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俺と彼女の、せいしをかけた戦い
吉良坂さんへの思い
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週明けの月曜日。
吉良坂さんはめずらしく学校を休んでいた。
これまで吉良坂さんが学校を休んだことはなかったので、なんとなく心配になる。風邪だろうか? って、その場にいない人のことを考えるようになってる俺はもう……。
俺は首を横に振って、吉良坂さんのことを考えるのをやめた。黒板に顔を向け、ノートに板書していく。あ、また出てきやがったな。酸素と水素から水ができる化学反応式。エッチが丸いものに足されるって、もはや受精だからな! しかもその結果がエッチ二つに丸が一つ。つまりは双子! 新たな発見ですなぁ! 空しくなってきたぞ!
心の中でため息をつく。
俺の中の切実な願望がこんなことを思わせるのだろうか。
――俺は吉良坂さんとどうなりたい?
その問いに対して、俺が明確な答えを持っているのか。
わからないけどわかっている。
わかっているけどわからない。
俺は女性に対して欲情してはいけない、そう自制したはずなのに、吉良坂さんの誘惑? に理性を失いそうになってしまう。
ってか今日は放課後の吉良坂さんとのあれやこれやはないってことか。
ちょっと残念だなぁ。
そんなことを考えている間に授業は終了。
久しぶりの、なんも予定のない放課後がやってきた。理科準備室に行かなくていいという状況が落ち着かない。くしゃみが出そうで出ない感覚に似ている。
「……なにすっかなぁ」
鞄を背負って教室を出る。……まあ、行くだけ行ってみるかと思ってしまうあたり俺はもうやばいところまで来てしまったのかもしれない。
でも吉良坂さんなら平然とそこにいそうだし。
なんなら放課後の準備のために学校を休んだまである。
なにそれ、そんなに壮大な準備が必要なことをされちゃうの? 楽しみだなぁ。
「ほんとやべぇな、俺」
小さく笑いながらつぶやく。
俺はもう吉良坂帆乃という存在に毒されているのかもしれない。
彼女とならもしかするかも……とありもしない未来を想像してしまう。
人間は与えられた運命の中で生きるしかないというのに。
見合った対価を提供できる男ではないから、俺には彼女のおっぱいを揉む資格なんてない。
ははは。
童貞男子の嘆きだと笑ってくれ。
神様、せめて三十歳になったら本当に魔法を使えるようにしてくれよ。
「……エッチなことを考えてむなしくなるとか、俺くらいだよ」
なんて独り言ちつつ理科準備室の扉を開ける。
「あれ、梨本さん?」
部屋の中央に立っていたのは吉良坂さんじゃなくて、唯我独尊発明家の梨本臨だった。
「悪かったわね。帆乃じゃなくて」
「それ、拗ねてるの?」
「は? なにバカな妄想してんの?」
嫌悪を少しも隠さない梨本さん。
「でも、いまのあなたの反応で確信した。もうあなたの身体は帆乃を求めるようにできてるのよ」
「そんなはずないよ」
それはきっぱりと否定する。
俺の身体が、男としての本能が吉良坂さんの身体を求めている?
笑えない冗談だよほんと。
「そんなはずあるのよ。むしろ、あの魅力的な身体の誘惑によく耐えた方だわ」
「吉良坂さんの魅力が身体だけみたいな言い方だな?」
「あなたも生意気に言うようになったじゃない? 毒されてるって自白してるくせに」
「どういう意味だ?」
「さっきの言葉は、あなたにも帆乃の真の魅力が伝わってることを意味してるじゃない」
しまったと思う。
身体だけ、という言葉に反発して言い返したということは、俺自身が吉良坂さんの魅力が身体だけではないと思っているのと同義だ。
完全に無意識だった。
無意識レベルにまでもう吉良坂さんは侵入しているということか。
「まあ、それなりにかかわってきたからな」
吉良坂さんが持っているエロさも、優しさも、包容力も、やわらかさも、懐かしさも、俺にとっては全部心地よい。
「あら? なんでその中におっぱいが入っていないのかしら?」
「はっ? なにを言って」
心の中を読まれたっ?
「まさか、そういう発明品が」
「バカね。あんたみたいな単純な童貞男の思考を読むなんて造作もないわ」
梨本さんは勝ち誇った笑みを見せながら歩み寄ってくる。俺の前で立ち止まると、俺の胸をガツンと拳で小突いた。
「とにかく、あんたが男であるってことを私は信じてる」
梨本さんが続けざまにポケットからなにかを取り出す。
「封筒?」
「帆乃からよ。今日の指令ってこと」
なるほど、そういうことね。
俺は梨本さんから封筒を受け取り、中身を取り出す。とあるマンション名とその住所、そこまでの簡単な地図が書かれていた。
「これは?」
「帆乃の家の住所よ。要するに招待状ってこと。あなたはいまからそこに行くの」
へぇ。今日はそういう命令か……って、ええええええええ!
「き、吉良坂さんの、いいいい家に俺が行く?」
吉良坂さんはめずらしく学校を休んでいた。
これまで吉良坂さんが学校を休んだことはなかったので、なんとなく心配になる。風邪だろうか? って、その場にいない人のことを考えるようになってる俺はもう……。
俺は首を横に振って、吉良坂さんのことを考えるのをやめた。黒板に顔を向け、ノートに板書していく。あ、また出てきやがったな。酸素と水素から水ができる化学反応式。エッチが丸いものに足されるって、もはや受精だからな! しかもその結果がエッチ二つに丸が一つ。つまりは双子! 新たな発見ですなぁ! 空しくなってきたぞ!
心の中でため息をつく。
俺の中の切実な願望がこんなことを思わせるのだろうか。
――俺は吉良坂さんとどうなりたい?
その問いに対して、俺が明確な答えを持っているのか。
わからないけどわかっている。
わかっているけどわからない。
俺は女性に対して欲情してはいけない、そう自制したはずなのに、吉良坂さんの誘惑? に理性を失いそうになってしまう。
ってか今日は放課後の吉良坂さんとのあれやこれやはないってことか。
ちょっと残念だなぁ。
そんなことを考えている間に授業は終了。
久しぶりの、なんも予定のない放課後がやってきた。理科準備室に行かなくていいという状況が落ち着かない。くしゃみが出そうで出ない感覚に似ている。
「……なにすっかなぁ」
鞄を背負って教室を出る。……まあ、行くだけ行ってみるかと思ってしまうあたり俺はもうやばいところまで来てしまったのかもしれない。
でも吉良坂さんなら平然とそこにいそうだし。
なんなら放課後の準備のために学校を休んだまである。
なにそれ、そんなに壮大な準備が必要なことをされちゃうの? 楽しみだなぁ。
「ほんとやべぇな、俺」
小さく笑いながらつぶやく。
俺はもう吉良坂帆乃という存在に毒されているのかもしれない。
彼女とならもしかするかも……とありもしない未来を想像してしまう。
人間は与えられた運命の中で生きるしかないというのに。
見合った対価を提供できる男ではないから、俺には彼女のおっぱいを揉む資格なんてない。
ははは。
童貞男子の嘆きだと笑ってくれ。
神様、せめて三十歳になったら本当に魔法を使えるようにしてくれよ。
「……エッチなことを考えてむなしくなるとか、俺くらいだよ」
なんて独り言ちつつ理科準備室の扉を開ける。
「あれ、梨本さん?」
部屋の中央に立っていたのは吉良坂さんじゃなくて、唯我独尊発明家の梨本臨だった。
「悪かったわね。帆乃じゃなくて」
「それ、拗ねてるの?」
「は? なにバカな妄想してんの?」
嫌悪を少しも隠さない梨本さん。
「でも、いまのあなたの反応で確信した。もうあなたの身体は帆乃を求めるようにできてるのよ」
「そんなはずないよ」
それはきっぱりと否定する。
俺の身体が、男としての本能が吉良坂さんの身体を求めている?
笑えない冗談だよほんと。
「そんなはずあるのよ。むしろ、あの魅力的な身体の誘惑によく耐えた方だわ」
「吉良坂さんの魅力が身体だけみたいな言い方だな?」
「あなたも生意気に言うようになったじゃない? 毒されてるって自白してるくせに」
「どういう意味だ?」
「さっきの言葉は、あなたにも帆乃の真の魅力が伝わってることを意味してるじゃない」
しまったと思う。
身体だけ、という言葉に反発して言い返したということは、俺自身が吉良坂さんの魅力が身体だけではないと思っているのと同義だ。
完全に無意識だった。
無意識レベルにまでもう吉良坂さんは侵入しているということか。
「まあ、それなりにかかわってきたからな」
吉良坂さんが持っているエロさも、優しさも、包容力も、やわらかさも、懐かしさも、俺にとっては全部心地よい。
「あら? なんでその中におっぱいが入っていないのかしら?」
「はっ? なにを言って」
心の中を読まれたっ?
「まさか、そういう発明品が」
「バカね。あんたみたいな単純な童貞男の思考を読むなんて造作もないわ」
梨本さんは勝ち誇った笑みを見せながら歩み寄ってくる。俺の前で立ち止まると、俺の胸をガツンと拳で小突いた。
「とにかく、あんたが男であるってことを私は信じてる」
梨本さんが続けざまにポケットからなにかを取り出す。
「封筒?」
「帆乃からよ。今日の指令ってこと」
なるほど、そういうことね。
俺は梨本さんから封筒を受け取り、中身を取り出す。とあるマンション名とその住所、そこまでの簡単な地図が書かれていた。
「これは?」
「帆乃の家の住所よ。要するに招待状ってこと。あなたはいまからそこに行くの」
へぇ。今日はそういう命令か……って、ええええええええ!
「き、吉良坂さんの、いいいい家に俺が行く?」
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