336 / 360
最終章 2 フェニックスハイランドはきっと貸し切り
頑張った結果
しおりを挟む
はぁ、ただ園内に入るだけだったのにすごく疲れてしまった。
え?
それはなぜかって?
受付のオムツおじさんのせいではないでしょうか?
「……なぁ、ミライ。喉乾いたからアトラクションの前に、何か飲み物買ってもいいか?」
「わかりました。……あっ」
俺の言葉を受けてきょろきょろと周囲を見渡していたミライが、俺の後ろを指さす。
「あっちに出店がありますよ。タピオカ屋さんがありますよ!」
「タピオカ?」
ちょっと前の流行の店があるあたり、やっぱりここは俺よりも前に日本からやってきた転生者が作った場所なんだろうなぁ。
「タピオカか。あれ、実は一回も飲んだことなかったんだよな」
「え? 日本では結構流行ってたんじゃないんですか?」
「流行に乗っかるミーハー野郎たちって普通に格好悪いじゃん。俺は周りに流されずに俺がいいと思ったものだけを買いたい人間なんだよね」
「引きこもりで買いに行けなかっただけですよね? そうやって流行に乗っかる人を馬鹿にするの、格好悪いですよ」
「…………正論言うのやめてよぉ」
ミライに図星を突かれ、頭を抱えてうずくまる。
「そうだよ! 俺だってずっと原宿渋谷のタピオカ食べてみたかったよ! 流行に乗っかってタピオカ飲みながら湘南の海で変なダンス踊って動画投稿しつつ水着女子たちとウェイウェイしたかったよ!」
「それはそれでちょっとダサいです」
「ああ、八方ふさがりだぁ。もう俺、押し入れの中に引きこもってギターだけ弾いてヒーロー目指そうかな」
「でも、あのお方にはギターという才能があったんですよ。才能のある人間が適切な努力をつづけたから成功した、引きこもりに寄り添っているようで実は突き放している残酷なストーリーなんです。しかも誠道さんはピンク髪じゃないですし」
「ピンク髪は関係ないだろ。ってかタピオカだよタピオカ」
辛辣モードのミライと会話をつづけていたら、心がすり減ってなくなってしまう。
俺たちは、タピオカ屋の前まで歩き、屋台の中にいる人を見る。
「いらっしゃいませー」
元気よく挨拶をしたその人は、金の亡者こと、イツモフ・ザケテイルさんだった。
「いやだから貸し切りは!? 全自動ロボットによる接客は!?」
「ちなみに僕もいるよ」
出店の裏側からぴょこっと顔を出したジツハフくんは、俺を見るなり満面の笑みを浮かべて。
「うわぁ、誠道お兄ちゃんだぁ。僕、誠道お兄ちゃんと会えて感動してるよ」
「お、おお。そうか。そんなに俺のことを尊敬して――」
「うん! だって引きこもりが陽キャの巣窟の遊園地にくるなんて、ありえないことだもんね! ミライさんとデートするために、すごーく頑張ったんだね!」
「全自動ロボットによる最高級のおもてなしはまだですかー!」
いつか、ジツハフくんに尊敬される大人に、私はなりたい。
え?
それはなぜかって?
受付のオムツおじさんのせいではないでしょうか?
「……なぁ、ミライ。喉乾いたからアトラクションの前に、何か飲み物買ってもいいか?」
「わかりました。……あっ」
俺の言葉を受けてきょろきょろと周囲を見渡していたミライが、俺の後ろを指さす。
「あっちに出店がありますよ。タピオカ屋さんがありますよ!」
「タピオカ?」
ちょっと前の流行の店があるあたり、やっぱりここは俺よりも前に日本からやってきた転生者が作った場所なんだろうなぁ。
「タピオカか。あれ、実は一回も飲んだことなかったんだよな」
「え? 日本では結構流行ってたんじゃないんですか?」
「流行に乗っかるミーハー野郎たちって普通に格好悪いじゃん。俺は周りに流されずに俺がいいと思ったものだけを買いたい人間なんだよね」
「引きこもりで買いに行けなかっただけですよね? そうやって流行に乗っかる人を馬鹿にするの、格好悪いですよ」
「…………正論言うのやめてよぉ」
ミライに図星を突かれ、頭を抱えてうずくまる。
「そうだよ! 俺だってずっと原宿渋谷のタピオカ食べてみたかったよ! 流行に乗っかってタピオカ飲みながら湘南の海で変なダンス踊って動画投稿しつつ水着女子たちとウェイウェイしたかったよ!」
「それはそれでちょっとダサいです」
「ああ、八方ふさがりだぁ。もう俺、押し入れの中に引きこもってギターだけ弾いてヒーロー目指そうかな」
「でも、あのお方にはギターという才能があったんですよ。才能のある人間が適切な努力をつづけたから成功した、引きこもりに寄り添っているようで実は突き放している残酷なストーリーなんです。しかも誠道さんはピンク髪じゃないですし」
「ピンク髪は関係ないだろ。ってかタピオカだよタピオカ」
辛辣モードのミライと会話をつづけていたら、心がすり減ってなくなってしまう。
俺たちは、タピオカ屋の前まで歩き、屋台の中にいる人を見る。
「いらっしゃいませー」
元気よく挨拶をしたその人は、金の亡者こと、イツモフ・ザケテイルさんだった。
「いやだから貸し切りは!? 全自動ロボットによる接客は!?」
「ちなみに僕もいるよ」
出店の裏側からぴょこっと顔を出したジツハフくんは、俺を見るなり満面の笑みを浮かべて。
「うわぁ、誠道お兄ちゃんだぁ。僕、誠道お兄ちゃんと会えて感動してるよ」
「お、おお。そうか。そんなに俺のことを尊敬して――」
「うん! だって引きこもりが陽キャの巣窟の遊園地にくるなんて、ありえないことだもんね! ミライさんとデートするために、すごーく頑張ったんだね!」
「全自動ロボットによる最高級のおもてなしはまだですかー!」
いつか、ジツハフくんに尊敬される大人に、私はなりたい。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトのなかで僕だけ異世界転移に耐えられずアンデッドになってしまったようです。
大前野 誠也
ファンタジー
ー
子供頃から体の弱かった主人公は、ある日突然クラスメイトたちと異世界に召喚されてしまう。
しかし主人公はその召喚の衝撃に耐えきれず絶命してしまった。
異世界人は世界を渡る時にスキルという力を授かるのだが、主人公のクラスメイトである灰田亜紀のスキルは死者をアンデッドに変えてしまうスキルだった。
そのスキルの力で主人公はアンデッドとして蘇ったのだが、灰田亜紀ともども追放されてしまう。
追放された森で2人がであったのは――
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
【書籍化決定】神様お願い!〜神様のトバッチリを受けた定年おっさんは異世界に転生して心穏やかにスローライフを送りたい〜
きのこのこ
ファンタジー
突然白い発光体の強い光を浴びせられ異世界転移?した俺事、石原那由多(55)は安住の地を求めて異世界を冒険する…?
え?謎の子供の体?謎の都市?魔法?剣?魔獣??何それ美味しいの??
俺は心穏やかに過ごしたいだけなんだ!
____________________________________________
突然謎の白い発光体の強い光を浴びせられ強制的に魂だけで異世界転移した石原那由多(55)は、よちよち捨て子幼児の身体に入っちゃった!
那由多は左眼に居座っている神様のカケラのツクヨミを頼りに異世界で生きていく。
しかし左眼の相棒、ツクヨミの暴走を阻止できず、チート?な棲家を得て、チート?能力を次々開花させ異世界をイージーモードで過ごす那由多。「こいつ《ツクヨミ》は勝手に俺の記憶を見るプライバシークラッシャーな奴なんだ!」
そんな異世界は優しさで満ち溢れていた(え?本当に?)
呪われてもっふもふになっちゃったママン(産みの親)と御親戚一行様(やっとこ呪いがどうにか出来そう?!)に、異世界のめくるめくグルメ(やっと片鱗が見えて作者も安心)でも突然真夜中に食べたくなっちゃう日本食も完全完備(どこに?!)!異世界日本発福利厚生は完璧(ばっちり)です!(うまい話ほど裏がある!)
謎のアイテム御朱印帳を胸に(え?)今日も平穏?無事に那由多は異世界で日々を暮らします。
※一つの目的にどんどん事を突っ込むのでスローな展開が大丈夫な方向けです。
※他サイト先行にて配信してますが、他サイトと気が付かない程度に微妙に変えてます。
※昭和〜平成の頭ら辺のアレコレ入ってます。わかる方だけアハ体験⭐︎
⭐︎第16回ファンタジー小説大賞にて奨励賞受賞を頂きました!読んで投票して下さった読者様、並びに選考してくださったスタッフ様に御礼申し上げますm(_ _)m今後とも宜しくお願い致します。
NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~
ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。
城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。
速人は気づく。
この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ!
この世界の攻略法を俺は知っている!
そして自分のステータスを見て気づく。
そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ!
こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。
一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。
そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。
順調に強くなっていく中速人は気づく。
俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。
更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。
強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
カクヨムとアルファポリス同時掲載。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
魔境暮らしの転生予言者 ~開発に携わったゲーム世界に転生した俺、前世の知識で災いを先読みしていたら「奇跡の予言者」として英雄扱いをうける~
鈴木竜一
ファンタジー
「前世の知識で楽しく暮らそう! ……えっ? 俺が予言者? 千里眼?」
未来を見通す千里眼を持つエルカ・マクフェイルはその能力を生かして国の発展のため、長きにわたり尽力してきた。その成果は人々に認められ、エルカは「奇跡の予言者」として絶大な支持を得ることになる。だが、ある日突然、エルカは聖女カタリナから神託により追放すると告げられてしまう。それは王家をこえるほどの支持を得始めたエルカの存在を危険視する王国側の陰謀であった。
国から追いだされたエルカだったが、その心は浮かれていた。実は彼の持つ予言の力の正体は前世の記憶であった。この世界の元ネタになっているゲームの開発メンバーだった頃の記憶がよみがえったことで、これから起こる出来事=イベントが分かり、それによって生じる被害を最小限に抑える方法を伝えていたのである。
追放先である魔境には強大なモンスターも生息しているが、同時にとんでもないお宝アイテムが眠っている場所でもあった。それを知るエルカはアイテムを回収しつつ、知性のあるモンスターたちと友好関係を築いてのんびりとした生活を送ろうと思っていたのだが、なんと彼の追放を受け入れられない王国の有力者たちが続々と魔境へとやってきて――果たして、エルカは自身が望むようなのんびりスローライフを送れるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる