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最終章 2 フェニックスハイランドはきっと貸し切り

頑張った結果

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 はぁ、ただ園内に入るだけだったのにすごく疲れてしまった。

 え?

 それはなぜかって?

 受付のオムツおじさんのせいではないでしょうか?

「……なぁ、ミライ。喉乾いたからアトラクションの前に、何か飲み物買ってもいいか?」

「わかりました。……あっ」

 俺の言葉を受けてきょろきょろと周囲を見渡していたミライが、俺の後ろを指さす。

「あっちに出店がありますよ。タピオカ屋さんがありますよ!」

「タピオカ?」

 ちょっと前の流行の店があるあたり、やっぱりここは俺よりも前に日本からやってきた転生者が作った場所なんだろうなぁ。

「タピオカか。あれ、実は一回も飲んだことなかったんだよな」

「え? 日本では結構流行ってたんじゃないんですか?」

「流行に乗っかるミーハー野郎たちって普通に格好悪いじゃん。俺は周りに流されずに俺がいいと思ったものだけを買いたい人間なんだよね」

「引きこもりで買いに行けなかっただけですよね? そうやって流行に乗っかる人を馬鹿にするの、格好悪いですよ」

「…………正論言うのやめてよぉ」

 ミライに図星を突かれ、頭を抱えてうずくまる。

「そうだよ! 俺だってずっと原宿渋谷のタピオカ食べてみたかったよ! 流行に乗っかってタピオカ飲みながら湘南の海で変なダンス踊って動画投稿しつつ水着女子たちとウェイウェイしたかったよ!」

「それはそれでちょっとダサいです」

「ああ、八方ふさがりだぁ。もう俺、押し入れの中に引きこもってギターだけ弾いてヒーロー目指そうかな」

「でも、あのお方にはギターという才能があったんですよ。才能のある人間が適切な努力をつづけたから成功した、引きこもりに寄り添っているようで実は突き放している残酷なストーリーなんです。しかも誠道さんはピンク髪じゃないですし」

「ピンク髪は関係ないだろ。ってかタピオカだよタピオカ」

 辛辣モードのミライと会話をつづけていたら、心がすり減ってなくなってしまう。

 俺たちは、タピオカ屋の前まで歩き、屋台の中にいる人を見る。

「いらっしゃいませー」

 元気よく挨拶をしたその人は、金の亡者こと、イツモフ・ザケテイルさんだった。

「いやだから貸し切りは!? 全自動ロボットによる接客は!?」

「ちなみに僕もいるよ」

 出店の裏側からぴょこっと顔を出したジツハフくんは、俺を見るなり満面の笑みを浮かべて。

「うわぁ、誠道お兄ちゃんだぁ。僕、誠道お兄ちゃんと会えて感動してるよ」

「お、おお。そうか。そんなに俺のことを尊敬して――」

「うん! だって引きこもりが陽キャの巣窟の遊園地にくるなんて、ありえないことだもんね! ミライさんとデートするために、すごーく頑張ったんだね!」

「全自動ロボットによる最高級のおもてなしはまだですかー!」

 いつか、ジツハフくんに尊敬される大人に、私はなりたい。
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