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おっぱいをかけた戦い
興奮させなきゃ【帆乃視点】
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「帆乃にしてはよくやった方じゃない? 宮田下くんが帆乃のおっぱいを揉んだって思ってるかは微妙だけど」
酢昆布ともずく酢入り激辛麻婆豆腐を食べながら、臨が褒めてくれた。
ここは、臨の言うことならなんでも聞いてくれる中華料理店。
店主のおじさんは臨にものすごい秘密を握られていて逆らえないのだ。
酢昆布ともずく酢入り麻婆豆腐なんてメニューがあるのもそのため。
あと、イチゴミルクももちろん臨のためだけにメニューに追加されている。
「でも……あれ以上は無理。恥ずかしいぃ」
「それが恥ずかしくてよく宮田下くんの精子が欲しいって」
「子供が欲しい」
「よく子供が欲しいなんて言えたわね」
「だって……」
そうしないと私は私じゃなくなってしまう。とにかく時間がないのだ。早く、宮田下くんの子供を作らないと。恥ずかしがっている場合じゃないのに。
「でもさ」
臨がイチゴミルクが並々入ったジョッキを一気に呷る。あ、口の周りにイチゴミルクの髭ができてる。ぷはっ、と可愛く息まで吐いた。
「子供が欲しいだけなら、あの超鈍感男じゃなくても」
「それはだめ!」
即座に否定する。子供は欲しいが、誰でもいいってわけではない。
「私は絶対に宮田下くんがいいの!」
「そ」
盛大にため息をついた臨は、とんとんと人差し指でテーブルをたたく。すると「ハイただいま!」と店主のおじさんがきれいなハンカチを持ってきた。
臨はそれを受け取ると、口の周りについたピンクの髭をごしごしとふき、店主に返す。
「ま、趣味は人それぞれだけど……それほどあなたに好かれてる宮田下が羨ましいわ」
「え? 私、臨のことも好きだよ」
正直な気持ちを伝えると臨は「なっ……」と驚いたように身体を引いた後、いじけたようにそっぽを向いた。
ほんと照れ隠しが下手すぎるの可愛い!
「……ったくあんたは。それを宮田下にストレートに言いなさいよ!」
「ダメ。好きなんて私から言うの、恥ずかしいし」
それができるなら初めからトイレで倒れたりなんかしていない。そもそも好きというだけではだめなのだ。私は宮田下くんの子供を身籠らないといけない。
「いやいや、それより今日みたいに『私を縛って』っていう方が恥ずかしいから。私が提案しといてあれだけどさ」
「え? だって興奮させればいいんだよって言ったのは臨でしょ? 臨は間違ったこと言わないって、私知ってるから」
今日の朝、宮田下くんとそのお友達――名前は興味ないので覚えていない――との会話を、臨が発明した超小型盗聴器で盗み聞きしていたとき。
――すぐに身体の関係を求めてくるような人とはつき合えないしつき合わない。
その言葉を聞いた瞬間、私は愕然とした。
だって私が『子供が欲しい、エッチがしたい』と宮田下くんに迫ると嫌われてしまうということだから。完全に詰んだと思った。
でも、昼休みに臨にそれを伝えたら、
「それを本気にするくらい純情だから、あんたは完全に宮田下のタイプの人間よ」
とわけのわからないことを言われた。
そして、
「あんたが襲うんじゃなくて、宮田下を興奮させて襲わせればいいのよ」
という目から鱗の金言をもらった。
いわゆる逆転の発想というわけだ。
これなら私からエッチをしようというわけではないので、宮田下くんに嫌われることもない。
しかもその表向きの理由は小説の執筆のため。
まさに私に得しかない最高の作戦だ。
「ほんとあんたは……」
臨は眉間にしわを寄せる
「ってかあんた、宮田下が言ってたこと本気にしてるわけ?」
「本気って?」
「だから、宮田下が自分からエッチを迫ってくるような女は嫌いだって言ってたことよ」
「だって宮田下くんがそう言ってるのを聞いて」
「絶対強がりよ。思春期の男子高校生によくある、性欲の化け物なのにその性欲を知られるのは恥ずかしいってやつ」
「あのときの宮田下くんの声は真剣だった。身体の関係なんかなくても恋愛は成立するんだって、本気で熱弁してた」
「あっそ」
臨は店主のおじさんにちらりと視線を向けると、店主のおじさんが急いで新たなイチゴミルク入りのジョッキを持ってきた。
それを一口飲んでから、臨は話を続ける。
「でも、じゃあやっぱりあんたと宮田下って絶望的に合わないじゃない。だってあなたはエッチがしたい。精子――子供が欲しい。宮田下くんはエッチを誘ってくるような女は嫌だって言ってる。正直、早く狙いを変えた方がいいと私は思う」
そんな残酷な現実を言葉にしないでぇ!
「だからこそ、宮田下くんが私とエッチしたいと思ってくれるようにいろいろと作戦を」
「ほんとにあんたたちって面倒ね。……だけど」
臨はやれやれと首を振ってから、にやりと目を黒く光らせる。
「ほんとにすごく面白いわ。よし、私もようやく一肌脱ぎますか」
「え? いいの?」
やったぁ!
理由はどうあれ、やっと臨が本腰入れて協力してくれる気になった!
「もちろん。発明するのに時間はかかりそうだけどまかせて。ようは宮田下を興奮させればいいのよね?」
「ありがとう! 臨!」
「いいって。だってあなたたちに協力するとすごく面白そう――親友の臨のためだもの」
「いままた面白そうって言ったよね?」
私が指摘すると臨は、私なにか変なこと言いました? ってすまし顔でイチゴミルクを飲んで、発言自体をなかったことにしようとしている。
「いや、ほんと臨って誤魔化し方下手す――」
「よし! そうと決まれば共同戦線よ!」
あ、完全に勢いで押し切られた!
「私と帆乃で、宮田下くんの精子をかけた戦いに勝利するのよ」
「うん。……って、精子をかけた戦いって全然かっこよくないからぁ!」
でもまあ臨が協力してくれるなら作戦は成功したも同然だ。
私は、頼れる友達がそばにいてくれることを嬉しく思いつつ、担々麺をちゅるちゅるとすすった。
酢昆布ともずく酢入り激辛麻婆豆腐を食べながら、臨が褒めてくれた。
ここは、臨の言うことならなんでも聞いてくれる中華料理店。
店主のおじさんは臨にものすごい秘密を握られていて逆らえないのだ。
酢昆布ともずく酢入り麻婆豆腐なんてメニューがあるのもそのため。
あと、イチゴミルクももちろん臨のためだけにメニューに追加されている。
「でも……あれ以上は無理。恥ずかしいぃ」
「それが恥ずかしくてよく宮田下くんの精子が欲しいって」
「子供が欲しい」
「よく子供が欲しいなんて言えたわね」
「だって……」
そうしないと私は私じゃなくなってしまう。とにかく時間がないのだ。早く、宮田下くんの子供を作らないと。恥ずかしがっている場合じゃないのに。
「でもさ」
臨がイチゴミルクが並々入ったジョッキを一気に呷る。あ、口の周りにイチゴミルクの髭ができてる。ぷはっ、と可愛く息まで吐いた。
「子供が欲しいだけなら、あの超鈍感男じゃなくても」
「それはだめ!」
即座に否定する。子供は欲しいが、誰でもいいってわけではない。
「私は絶対に宮田下くんがいいの!」
「そ」
盛大にため息をついた臨は、とんとんと人差し指でテーブルをたたく。すると「ハイただいま!」と店主のおじさんがきれいなハンカチを持ってきた。
臨はそれを受け取ると、口の周りについたピンクの髭をごしごしとふき、店主に返す。
「ま、趣味は人それぞれだけど……それほどあなたに好かれてる宮田下が羨ましいわ」
「え? 私、臨のことも好きだよ」
正直な気持ちを伝えると臨は「なっ……」と驚いたように身体を引いた後、いじけたようにそっぽを向いた。
ほんと照れ隠しが下手すぎるの可愛い!
「……ったくあんたは。それを宮田下にストレートに言いなさいよ!」
「ダメ。好きなんて私から言うの、恥ずかしいし」
それができるなら初めからトイレで倒れたりなんかしていない。そもそも好きというだけではだめなのだ。私は宮田下くんの子供を身籠らないといけない。
「いやいや、それより今日みたいに『私を縛って』っていう方が恥ずかしいから。私が提案しといてあれだけどさ」
「え? だって興奮させればいいんだよって言ったのは臨でしょ? 臨は間違ったこと言わないって、私知ってるから」
今日の朝、宮田下くんとそのお友達――名前は興味ないので覚えていない――との会話を、臨が発明した超小型盗聴器で盗み聞きしていたとき。
――すぐに身体の関係を求めてくるような人とはつき合えないしつき合わない。
その言葉を聞いた瞬間、私は愕然とした。
だって私が『子供が欲しい、エッチがしたい』と宮田下くんに迫ると嫌われてしまうということだから。完全に詰んだと思った。
でも、昼休みに臨にそれを伝えたら、
「それを本気にするくらい純情だから、あんたは完全に宮田下のタイプの人間よ」
とわけのわからないことを言われた。
そして、
「あんたが襲うんじゃなくて、宮田下を興奮させて襲わせればいいのよ」
という目から鱗の金言をもらった。
いわゆる逆転の発想というわけだ。
これなら私からエッチをしようというわけではないので、宮田下くんに嫌われることもない。
しかもその表向きの理由は小説の執筆のため。
まさに私に得しかない最高の作戦だ。
「ほんとあんたは……」
臨は眉間にしわを寄せる
「ってかあんた、宮田下が言ってたこと本気にしてるわけ?」
「本気って?」
「だから、宮田下が自分からエッチを迫ってくるような女は嫌いだって言ってたことよ」
「だって宮田下くんがそう言ってるのを聞いて」
「絶対強がりよ。思春期の男子高校生によくある、性欲の化け物なのにその性欲を知られるのは恥ずかしいってやつ」
「あのときの宮田下くんの声は真剣だった。身体の関係なんかなくても恋愛は成立するんだって、本気で熱弁してた」
「あっそ」
臨は店主のおじさんにちらりと視線を向けると、店主のおじさんが急いで新たなイチゴミルク入りのジョッキを持ってきた。
それを一口飲んでから、臨は話を続ける。
「でも、じゃあやっぱりあんたと宮田下って絶望的に合わないじゃない。だってあなたはエッチがしたい。精子――子供が欲しい。宮田下くんはエッチを誘ってくるような女は嫌だって言ってる。正直、早く狙いを変えた方がいいと私は思う」
そんな残酷な現実を言葉にしないでぇ!
「だからこそ、宮田下くんが私とエッチしたいと思ってくれるようにいろいろと作戦を」
「ほんとにあんたたちって面倒ね。……だけど」
臨はやれやれと首を振ってから、にやりと目を黒く光らせる。
「ほんとにすごく面白いわ。よし、私もようやく一肌脱ぎますか」
「え? いいの?」
やったぁ!
理由はどうあれ、やっと臨が本腰入れて協力してくれる気になった!
「もちろん。発明するのに時間はかかりそうだけどまかせて。ようは宮田下を興奮させればいいのよね?」
「ありがとう! 臨!」
「いいって。だってあなたたちに協力するとすごく面白そう――親友の臨のためだもの」
「いままた面白そうって言ったよね?」
私が指摘すると臨は、私なにか変なこと言いました? ってすまし顔でイチゴミルクを飲んで、発言自体をなかったことにしようとしている。
「いや、ほんと臨って誤魔化し方下手す――」
「よし! そうと決まれば共同戦線よ!」
あ、完全に勢いで押し切られた!
「私と帆乃で、宮田下くんの精子をかけた戦いに勝利するのよ」
「うん。……って、精子をかけた戦いって全然かっこよくないからぁ!」
でもまあ臨が協力してくれるなら作戦は成功したも同然だ。
私は、頼れる友達がそばにいてくれることを嬉しく思いつつ、担々麺をちゅるちゅるとすすった。
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