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俺と彼女の、せいしをかけた戦い
せいしをかけた戦い②
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「ありがとう宮田下くん」
吉良坂さんはほっとしたように目を閉じた。
うん。俺いまやばいこと口走っていましたね、はい。
「下着はリビングにあるタンスの三段目に入ってるから好きなの選んで。バスタオルもその棚の上にあるから」
「わかったよ。テキトーに選ぶわ」
「適当、ね。どんなのでも、覚悟して待ってる」
「なんか違う意味で伝わった気がするんだけど。曖昧な日本語のせいしておくよ」
「うん。私につけて欲しい下着、じっくり選んでね」
インターホンがぷつりと切れる。
いやいや、漏れそうだから早く選ばなきゃいけないんじゃないのかよ。
なんか上手く口車に乗せられた気がする。
でも、言ってしまったものは仕方がない。
べ、別に吉良坂さんの下着コレクションが見られて嬉しいなぁなんて思ってないよ!
いまは緊急事態だからね。
「えっと……これか?」
吉良坂さんが言っていたタンスは、上にバスタオルが乗っていたのですぐに見つかった。
「三段目……だったよな?」
手汗がすごい。いまから女子がせっせと溜め込んだ秘宝を……じゃなくて吉良坂さんの下着を仕方なく見なければいけない。
そして吉良坂さんに穿いて欲しいものをじっくり選んで……じゃなくてテキトーに選ばなければいけない。
うん。
どんな言葉を使っても端的に意味がわからなすぎるなこの状況。
ゆっくりと引き出しを開けると、神々しい光ととも、色とりどりの布地が姿を現した。
色ごとに整頓しているあたりやっぱ女子だな。
いや、これはメイドの草飼さんの仕事か。
とりあえず、俺は本当にテキトーに下着を手に取った。
「……な、なんだこれ」
そう呟いてしまうのも無理はないと思ってくれ。俺が手に取ったのは、股の部分に真珠のような白い球が五つ連なっている、紫の妖艶な下着だった。
「これはだめだ。……こっちは」
次に手に取ったのは赤のTバック。いかんいかんエロすぎると別のを手に取ると、今度は股の部分がぱっくりと割れている下着だった。しかもそれとセットになっているブラジャーはおっぱいを包むというよりおっぱいを囲むと言った方が正しいしやつ。フリルのついている三つの紐がただ繋がっているだけ。
なんだこれは? 下着は隠すものなのに隠す気がまるでないじゃないか! 全然実用的じゃないのにものすごく実用的だという矛盾ははらんでいるけれども! その他の下着もエロいものばかりで…………。
ん?
幼い子供が穿くようなクマの柄が入ったパンツがあるけどこれはどうして?
「えっと、普通の普通のは……って」
俺はようやく気がついた。
そうか!
これは俺をはめようとしているんだ!
吉良坂さんがこんな実用的じゃないのに極めて実用的なエロい下着を持っているはずがない!
きっとこのタンスの中身は草飼さんのだ。こんなエロい下着を穿いている帆乃様を想像して愉しんでたんですか? なんて言って草飼さんは俺をからからかう気なんだ。
「ははーん。そういうことね。これは草飼さんの下着。こんな幼稚な手法に俺が引っかかるわけないじゃん」
「いいえ宮田下様。それは正真正銘、帆乃様のですよ」
「またまたー。もう俺は騙されませんよ」
「なにを勘違いしていらっしゃるのですか? これらは間違いなく帆乃様の下着です」
「……え? まじ?」
草飼さんそれマジで言ってます? これが吉良坂さんの? こういうのが趣味なの?
「さぁ、早く帆乃様のもとにあなた好みの下着を持っていってあげてください」
「そう、か。この下着は全部吉良坂さんが……っていったいつ帰ってきたんだよ!」
気が付くと、草飼さんが俺の横に立っていた。
「つい先ほど帰ってきましたが。宮田下様があまりにも真剣に、帆乃様の下着を頬にすりすりしたりかぶったりしてたので」
「そんなことはしてないだろ?」
「宮田下様があまりにも真剣に帆乃様の下着を凝視して妄想して」
「そんなことはし……」
そこで言葉が止まる。ごめんなさいそれはしてました。間違いなくしてました。
「浴室の中にいる帆乃様は、きっといまの宮田下様を見て恥ずかしがってるでしょうね」
「あ……」
そうだったぁ! 中からは外が丸見えなんだった! ってことはいま俺がどれを穿いてもらおうか吟味してる姿をずっと見られてたってことですよね?
「違うんだ吉良坂さん! 俺は吉良坂さんのために実用的な下着をきちんと選ぼうと!」
俺は磨りガラスの方に駆け寄って、必死で弁明する。
「なるほど、宮田下様は、夜の実用的な下着を選ぼうとしていたと」
夜の、ってつけたらどんな言葉でもエロく聞こえるからやめて!
「そっちの実用的じゃない! ただの下着として実用的なものを」
「いま帆乃様は身をよじらせて恥ずかしがっていることでしょうね。なんせ宮田下様が磨りガラスの真ん前で中を凝視してるのですから」
またまたそうだったぁ! こっちから見えなくても向こうからは丸見えなんだったぁ!
「せっかくですし、磨りガラスを普通のガラスにして裸で恥ずかしがる帆乃様の写生大会を」
「しなくていい!」
写生大会については言及しません。
俺は磨りガラスに背を向けて、ローテーブルの上のリモコンを取ろうとしてた草飼さん声で制する。
「ってか帰ってきたなら草飼さんが持って行けばいいじゃないか!」
吉良坂さんはほっとしたように目を閉じた。
うん。俺いまやばいこと口走っていましたね、はい。
「下着はリビングにあるタンスの三段目に入ってるから好きなの選んで。バスタオルもその棚の上にあるから」
「わかったよ。テキトーに選ぶわ」
「適当、ね。どんなのでも、覚悟して待ってる」
「なんか違う意味で伝わった気がするんだけど。曖昧な日本語のせいしておくよ」
「うん。私につけて欲しい下着、じっくり選んでね」
インターホンがぷつりと切れる。
いやいや、漏れそうだから早く選ばなきゃいけないんじゃないのかよ。
なんか上手く口車に乗せられた気がする。
でも、言ってしまったものは仕方がない。
べ、別に吉良坂さんの下着コレクションが見られて嬉しいなぁなんて思ってないよ!
いまは緊急事態だからね。
「えっと……これか?」
吉良坂さんが言っていたタンスは、上にバスタオルが乗っていたのですぐに見つかった。
「三段目……だったよな?」
手汗がすごい。いまから女子がせっせと溜め込んだ秘宝を……じゃなくて吉良坂さんの下着を仕方なく見なければいけない。
そして吉良坂さんに穿いて欲しいものをじっくり選んで……じゃなくてテキトーに選ばなければいけない。
うん。
どんな言葉を使っても端的に意味がわからなすぎるなこの状況。
ゆっくりと引き出しを開けると、神々しい光ととも、色とりどりの布地が姿を現した。
色ごとに整頓しているあたりやっぱ女子だな。
いや、これはメイドの草飼さんの仕事か。
とりあえず、俺は本当にテキトーに下着を手に取った。
「……な、なんだこれ」
そう呟いてしまうのも無理はないと思ってくれ。俺が手に取ったのは、股の部分に真珠のような白い球が五つ連なっている、紫の妖艶な下着だった。
「これはだめだ。……こっちは」
次に手に取ったのは赤のTバック。いかんいかんエロすぎると別のを手に取ると、今度は股の部分がぱっくりと割れている下着だった。しかもそれとセットになっているブラジャーはおっぱいを包むというよりおっぱいを囲むと言った方が正しいしやつ。フリルのついている三つの紐がただ繋がっているだけ。
なんだこれは? 下着は隠すものなのに隠す気がまるでないじゃないか! 全然実用的じゃないのにものすごく実用的だという矛盾ははらんでいるけれども! その他の下着もエロいものばかりで…………。
ん?
幼い子供が穿くようなクマの柄が入ったパンツがあるけどこれはどうして?
「えっと、普通の普通のは……って」
俺はようやく気がついた。
そうか!
これは俺をはめようとしているんだ!
吉良坂さんがこんな実用的じゃないのに極めて実用的なエロい下着を持っているはずがない!
きっとこのタンスの中身は草飼さんのだ。こんなエロい下着を穿いている帆乃様を想像して愉しんでたんですか? なんて言って草飼さんは俺をからからかう気なんだ。
「ははーん。そういうことね。これは草飼さんの下着。こんな幼稚な手法に俺が引っかかるわけないじゃん」
「いいえ宮田下様。それは正真正銘、帆乃様のですよ」
「またまたー。もう俺は騙されませんよ」
「なにを勘違いしていらっしゃるのですか? これらは間違いなく帆乃様の下着です」
「……え? まじ?」
草飼さんそれマジで言ってます? これが吉良坂さんの? こういうのが趣味なの?
「さぁ、早く帆乃様のもとにあなた好みの下着を持っていってあげてください」
「そう、か。この下着は全部吉良坂さんが……っていったいつ帰ってきたんだよ!」
気が付くと、草飼さんが俺の横に立っていた。
「つい先ほど帰ってきましたが。宮田下様があまりにも真剣に、帆乃様の下着を頬にすりすりしたりかぶったりしてたので」
「そんなことはしてないだろ?」
「宮田下様があまりにも真剣に帆乃様の下着を凝視して妄想して」
「そんなことはし……」
そこで言葉が止まる。ごめんなさいそれはしてました。間違いなくしてました。
「浴室の中にいる帆乃様は、きっといまの宮田下様を見て恥ずかしがってるでしょうね」
「あ……」
そうだったぁ! 中からは外が丸見えなんだった! ってことはいま俺がどれを穿いてもらおうか吟味してる姿をずっと見られてたってことですよね?
「違うんだ吉良坂さん! 俺は吉良坂さんのために実用的な下着をきちんと選ぼうと!」
俺は磨りガラスの方に駆け寄って、必死で弁明する。
「なるほど、宮田下様は、夜の実用的な下着を選ぼうとしていたと」
夜の、ってつけたらどんな言葉でもエロく聞こえるからやめて!
「そっちの実用的じゃない! ただの下着として実用的なものを」
「いま帆乃様は身をよじらせて恥ずかしがっていることでしょうね。なんせ宮田下様が磨りガラスの真ん前で中を凝視してるのですから」
またまたそうだったぁ! こっちから見えなくても向こうからは丸見えなんだったぁ!
「せっかくですし、磨りガラスを普通のガラスにして裸で恥ずかしがる帆乃様の写生大会を」
「しなくていい!」
写生大会については言及しません。
俺は磨りガラスに背を向けて、ローテーブルの上のリモコンを取ろうとしてた草飼さん声で制する。
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