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おっぱいをかけた戦い
よくこける原因は
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理科準備室を出るころには、すでに校舎の外は真っ暗だった。
俺と吉良坂さんは隣同士で廊下を歩いている。
夜の学校――といえるほど真夜中でもないけど――で二人きりって、なんだか少し緊張する。
ちなみに、なぜ帰りがこんな時間になってしまったのかというと、吉良坂さんがパソコンの前から一向に離れなかったからだ。
きっと今日俺にやったことをもとに、小説の執筆をしていたのだと思う。
そんな風に自分の世界に没頭して、集中してなにかを作り上げようとしている吉良坂さんの姿は、純粋に格好よかった。
俺が失ってしまったものがそこに詰まっていると思った。
「あ、まだいてくれたんだ」
ふっと顔を上げたときにそう呟いた吉良坂さんには尊敬すら覚えた。
それは周囲の音や時間すらも忘れて執筆に集中していた証だから。
「ごめんなさい。待ってくれてるって思ってなくて。帰り、大丈夫?」
「平気平気。ってか吉良坂さんこそ大丈夫? 夜遅いけど」
「私は平気。もう学校の前にメイドの草飼が迎えに来てるから」
「あ、そうなんだ」
その言葉を聞いて、やっぱりこの子はお嬢様だったんだなぁと思う。メイドって職業、本当にあったんですね。アニメや漫画だけの職業かと思ってましたよ。
と、そんなことを思っている間に階段へ。無言のまま二人並んで下りていき、ようやく最後の段というところで、
「きゃっ!」
吉良坂さんの悲鳴が聞こえる。横を見ると、足を踏み外して転びそうになっている吉良坂さんの姿が目に入った。
「危ない!」
とっさに彼女の身体を抱きかかえる――その瞬間、ちょっとだけ、ほんの少しだけ、彼女のおっぱいに触れてしまった。すぐに両肩を支え直したからバレてないはず。ほんの一瞬だったのに、彼女の胸の柔らかさに感動している自分がいた。
ああ、これだよこれ、懐かしの感触……。
「あ、ありがとう」
俺に身体を寄せるようにしていた吉良坂さんが、ばっと離れて乱れた前髪を手で直している。誰だってこけるところを見られたら恥ずかしいものだ。
「いや、転ばなくて本当によかったよ」
対して俺も、胸を触ってしまった罪悪感と、バレなかっただろうかという気持ちから、彼女の顔を直視することができないでいた。
……あれ? なんで俺、彼女の胸を触って懐かしいって思ったんだ? まるで前にも触ったことがあるみたいな。ってか目隠ししたときに触ったものと一緒の柔らかさだった気がするんですけど!
「……あ、怪我とかしてない?」
「うん。私は、大丈夫。宮田下くんは?」
「俺も平気」
「……」
「……」
無言が続く。
なにこの気まずさ。
胸を触ったことがばれて気まずくなってるってことはないよね?
「あのさ」
俺は胸の話が出る前になんとか話を逸らそうと、
「吉良坂さんって、なにもないところでよくこけるよね?」
そう聞いてしまった。あああ! なにやってんだ俺! 自分の失態を追及されるって不愉快にもほどがあるだろ! ドジっ子ですっていう回答しか存在しないだろ。
「そ、それは……」
ほら、吉良坂さん俯いちゃったじゃないか。機嫌悪くなってるよ。ってよく見ると自分のおっぱいをじっと見て、自分の手でおっぱいをわずかに揉んだんですけど。彼女のおっぱいに沈み込んでいる彼女の指が羨ましいなぁ……じゃなくて、やっぱりおっぱいに触ったことがばれてこれから追及されるんじゃ!
「……から」
「え?」
「これがあるから足元見えづらくて」
「これ、って?」
「だから、おっぱいが大きいから足元が見えづらくて」
「…………え?」
俺は吉良坂さんの豊満なおっぱいをじっと見つめてから、視線を落として自分の足元を見る。
男子であれば当然なのだが、俺の胸は真っ平。足元が見えないなんてことはない。
が、もしここに吉良坂さんみたいなたわわなおっぱいがついていたら、それに視界が遮られてたしかに足元は見えないかもしれない。
「なるほど。経験しないと……ってか、その人の立場になって真剣に考えないと、わからないことはたくさんだな」
大きなおっぱいがある生活というのは俺には経験できない。でもそれによって足元が見づらいなんて不都合が起こっているなんて知らなかった。気づかなかった。こういう些細なことが小説内のリアリティに繋がっていくのだろう。
「うん。だからその、これからも協力……よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げた吉良坂さんの耳はまだ赤い。
しかし、はにかんだように笑うその顔にできたえくぼが、彼女の心の中を現しているように思えた。
俺と吉良坂さんは隣同士で廊下を歩いている。
夜の学校――といえるほど真夜中でもないけど――で二人きりって、なんだか少し緊張する。
ちなみに、なぜ帰りがこんな時間になってしまったのかというと、吉良坂さんがパソコンの前から一向に離れなかったからだ。
きっと今日俺にやったことをもとに、小説の執筆をしていたのだと思う。
そんな風に自分の世界に没頭して、集中してなにかを作り上げようとしている吉良坂さんの姿は、純粋に格好よかった。
俺が失ってしまったものがそこに詰まっていると思った。
「あ、まだいてくれたんだ」
ふっと顔を上げたときにそう呟いた吉良坂さんには尊敬すら覚えた。
それは周囲の音や時間すらも忘れて執筆に集中していた証だから。
「ごめんなさい。待ってくれてるって思ってなくて。帰り、大丈夫?」
「平気平気。ってか吉良坂さんこそ大丈夫? 夜遅いけど」
「私は平気。もう学校の前にメイドの草飼が迎えに来てるから」
「あ、そうなんだ」
その言葉を聞いて、やっぱりこの子はお嬢様だったんだなぁと思う。メイドって職業、本当にあったんですね。アニメや漫画だけの職業かと思ってましたよ。
と、そんなことを思っている間に階段へ。無言のまま二人並んで下りていき、ようやく最後の段というところで、
「きゃっ!」
吉良坂さんの悲鳴が聞こえる。横を見ると、足を踏み外して転びそうになっている吉良坂さんの姿が目に入った。
「危ない!」
とっさに彼女の身体を抱きかかえる――その瞬間、ちょっとだけ、ほんの少しだけ、彼女のおっぱいに触れてしまった。すぐに両肩を支え直したからバレてないはず。ほんの一瞬だったのに、彼女の胸の柔らかさに感動している自分がいた。
ああ、これだよこれ、懐かしの感触……。
「あ、ありがとう」
俺に身体を寄せるようにしていた吉良坂さんが、ばっと離れて乱れた前髪を手で直している。誰だってこけるところを見られたら恥ずかしいものだ。
「いや、転ばなくて本当によかったよ」
対して俺も、胸を触ってしまった罪悪感と、バレなかっただろうかという気持ちから、彼女の顔を直視することができないでいた。
……あれ? なんで俺、彼女の胸を触って懐かしいって思ったんだ? まるで前にも触ったことがあるみたいな。ってか目隠ししたときに触ったものと一緒の柔らかさだった気がするんですけど!
「……あ、怪我とかしてない?」
「うん。私は、大丈夫。宮田下くんは?」
「俺も平気」
「……」
「……」
無言が続く。
なにこの気まずさ。
胸を触ったことがばれて気まずくなってるってことはないよね?
「あのさ」
俺は胸の話が出る前になんとか話を逸らそうと、
「吉良坂さんって、なにもないところでよくこけるよね?」
そう聞いてしまった。あああ! なにやってんだ俺! 自分の失態を追及されるって不愉快にもほどがあるだろ! ドジっ子ですっていう回答しか存在しないだろ。
「そ、それは……」
ほら、吉良坂さん俯いちゃったじゃないか。機嫌悪くなってるよ。ってよく見ると自分のおっぱいをじっと見て、自分の手でおっぱいをわずかに揉んだんですけど。彼女のおっぱいに沈み込んでいる彼女の指が羨ましいなぁ……じゃなくて、やっぱりおっぱいに触ったことがばれてこれから追及されるんじゃ!
「……から」
「え?」
「これがあるから足元見えづらくて」
「これ、って?」
「だから、おっぱいが大きいから足元が見えづらくて」
「…………え?」
俺は吉良坂さんの豊満なおっぱいをじっと見つめてから、視線を落として自分の足元を見る。
男子であれば当然なのだが、俺の胸は真っ平。足元が見えないなんてことはない。
が、もしここに吉良坂さんみたいなたわわなおっぱいがついていたら、それに視界が遮られてたしかに足元は見えないかもしれない。
「なるほど。経験しないと……ってか、その人の立場になって真剣に考えないと、わからないことはたくさんだな」
大きなおっぱいがある生活というのは俺には経験できない。でもそれによって足元が見づらいなんて不都合が起こっているなんて知らなかった。気づかなかった。こういう些細なことが小説内のリアリティに繋がっていくのだろう。
「うん。だからその、これからも協力……よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げた吉良坂さんの耳はまだ赤い。
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