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膝枕をかけた戦い

赤ちゃんプレイ②

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 ――とまあ、こんな過程を経て俺は赤ちゃんをやることになったのだが、まさか哺乳瓶やガラガラまで持ってきてるとは思わなかったよ!

「あ、私の子供が宮田下銀だから、私はいま宮田下帆乃ってことになるのか。宮田下帆乃、宮田下帆乃かぁ。語呂いいかも」

 あのぉ、そんなのどうでもいいから俺を放置しないで! 虚しいから! なんでこんなことやってんだろうって冷静になったら終わりなやつだから!

「ママぁ、ママぁ」

 恥ずかしさを押し殺して吉良坂さんのことをそう呼ぶと、吉良坂さんは嬉しそうに振り返ってこちらにパタパタと駆け寄ってきた。

「どうしちたのー? 眠いの? 眠いのね、そうなのね」

 吉良坂さんは俺の目の前でしゃがみ、頬をつんつんなでなでしてくる。

 なんだこの感情は?

 屈辱……ではない。

 吉良坂さんの手はすべすべだし、その母性のこもった笑顔もどこか懐かしい。安心感に包まれていると感じる。もしかすると人間は心のどこかで誰しも母の愛情に飢えているのかもしれない。絶対的に甘えてもいい状況を渇望しているのかもしれない。

「ん? どうしたの? 銀くん?」

 俺は吉良坂さんが首をかしげたことで、いままでずっと彼女の目を見ていたことに気がついた。

「……あ、いや」

 小さな声でそう言いながら俯く。これ以上赤くなっているであろう顔を見られたくなかった――って。

 俺の顔は別の意味で赤くなった。

 黒! レース! エロい!

 俺の前でしゃがんでいる吉良坂さんは、自分がスカートを穿いていることを完全に忘れているようだった。

 端が紅く縁取られた黒のレースの下着が丸見えになっている。

「ん? どうちましたか?」

 どうちましたか? って。

 吉良坂さんの方がどうかしてるんじゃないの?

 彼女のスカートの中にある魅力あるそれ。すべすべしてそうな左右の太ももの間にある蠱惑的な黒の布地のぷくっとした盛り上がりから目を離せない。

 クロッチ、って言うんだっけか?

 制服とエプロン、そして黒レースのパンチラ。

 これはエロの三種の神器だ! 三種の神器ってなんだ! 俺は赤ちゃんだぞ! 赤ちゃんはママの下着なんかで興奮しない! だってエロがなんたるものかわかってないんだから!

 ……あ、さっき無知は幸せだなんて思ってたけど、一つだけ例外があったな!

 子供のころからエロに対して自覚的だったらさぞ幸福だっただろう!

 だって女風呂にだってなに食わぬ顔でついていけたし、こうしてパンチラだって見放題だったんだから!

「……ん? そんなに顔を真っ赤にしてどうしたの? もしかしてお熱でもあるのかな?」

 自分のパンツが見えていることに気づいていない様子の吉良坂さんは、俺の前髪を上げ、続けて自分の前髪を上げる。

 ごめんなさいママ。

 俺はパンチラを指摘することはできないのです。

 なんせまだなにも知らない赤ちゃんですから。

 ってかどうしてそんなに顔を近づけてくるんですか?

「さぁ、お、お熱測りましょうねぇ」

 震えた声が俺の鼻先にぶつかったと思ったら、吉良坂さんの額と俺の額が触れ合っていた。

 ぷくっと膨らんでいる真っ赤な唇がすぐ近くにある。

「え、あ、あああ」

 ちょっとママ熱を測るってそんな原始的な方法使わなくても!

 前を見れば吉良坂さんの整った顔、かといって目を逸らして俯けば黒レースのパンツ。

 これはもう開き直って交互に見るしかないですね。

「うん。熱はないみたい」

 十秒ほど額と額をくっつけ合った後、吉良坂さんがゆっくりと離れていく。

 そりゃそうでしょうね。

 だってあなたの額の方が熱かったんだから。

 吉良坂さんがママになるって言い出したんだから、せめて恥ずかしがらずにやり通してくれませんか?

 こっちまで恥ずかしくなるので!

「でも休んだ方がいいかも。うん。絶対にそうしないと」

 なんだか使命感めいたものを感じているかのような物言いの吉良坂さん。床に両膝をついて正座したことで、ついにスカートの中が見えなくなった。ああ、もっと見たかったよ…………って。

「はい。銀くん」

 吉良坂さんが俺をじっと見つめてくる。

 はい、ってかなにがはい?

 彼女は恥ずかしそうに斜め下を見ながら、むにむにすべすべしてそうな太ももの上を手でポンポンとした。

「ここを枕にして、横になって」

 え、つまりそれって膝枕ってことですか!

「ほら、銀くん。早くおねんねしましょうね」

 ママの言うことを聞きなさい! っていう無言の圧力! まあ、吉良坂さんがどうしてもって言うなら仕方ない。

 俺は吉良坂さんの子供だからね。

「そ、それじゃあ」

 俺は恐るおそる彼女の隣に移動する。

 ああ、隣に座っただけでこの甘い匂い。

 クラクラするなぁ。

 そのまま彼女の太もも目掛けて頭を傾け、ふわりと着地させた。恥ずかしさから、吉良坂さんがいない方に顔を向けています。

「ど、どう?」

 不安げに尋ねてくる吉良坂さん。

 まあ、寝心地でいったら、正直家の枕のほうが断然いい。そりゃそうだ。人間の足は歩くために、枕は心地よく寝るために作られたのだから。

 でも。

「すごい、気持ちいいよ」

 クッション性の有無なんか関係ない。

 女の子の太ももを枕にして寝ているという状況だけで男の理性はとろける。日々のストレスなんか忘れてしまえる。

 しかも、

「よーし、よーし」

 って頭をなでてくれるなんて最高かよ! 声が上から降ってくる感じがまたいい。こんなにも穏やか時間があるなんて知らなかった。

「ついでに耳かきもしてあげますね」

 その幸せに抵抗することなどできなかった。

 膝枕プラス耳かきという心地よい時間が流れる。

 彼女の耳かきは丁寧で繊細だ。俺は次第にうとうとし始め、そのまま眠ってしまった。

 だからだろうか。

 俺はとある夢を見てしまった。
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