47 / 68
俺と彼女の、せいしをかけた戦い
せいしをかけた戦い④
しおりを挟む
俺が湯船につかっている間に吉良坂さんは草飼さんとどこかに消えてしまった。風呂に押し入って来るのかと思って慌てて鍵を閉めたけど、そんなことはなかった。そこまで強引なことはしないらしい。
濡れた髪をバスタオルでゴシゴシやりながらリビングに戻る。まだ誰もいないじゃん、と思ったらすぐに吉良坂さんがやってきた。しかも着替えている。
「宮田下くん、ど、どう?」
「ど、どうって」
吉良坂さんの身体をまじまじと見つめる。彼女はいま白のシャツの上から赤いニットを着ており、破壊力抜群の胸のふくらみがいつもより強調されている。
下は黒のミニスカートに黒のタイツ。
なんだか、読書の秋を擬人化したかのような姿だ。
知的でクールなイメージ。
だが彼女はこの服の下にいい感じに透けている、俺好みの花柄レースピンク下着を身に着けているのだ!
「そ、そんな見つめられると、は、恥ずかしいよ」
「ご、ごめん。普通に知的でいいなって思って。でもなんでわざわざ着替えたの?」
いまの吉良坂さんの格好も捨てがたいが、もこもこパジャマ姿も名残惜しかった。
「そ、それは……あ、あとで宮田下くんに楽しんでもらうためです!」
「俺が、楽しむ?」
「はい。なので着替えました」
いやいや、なので着替えましたって全然意味わかんないんですけど。
「そ、それより早く髪を乾かさないと風邪をひきますよ。私はその間に夕ご飯の用意をしますので」
「え? 吉良坂さんが作るの?」
「というよりもう作ってあります。草飼に手伝ってもらいながらですが」
「じゃあ今日はそのために学校を休んだの?」
「はい」
こくりとうなずく吉良坂さん。
「あ、あの、私が作ったんじゃ、ダメ、ですか?」
「そんなことないよ。女の子にご飯を作ってもらって、嬉しくない男なんていないよ」
「ほんとですか?」
太陽のようににぱっと笑う吉良坂さん。
女の子に、ではなくて吉良坂さんに、と言えなかったことを反省する必要はないみたいだ。
「あ、ありがとうございます。じゃあいまから用意しますね」
吉良坂さんが小走りでキッチンへ向かう。
あれ?
そういえば草飼さんはどこへ?
そんなことを思いながら、俺はドライヤーで髪を乾かす。それを終えると同時に、吉良坂さんから「用意できました」の声が聞こえた。
俺はダイニングテーブルのもとへ向かう。
「お、おお」
ダイニングテーブルの上にはいろんな料理が並んでいた。色とりどりの野菜となにか白い身――鯛だろうか――と牡蠣の入ったお鍋、鮑の姿焼き、アボカドとサーモンのお刺身に鰻の蒲焼まである。魚介類のフルコースって感じだな。
「すごい、どれもおいしそうだ」
「あ、ありがとうございます」
「このお鍋の中に入ってる魚はなに?」
「ああ、それは魚ではなくてスッポンです」
「ス、スッポン?」
想像の斜め上の単語が飛び出した。
「あの、一度噛むと中々離してくれないあのスッポン?」
「はい。食べると精力がつくと噂のスッポンです。それに精力アップに欠かせない牡蠣を合わせてみました」
ん? なんだか嫌な予感がしてきたぞ?
「じ、じゃあこれは?」
「これは、メスのあわびです」
言い方! ってか貝に性別なんてあるんですか?
「じゃあこっちは」
「サーモンもアボカドも身体を元気にしてくれるらしいです」
「ってことは鰻も……」
「そこまで女の子に言わせるんですか?」
「いや、やっぱりもういいです」
これはひどいー。
ってか吉良坂さん、なんか今日いろいろと振り切れてませんか?
「どうしたんですか? やっぱりお気に召さないですか?」
「そ、そんなことはないよ。ただ」
たしかに目の前にある料理は、精力のつく食材だったり、エッチなものを連想させたりするものばかりだが、おいしそうに見えることに変わりわない。
だけど――。
「その、一番奥に置かれてるそれは?」
「これは私が食べるものです。女の子なので夜はあまり食べないようにしていますから」
「いやいや、それでもおかしいでしょ? だってフフフ、フランクフルトって」
しかもめちゃくちゃでかくて長い。
「おかしいですか? 私、フランクフルト大好きなんですけど?」
純粋な顔のまま首をかしげる吉良坂さん。
「いや、まあ……百歩譲ってフランクフルトが好きだから食べるってのはわかる。でもその横になんで生クリームがあるんだ?」
「このとろっとろで濃厚な味わい白いのをフランクフルトにつけて食べるんです。これが意外とおいしいんです」
予想通りの答えが返ってきた!
ってかあからさますぎてもはや潔い!
「い、いや、さすがにフランクフルトと生クリームは合わないでしょ」
「食わず嫌いはよくないです。食べ物の好みは人それそれですから」
そうそう。女の子の下着の好みが人それぞれであるようにね! ってバカ!
「ま、まあそうだな。吉良坂さんが好きなら、いいんだけど」
「はい。早速いただきましょう」
そんなこんなで、俺は吉良坂さんが作ってくれた料理を食べることになった。
料理はどれも最高においしくて、頬が落ちるとはこのことかと実感した。
吉良坂さんは食べる俺をじっと見つめていたが、「おいしい」の言葉を聞いた瞬間、にぱあっと笑ってくれた。
「じゃあ私も、しゃぶりつきますね」
しゃぶりつくと食べるは同義語として辞書に載ってるのかぁ。さすが小説家志望は知識や語彙力が違うなぁ。
俺が心の中で吉良坂さんにツッコんでいる――ここで言うツッコんでるは漫才のツッコむだからね――間に、吉良坂さんは太くて長いフランクフルトの先端に白くてとろーりとした生クリームをたっぷりつけて、
「ああっ、大きくて、ふ、太い」
だの、
「はうっっ、ちちょっと、濃すぎます」
だの、
「こんな大きいのお口に入りません」
だの、
「んあっ、あ、お口の中がトロトロで、濃くて、おいひすぎます」
だの、わけのわからないことを口にしていた。
うん! 吉良坂さんって妄想力の化け物だったんだね!
俺も妄想力の化け物になりそうだよ!
濡れた髪をバスタオルでゴシゴシやりながらリビングに戻る。まだ誰もいないじゃん、と思ったらすぐに吉良坂さんがやってきた。しかも着替えている。
「宮田下くん、ど、どう?」
「ど、どうって」
吉良坂さんの身体をまじまじと見つめる。彼女はいま白のシャツの上から赤いニットを着ており、破壊力抜群の胸のふくらみがいつもより強調されている。
下は黒のミニスカートに黒のタイツ。
なんだか、読書の秋を擬人化したかのような姿だ。
知的でクールなイメージ。
だが彼女はこの服の下にいい感じに透けている、俺好みの花柄レースピンク下着を身に着けているのだ!
「そ、そんな見つめられると、は、恥ずかしいよ」
「ご、ごめん。普通に知的でいいなって思って。でもなんでわざわざ着替えたの?」
いまの吉良坂さんの格好も捨てがたいが、もこもこパジャマ姿も名残惜しかった。
「そ、それは……あ、あとで宮田下くんに楽しんでもらうためです!」
「俺が、楽しむ?」
「はい。なので着替えました」
いやいや、なので着替えましたって全然意味わかんないんですけど。
「そ、それより早く髪を乾かさないと風邪をひきますよ。私はその間に夕ご飯の用意をしますので」
「え? 吉良坂さんが作るの?」
「というよりもう作ってあります。草飼に手伝ってもらいながらですが」
「じゃあ今日はそのために学校を休んだの?」
「はい」
こくりとうなずく吉良坂さん。
「あ、あの、私が作ったんじゃ、ダメ、ですか?」
「そんなことないよ。女の子にご飯を作ってもらって、嬉しくない男なんていないよ」
「ほんとですか?」
太陽のようににぱっと笑う吉良坂さん。
女の子に、ではなくて吉良坂さんに、と言えなかったことを反省する必要はないみたいだ。
「あ、ありがとうございます。じゃあいまから用意しますね」
吉良坂さんが小走りでキッチンへ向かう。
あれ?
そういえば草飼さんはどこへ?
そんなことを思いながら、俺はドライヤーで髪を乾かす。それを終えると同時に、吉良坂さんから「用意できました」の声が聞こえた。
俺はダイニングテーブルのもとへ向かう。
「お、おお」
ダイニングテーブルの上にはいろんな料理が並んでいた。色とりどりの野菜となにか白い身――鯛だろうか――と牡蠣の入ったお鍋、鮑の姿焼き、アボカドとサーモンのお刺身に鰻の蒲焼まである。魚介類のフルコースって感じだな。
「すごい、どれもおいしそうだ」
「あ、ありがとうございます」
「このお鍋の中に入ってる魚はなに?」
「ああ、それは魚ではなくてスッポンです」
「ス、スッポン?」
想像の斜め上の単語が飛び出した。
「あの、一度噛むと中々離してくれないあのスッポン?」
「はい。食べると精力がつくと噂のスッポンです。それに精力アップに欠かせない牡蠣を合わせてみました」
ん? なんだか嫌な予感がしてきたぞ?
「じ、じゃあこれは?」
「これは、メスのあわびです」
言い方! ってか貝に性別なんてあるんですか?
「じゃあこっちは」
「サーモンもアボカドも身体を元気にしてくれるらしいです」
「ってことは鰻も……」
「そこまで女の子に言わせるんですか?」
「いや、やっぱりもういいです」
これはひどいー。
ってか吉良坂さん、なんか今日いろいろと振り切れてませんか?
「どうしたんですか? やっぱりお気に召さないですか?」
「そ、そんなことはないよ。ただ」
たしかに目の前にある料理は、精力のつく食材だったり、エッチなものを連想させたりするものばかりだが、おいしそうに見えることに変わりわない。
だけど――。
「その、一番奥に置かれてるそれは?」
「これは私が食べるものです。女の子なので夜はあまり食べないようにしていますから」
「いやいや、それでもおかしいでしょ? だってフフフ、フランクフルトって」
しかもめちゃくちゃでかくて長い。
「おかしいですか? 私、フランクフルト大好きなんですけど?」
純粋な顔のまま首をかしげる吉良坂さん。
「いや、まあ……百歩譲ってフランクフルトが好きだから食べるってのはわかる。でもその横になんで生クリームがあるんだ?」
「このとろっとろで濃厚な味わい白いのをフランクフルトにつけて食べるんです。これが意外とおいしいんです」
予想通りの答えが返ってきた!
ってかあからさますぎてもはや潔い!
「い、いや、さすがにフランクフルトと生クリームは合わないでしょ」
「食わず嫌いはよくないです。食べ物の好みは人それそれですから」
そうそう。女の子の下着の好みが人それぞれであるようにね! ってバカ!
「ま、まあそうだな。吉良坂さんが好きなら、いいんだけど」
「はい。早速いただきましょう」
そんなこんなで、俺は吉良坂さんが作ってくれた料理を食べることになった。
料理はどれも最高においしくて、頬が落ちるとはこのことかと実感した。
吉良坂さんは食べる俺をじっと見つめていたが、「おいしい」の言葉を聞いた瞬間、にぱあっと笑ってくれた。
「じゃあ私も、しゃぶりつきますね」
しゃぶりつくと食べるは同義語として辞書に載ってるのかぁ。さすが小説家志望は知識や語彙力が違うなぁ。
俺が心の中で吉良坂さんにツッコんでいる――ここで言うツッコんでるは漫才のツッコむだからね――間に、吉良坂さんは太くて長いフランクフルトの先端に白くてとろーりとした生クリームをたっぷりつけて、
「ああっ、大きくて、ふ、太い」
だの、
「はうっっ、ちちょっと、濃すぎます」
だの、
「こんな大きいのお口に入りません」
だの、
「んあっ、あ、お口の中がトロトロで、濃くて、おいひすぎます」
だの、わけのわからないことを口にしていた。
うん! 吉良坂さんって妄想力の化け物だったんだね!
俺も妄想力の化け物になりそうだよ!
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる