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俺と彼女の、せいしをかけた戦い
見つめていた先には
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「え? どこにもいないですけど」
俺はもう一度部屋の中を見渡す。
これがかくれんぼならかなり才能あるぞ。
「いえ。帆乃様はたしかにこの部屋の中にいらっしゃいます」
「だからどこですか?」
「さっきあなたが、食い入るように見つめていたところです」
「はっ?」
俺は、俺がさっきまで見つめていた場所、部屋の隅にある磨りガラスの方を見る。
「じ、じゃあ、この中ってこと?」
「さようでございます。帆乃様はその中で全裸になっております」
「ぜ、全裸?」
吉良坂さんって裸族だったの?
「なにをそんなに驚いているのですか? そこは浴室ですので当然全裸です」
「よよよよよよよ浴室っ?」
「はい。帆乃様はいま入浴中です。しかもこの磨りガラスは特殊でして、外から中は見えませんが中からは外が丸見えとなっております」
なにそのマジックミラー号的な浴室は! 設計者はなにを意図してガラス張りのお風呂をリビングから見えるようにしたんだ…………あれ?
「中からは外が丸見えって言いました?」
「はい」
草飼さんが深々と頷く。
ああああああああああああああ!
ってことはさっき俺が食い入るように中を覗こうとしてたの、中にいた吉良坂さんからは全部見えてたってこと?
「帆乃様はあなたに裸を凝視されている感覚を存分に味わっていたことでしょうね。ああ羨ましい!」
「身をよじらせるな! わざわざ言葉にするな! 最初から言え! ってかなんだよこの構造は! 常識的に考えておかしいだろ!」
リビングにマジックミラー号的な浴室を作るなんて正気の沙汰じゃないぞ!
「ちっともおかしくありません。このマンションは世界的に有名な建築家が設計した、最先端のデザイナーズマンションです」
「デザイナーズって言葉の便利さが憎い!」
普通に変な構造だろ!
風呂に入ってるのを見られたいって、ここの設計者も住んでる金持ちたちも変態の集まりなの?
草飼さんに真実を告げられてしまったからか、磨りガラスの向こう側からシャワー音が聞こえ始めた気がする。
そのシャワーを浴びている吉良坂さんは当然、裸。
髪の毛は淫らに濡れ、絹のような肌の上を水滴がつつーと身体のラインに沿って滑り落ちていく。
「あ、ちなみにこのリモコンで磨りガラスを普通のガラスにすることもできますが?」
「結構です!」
「そうですか。じゃあこれはここに置いておきますね」
草飼さんは俺に見せつけるようにして、ダイアモンドより貴重なリモコンを俺の目の前のローテーブルの上に置く。
「私は少々席を外します、買い忘れたものがありましたので」
「どうしてリモコンを置いていくのかなぁ! 俺を一人にしようとするのかなぁ!」
「ちなみに、この磨りガラスを普通のガラスに変えても、中の人は気づきませんのでご安心ください」
「いったいなにに安心すればいいのやらさっぱりわかりません」
俺は磨りガラスに背を向けるようして座りなおした。……だめだ。シャワーの音が聞こえてくる。いまちゃぷんって音しなかったちゃぷんって! 裸の吉良坂さんが湯船に足を入れた音じゃないの?
「とにかく私は買い出しに行ってまいります。どれくらいの時間が必要ですか?」
「そんなことを聞かれる意味がわからないんですけど」
「特に他意はありません」
「だったら早く買い出しに行ってください」
これ以上このエロメイドと会話していたら失言しかねない。
「わかりました。早く私を追い出して一人になった後で、帆乃様のお身体をご堪能になるおつもりですね」
「そうじゃない!」
「ティッシュはあの棚の中にございます」
「ちょうど鼻水がたまってたところなんだ。ありがとう」
「切り込みを入れたこんにゃくも冷蔵庫の中にありますが? 大量にあるので一つや二つなくなっても誰も気がつきません」
「さすが女の子の家だな。健康志向ってことか」
「では、三十分後に戻りますので。どうぞお楽しみくださいませ」
「だからどうして正確な時間を教えてくるのかなぁ!」
ほんと、このエロメイドの考えることは常軌を逸脱し過ぎて、普通の男子高校生には理解できない。
でも……三十分後ね。
俺はもう一度部屋の中を見渡す。
これがかくれんぼならかなり才能あるぞ。
「いえ。帆乃様はたしかにこの部屋の中にいらっしゃいます」
「だからどこですか?」
「さっきあなたが、食い入るように見つめていたところです」
「はっ?」
俺は、俺がさっきまで見つめていた場所、部屋の隅にある磨りガラスの方を見る。
「じ、じゃあ、この中ってこと?」
「さようでございます。帆乃様はその中で全裸になっております」
「ぜ、全裸?」
吉良坂さんって裸族だったの?
「なにをそんなに驚いているのですか? そこは浴室ですので当然全裸です」
「よよよよよよよ浴室っ?」
「はい。帆乃様はいま入浴中です。しかもこの磨りガラスは特殊でして、外から中は見えませんが中からは外が丸見えとなっております」
なにそのマジックミラー号的な浴室は! 設計者はなにを意図してガラス張りのお風呂をリビングから見えるようにしたんだ…………あれ?
「中からは外が丸見えって言いました?」
「はい」
草飼さんが深々と頷く。
ああああああああああああああ!
ってことはさっき俺が食い入るように中を覗こうとしてたの、中にいた吉良坂さんからは全部見えてたってこと?
「帆乃様はあなたに裸を凝視されている感覚を存分に味わっていたことでしょうね。ああ羨ましい!」
「身をよじらせるな! わざわざ言葉にするな! 最初から言え! ってかなんだよこの構造は! 常識的に考えておかしいだろ!」
リビングにマジックミラー号的な浴室を作るなんて正気の沙汰じゃないぞ!
「ちっともおかしくありません。このマンションは世界的に有名な建築家が設計した、最先端のデザイナーズマンションです」
「デザイナーズって言葉の便利さが憎い!」
普通に変な構造だろ!
風呂に入ってるのを見られたいって、ここの設計者も住んでる金持ちたちも変態の集まりなの?
草飼さんに真実を告げられてしまったからか、磨りガラスの向こう側からシャワー音が聞こえ始めた気がする。
そのシャワーを浴びている吉良坂さんは当然、裸。
髪の毛は淫らに濡れ、絹のような肌の上を水滴がつつーと身体のラインに沿って滑り落ちていく。
「あ、ちなみにこのリモコンで磨りガラスを普通のガラスにすることもできますが?」
「結構です!」
「そうですか。じゃあこれはここに置いておきますね」
草飼さんは俺に見せつけるようにして、ダイアモンドより貴重なリモコンを俺の目の前のローテーブルの上に置く。
「私は少々席を外します、買い忘れたものがありましたので」
「どうしてリモコンを置いていくのかなぁ! 俺を一人にしようとするのかなぁ!」
「ちなみに、この磨りガラスを普通のガラスに変えても、中の人は気づきませんのでご安心ください」
「いったいなにに安心すればいいのやらさっぱりわかりません」
俺は磨りガラスに背を向けるようして座りなおした。……だめだ。シャワーの音が聞こえてくる。いまちゃぷんって音しなかったちゃぷんって! 裸の吉良坂さんが湯船に足を入れた音じゃないの?
「とにかく私は買い出しに行ってまいります。どれくらいの時間が必要ですか?」
「そんなことを聞かれる意味がわからないんですけど」
「特に他意はありません」
「だったら早く買い出しに行ってください」
これ以上このエロメイドと会話していたら失言しかねない。
「わかりました。早く私を追い出して一人になった後で、帆乃様のお身体をご堪能になるおつもりですね」
「そうじゃない!」
「ティッシュはあの棚の中にございます」
「ちょうど鼻水がたまってたところなんだ。ありがとう」
「切り込みを入れたこんにゃくも冷蔵庫の中にありますが? 大量にあるので一つや二つなくなっても誰も気がつきません」
「さすが女の子の家だな。健康志向ってことか」
「では、三十分後に戻りますので。どうぞお楽しみくださいませ」
「だからどうして正確な時間を教えてくるのかなぁ!」
ほんと、このエロメイドの考えることは常軌を逸脱し過ぎて、普通の男子高校生には理解できない。
でも……三十分後ね。
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