという補助魔法なんですけど、主に対象者を拘束する魔法を使ってから、和人さんに合わせて、タイフーンという広範囲の魔法を使ってみようと思います。うまくいくかはやってみないとわかりませんが、どうでしょうか?・・・」

和人はエリーの立てた作戦に乗ることにした。涼音は待機して魔物を取りこぼしたら対処してもらう役割になった。
エリーはケルビーを3段階まで変形させて、ケルビーが突進してかく乱して一か所に集めようとしている。
ケルビーが下がった頃合いを見計らって、エリーが和人に合図してフレアブレスを放つと同時に、エリーもタイフーンを放った。
フレアブレスがタイフーンによって炎の竜巻となり、魔物は次々と倒れていく。
しかし、大規模ではないため、逃した魔物も少数だが残っている。
魔物はこちらに気づき、立ち向かてきた。

「私の出番ね!行くわよ!」

涼音が素早く前に出ると水の力を帯びた剣で魔物を切っていくが、魔物の中には素早い動きをするタイプもいて和人とエリーに少数の魔物が向かっていった。
エリーはすかさず、ウィンドウォールという風の障壁を創り出し、攻撃が届く直前で食い止めることに成功した。
ケルビーが戻り炎を帯びた爪で魔物を切り刻んでゆく。
涼音もそれに合わせて交代して取りこぼした魔物を水の刃を飛ばして倒していった。

「ふぅ・・・危なかったな~。なぁ、エリー。エルビーってなんなんだ?ただの動物じゃないよな?」

「はい。ケルビーは炎の化身なのです。精霊に近い存在なんです。私が魔力を送ると変形していきます。私の大切なお友達なのです」

エリーは微笑むと、近づいてきたケルビーをなでていた。
ケルビーの初期は小さな感じで、2段階目は狼のようになり、3段階目は魔人のようにも見えた。

「もしかしてケルビーってものすごく強いのか?」

エリーは基本的にはケルビーに援護魔法をかけてケルビーが主体で戦っていると言っていた。
涼音も和人も唖然としていた。
エリーは頭の回転も魔法発動速度もかなり速い。

「エリーって凄いのね!びっくりしちゃったわ。ケルビーも強いし心強い味方だわ。ありがとね。さて、先へ進みましょうか」

3人は次の扉を開けると、中には魔物の姿は見えない。
どうやら安全な部屋のようだ。
周りを見渡すと本棚がいくつかあり、何かの文献が並んでいた。
3人は早速調べると、本は全てが古代の魔法文字だった。

「んー、これはわからんな・・・エリー、何か重要な文献がないか調べてもらっても良いかな?」

えりーも興味津々で本をあさり始めた。
なんでも錬金術に関する文献がいっぱいあるようだった。
数時間の間、本を読み漁ったエリーでも読めないものはあったものの、一冊の本を和人と涼音に見せてきた。

「この本なんですがどうでしょうか?色々見たのですが私にも読めないのはありましたが、ほとんどが錬金術のルーツだとか貴金属を変換するのとかもありましたが、この本・・・ほかの本とは違いまず。数名の高位の錬金術師たちがまとめて書いた本みたいです。至高の宝石を創り出した文献みたいです。難しい文字もあって全て解読できたわけではないのですが、作り方と使い方と、その効果について書かれているようです。」

「じゃあ、この本は持ち帰って専門家を探して解読してもらおうか。よし、じゃあ、奥にある扉を開いて先に進もうか」

すると、ケルビーがうなり声を上げ始めた。
どうやら、奥には何かいそうな気配らしい。

「次が多分最後の部屋なのかもしれないわね。ケルビーの様子から見ると何かいるわね。警戒して入りろっか」


3人は慎重に奥の扉を開け、部屋に進んだ。
すると、そこには巨大な魔物が待ち構えていた。
身長は3メートル以上あり、全身が硬い鱗に覆われている。
その目つきは赤い光を帯びて、いかにも凶暴な雰囲気をかもし出して3人を見つけるとうなり声をあげてきた。
武器は巨大な剣を持ち、剣を振り上げて襲いかかってきた。
3人は一瞬ひるんで、和人が叫んだ。

「これはヤバそうなやつだな!エリー、涼音、覚悟しろ!」

和人は杖をを抜き、涼音も剣を抜き、剣に水の力を込めて剣を構える。
一方、エリーは詠唱を始めた。

「和人さん、涼音さん、私が攻撃を引きつけます。その隙に、お二人が攻撃を仕掛けてください!」

エリーの声に従い、和人と涼音は魔物に向かって突進した。
和人は魔法でフレイムカッターを使い鱗を切り裂き、さらに切り裂いた個所を涼音の水の刃を纏った剣で魔物の身体を貫いた。
しかし、魔物は簡単には倒れなかった。

「これでは致命傷にはならない!エリー、風魔法を放て!」

和人の指示に従い、エリーは詠唱を始めた。

「わかりました、涼音さん、離れてください!」

涼音は素早く後退するとエリーの両手から風魔法を放った。

「いきます!ハイ・エアブレスー」

そして、彼女の手から生まれ、魔物に向かって飛んでいき大きな風が生まれる。
ハイ・エアブレスは攻撃と補助魔術。
風の力で敵に圧力をかけて動きを封じつつ、強力な攻撃ともなる。
それと同時に和人も炎の高位魔法を放つ。

「俺の炎の力ものせてみる・・・いっけー!フレアドラゴンブレス!」

風魔法との効果で威力が上がって魔物を激しい炎で包み込む。

しかし、魔物は炎を身体で受け止め、全くダメージを受けていない様子だった。「なんて頑丈な魔物なんだ!」と和人が驚く中、魔物は再び襲いかかってきた。

「やばい、このままじゃやられる!エリー、何か対策はないか!?」

エリーは一瞬考え込んだ後、目を輝かせて言った。

「和人さん、涼音さん、私の魔法を受け止めてください!」

それぞれがエリーの魔法に身を守る準備を整えると、エリーは再び詠唱を始めた。
彼女の手には光り輝く宝石が浮かんでいた。

「これは風の結晶なのです。触れれば、一時的に強大な力を得ることができます。和人さん、涼音さん、さあ、受け止めてください!」

和人と涼音は結晶を受け取り、その力を身に纏った。
すると、彼らの身体は一瞬で変化し、力強くなり、涼音の水を帯びた剣が輝き始めた。
魔物は驚き、一瞬足を止めるが武器を構える。
その隙に和人と涼音は一斉に攻撃を仕掛けた。
和人は風の力で威力を増したグレイトフレイムランスを放ち、魔物の身体に深い傷をつけ、涼音の水を帯びた鋭いを魔物の傷をめがけて突き刺さした。

魔物は苦悶の声を上げながら倒れ、部屋は静寂に包まれた。

「やった!倒したぞ!エリー、ありがとう!」

「いえ、まだです!ケルビー!お願い!」

エリーが叫ぶと弱ってきている魔物は、ゆらりと立ち上がると同時にケルビーの炎を帯びた鋭い爪で傷を負った場所に追い打ちをかけた。
魔物の身体は真っ二つになり、激しく燃え上がった。

「なんとか倒せたな・・・エリーがいなかったら倒せなかった・・・」

和人はエリーに感謝の言葉を伝えると、涼音も笑顔で頷いた。

「これで最後の敵も倒したね。さあ、至宝の宝石を手に入れるためにも、奥の部屋に進みましょ」

3人は再び宮殿の最深部へと進んでいった。
果たして、彼らはどんな至宝の宝石や秘密を見つけるのだろうか。
扉を開けると、他の遺跡と同様に石でできた箱から光が薄っすらと見えた。

「たぶん、あれね。錬金術師が作ったと言われてる至宝の宝石だと思う」

近づくと、やはり横には石碑があり、古代の魔法文字が刻まれている。
和人が宝石を手にすると、力がみなぎってくるのが感じとれた。
エリーは横にある石碑を眺めて解読しようとしている。
涼音は念のために警戒して、周りを見渡している。

「これはいったい・・・力が体の底からみなぎってくる。持つだけでも効果があるのか?」

「この文字は難しいですね・・・専門家に任せないと。私には解読できそうにないです」

エリーにも読めない文字。
果たして何が書かれているのだろうか。
石碑の文字をメモして、見つめた本と宝石を持ち帰ることにした。

「さっさと退散しよう。今の状態で強力な魔物でも出たらまずい。俺は宝石の効果なのか力が湧いてくるけど、エリーの魔力の消耗がやばいだろ」

3人は足早に神殿を抜け出して外に出た。

「日が傾きかけているわね。夜になると厄介なことになりそう。お腹もすいたし、汗だくでお風呂にも入りたいわ」

二人は馬にまたがり、エリーはケルビーに乗り、デルフィーへと戻った。
途中で、何人かの冒険者とすれ違ったが、恐らくギルドから来たパーティーだろう。

「俺たちとはち合わせなくて良かったな。守りながらの戦闘は、今の俺には無理だ。とりあえず、街へ急ごう」

和人に頷くと速度を上げて足早にデルフィーへと戻った。
解読は明日に回して、疲れ切った体を休める為に宿を予約してから食堂へ向かって、明日まで休息をとることにした。

3人は宿に着いた後、それぞれが疲れを癒すために部屋に戻った。

和人はベッドに寝転がりながら、今日の戦闘を思い出していた。
自分たちが魔物を倒すことができたのは、エリーの魔法と涼音の剣技があったからだ。

「本当に助かったな。エリーの力がなかったら、俺たちも魔物にやられていたかもしれない。さらに強くならないと、この先まずいな」

そう思いながら、和人はエリーに感謝の気持ちを抱いた。

一方、涼音は自分の剣を手に取りながら、その刃に映る自分の姿を見つめていた。

「これで最後の敵も倒せた。でも、まだ自分の力には限界があるわね。更に水の力を強化して強くならないとまずそうね。」

涼音は自分の成長を意識しながらも、まだまだ強くなるために努力を重ねる決意を固めた。

一方、エリーは風の結晶を手に取り、その光を見つめていた。風の結晶の力は彼女に新たな思いを感じさせた。

「この結晶の力を使って、もっと強くなりたい。自分の魔法をもっと高めて、仲間を守れる存在になりたい」

エリーは願いを込めて結晶を握りしめると、自分自身に誓いを立てた。

3人はそれぞれの思いを抱きながら、次の冒険に備えるために休息をとった。
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