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俺と彼女の、未来をかけた戦い

私の中をあなたでいっぱいにして②

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「ってかさ、こうして出かけるっていうか……デートするのも初めてだよな?」

 恥ずかしさを飲み込みながらそう口にすると「デ、デート」と吉良坂さんの顔が真っ赤になった。

「まあ、いろいろすっ飛ばそうとした関係だからね。私たちは」

 その赤くなった顔を誤魔化すように、吉良坂さんは鼻頭を人差し指でかいていた。

 すっ飛ばしたではなく、すっ飛ばそうとした関係であることが、本当に悲しかった。

「それに私たち、会うって言ったらいつも学校だったもんね」
「こうして外で会うのも、かえって新鮮でいいいよな」

 そうだね、と同意した吉良坂さんが晴れ渡る空を見上げて目を細める。

「私ね、こういうのを夢見てたんだなって、いまわかったの。男の子と手をつないで、休日にこうしてまったりと出かけるのが、すごく幸せだって思えてる」
「意外と普通の女の子なんだな」
「その言い方はこれまで私を普通じゃないって思ってた言い方な気が」
「これまでの俺たちのかかわわり方を思い返してみませんか?」
「ううう、宮田下くんのいじわる」
「これまでいじわるしてた方はどっちだったかな?」

 会話がどんどん弾んでいく。その最中に、なにも言わずに吉良坂さんが手の握りを、指の一本一本を絡め合う恋人つなぎに変えてきたので、俺もなにも言わずに その変化を受け入れた。

 楽しい。

 心地よい。

 今日が晴れで本当によかった。

 雨でも相合い傘ができたからそれもいいな。

 曇りだったら涼しくてもっと過ごしやすかったかも。

 つまり天気なんてどうでもいい。

 吉良坂さんが横にいる。

 それだけでいいんだ。

 これから先、どんな人生を俺が歩もうとも、今日という日が幸せのピークになる。

 そんな幸せなのか不幸せなのかわからない悲しい予感が、胸の内側でくすぶっていることに、いまは気がつかないふりをしておこう。

 だって、今日が間違いなく人生の幸せのピークなのだから。

「あっ、そうだ。宮田下くん」

 肩をつんつんされたので立ち止まると、吉良坂さんが背伸びをして俺の耳元に口を近づけ、ひそひそ声でささやいた。

「ワンピースの下、なにも穿いてないって言ったら、どうする?」

 吐息交じりの声が聞こえた瞬間、心臓が喉を突き破って口から飛び出そうになる。身体が一瞬にして熱くなったのも、吉良坂さんの腰の当たりに視線が向かってしまったのも、不可抗力だから。

「ふふふ、冗談です。ちゃんと穿いてるから、安心して」

 俺の反応が予想通りだったのか、吉良坂さんはくすくすと笑っている。

「ちなみにあの赤のTバックだよ」
「種類までいう必要あったか?」
「信じてないってこと? だったらいまここでたしかめてみる?」
「たしかめないよ」
「あれ? わたし本当に穿いてきたかな? わからないから宮田下くんたしかめて」
「それが感覚でわからないならいますぐ病院に行こうか」
「それはだめ。今日は穿いていようが穿いていまいがどっちでもいいから、一緒に過ごすの。早く行こ」

 吉良坂さんからからかってきたんですけどねと思ったが、この少しエッチなからかいがものすごく懐かしく思えて涙ぐみそうになった。

 それに……穿いてないか、赤ね。

 端的に言ってどっちでもすごくエロいですよ。

 とりあえずどっちも想像して……俺は慌てて素数を数え始めた。
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