俺と彼女のせいしをかけた戦い(ラブコメ) 〜美少女のご主人様が奴隷の俺を興奮させようとエッチなことばかりしてくるんだが〜

田中ケケ

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おっぱいをかけた戦い

私を縛って①

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 ついに、このときがやってきてしまった。

 俺は理科準備室の前で深呼吸をしてから、縮み上がっている心臓を鼓舞するように胸のあたりを二度小突いた。

 この後、この部屋の中で、俺の奴隷としての処遇が決定する。少しでもいい条件を引き出したい。ああ、人権くらいは保障されるといいなぁ。足をなめる程度だったら喜んでやらせていただきます!

 意を決してノックをすると、中から「どうぞ」という声が聞こえた。この山奥の清流のように透き通った声は、吉良坂さんのもので間違いない。

「し、失礼します」

 引き戸をガラガラと開ける。部屋の四隅には明らかに壊れている、もしくは未完成だとわかる機械が山積みに置かれていた。棚には薬品――ではなくて工具がびっしり並べられている。窓はあるがカーテンは閉め切られており、どことなく閉塞感や圧迫感を覚える室内環境だ。

 あれ? ここって本当に理科準備室だよな?

「不思議がらなくて大丈夫。これ、全部臨の所有物だから」

 部屋の中央に立っている吉良坂さんが、部屋の中を見渡しながら言う。梨本さんが化学の先生を脅して理科準備室を牛耳ってるって話は本当だったのね。

「へ、へぇ。梨本さんって、結構すごいんだな」

 友達のことを悪く言われたら気分を害すると思ったので、ヤバいとか横暴とか変人とかって言葉を『すごい』に置き換えることは忘れない。

「そうなの。臨はものすごい発明家なんだから」

 友達を褒められたのが嬉しいのか、吉良坂さんが控えめに胸を張る。その拍子に彼女の豊満な胸がたゆんと揺れた。そこでようやく気がついたのだが、彼女の手には誰かを縛るのにちょうどいい縄と、視界を奪うのにちょうどいいアイマスクが握られていた。

 …………っ?

 二度、三度と瞬きを繰り返してみたけど、うん。やっぱり縄とアイマスクですね。これはもうあれですね。拷問ですかね。拘束されて視界を奪われて、この教室にある機械で俺の身体がいじられてサイボーグにされるまで見えた!

「ちちちちょっと待ってよ吉良坂さん!」

 身の危険を感じた俺は後退りを開始する。

「待つ? それよりどうしてそんなに汗かいてるの? この部屋そんなに暑い?」
「い、いやそう言うことじゃなくて」
「じゃあ、なに?」

 首を傾げる吉良坂さん。

 いや、あなたみたいに清楚で可憐で奥ゆかしい美人がそんなきょとん顔したら可愛いに決まってるけど、この状況だとその純粋さが怖くて怖くてたまらないんですけど!

 蟻を遠慮なく踏みつぶす子供みたいな顔しないで!

「なに、ってその……」

 ただ、俺はこれから拷問を受けるとわかっていても抵抗できない。彼女は俺の人生を終わらせることのできる写真を持っているのだから。

「なんでもないです。それより私めはなにをしたらよろしいでしょうか?」

 奥歯をかみしめ覚悟を決める。

 ってか縄で手足を拘束されてアイマスクで視界を奪われて拷問されるってのは俺の勝手な妄想だもんね。

 そこまで非人道的なことはしないでしょ?

 爪を剥ぐのに興味あるから……なんて言うわけないない。

 どんなサイコパスだよって感じだし。

「あ、じゃあ、その、単刀直入に、言うけど」

 吉良坂さんは少しだけ頬を赤らめる。その姿はとてもしおらしい。こんなおっとりと物静かな女子高生が拷問なんて言葉を発するわけがないない。

「私、ずっとしたかったことがあって。宮田下くんがなんでもしてくれるってことだから」

 吉良坂さんの声はだんだんと小さくなっていく。なんで恥ずかしそうなの? そうやってゆっくり近づいてくるの恐怖でしかないんですけど。

「その、勇気をもって伝えようと思います」

 俺の横を通り過ぎた吉良坂さんは、理科準備室の扉の前まで行くと、鍵をガチャリとかけた。

 …………鍵をかけたっ!?

「このアイマスクと縄で、拘束されて身動きが取れない状態を作りたいの」

 やっぱり拷問だったぁ! 吉良坂さんが顔を赤くしてたのは俺の爪を剥ぐことに対して興奮しているからだぁ! 拷問を前にして恍惚の表情を浮かべるなんて、照れるなんて、やっぱり吉良坂さんは本物のサイコパスだぁ! 

「だから、お願い。宮田下くん」

 もう一歩だけ俺に詰め寄り、その大きな瞳で恥ずかしそうに俺を見上げてくる。

 ああ、俺はここから生きて帰れるかなぁ。

 新たな性癖に目覚めた方が救われるまであるかなぁ?

「この縄で私の手足を縛って」

 …………は?

 私の、手足……?

 俺、じゃなくて吉良坂さんの?

「それで宮田下くんがしたいこと、なんでもしていいよ」

 ん? いまなんでもって言った?

「あっ、もちろんアイマスクもするから」

 慌ててそうつけ加えた吉良坂さんが、頬を赤らめながら俯く。

「……え? ……は?」

 パニック状態の俺は、ただその場に立ち尽くすことしかできなかった。

 私を縛って、それからなんでもしていいって、いまたしかに吉良坂さんがおっしゃられましたよね。

 その意味を理解した瞬間、身体が猛烈に熱くなった。
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