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第6章 6 絶世の美女と真実の愛

どうやって恋心を

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「実は、オリョウさんが使った【愛惚穿ラブアローハート】という技ですが、私も覚えようとしていたことがあるんです。難しくて覚えられませんでしたが、技については詳しく知っています」

「え、覚えようとしていたってことは、もしかして聖ちゃんも誰かに恋を?」

「いえ。【愛惚穿ラブアローハート】をかけて相手を私の虜にしてしまえば、相手の睾丸を好きなようにできると思って」

 聖ちゃんは純情な乙女ではなく、正真正銘、愉悦の睾丸女帝だった。

 そんな聖ちゃんの後ろでは、ユーリが【聖結界せいけっかい】を壊そうと攻撃をつづけている。

 そのさらに奥では、オリョウさんの指示を受けた誠道さんが【炎鬼殺燃龍奥義ひきこもりゅうおうぎ】を使って、客席とバトルフィールドの間にある【聖結界せいけっかい】を壊そうとしている。

聖結界せいけっかい】に攻撃が当たるたびに、聖ちゃんの顔が歪んでいるから、そんなに長くはもたないのかもしれない。

「そんなことより、私が気になったのは、オリョウさんの一度目の【愛惚穿ラブアローハート】が誠道さんに効かなかったという事実です」

 たしかに、最初の攻撃では誠道さんはオリョウに操られることはなかった。

「それは、オリョウさんが流し込んだラブパワーが、誠道さんがすでに抱いている恋心を凌駕できなかったからです。【愛惚穿ラブアローハート】は、自分の魔力をラブパワーに変えて相手を操る魔法なのですが、対象者が誰かに恋をしていた場合、その対象者が抱えている恋心の総量をラブパワーが上回らなければ、対象者を虜にできません」

 え?

 ということは、誠道さんはそれだけの恋心を誰かに抱えていた?

「しかも、誠道さんは操られてはいますが、まだ完全に虜にされているわけではありません。オリョウさんの支配に抵抗しています」

「え? それは本当ですか?」

「非常に不服ですが、誠道さんの全力の攻撃であれば、すぐにでもこの【聖結界せいけっかい】は破られるはずです。でも、実際には破られていない。それこそが、誠道さんがオリョウさんに抵抗しているなによりの証なのです」

 私は誠道さんの背中を見る。

 操られているように見えて、誠道さんはオリョウさんと戦ってくれている。

 それなのに、私が先に諦めてどうするんだ。

「そして、誠道さんが恋心を抱いている相手というのがおそらく……というよりミライさん、あなたです」

「え? わた、し?」

「なに少女漫画によくいる地味系ヒロインみたいにとぼけてるんですか! そんなんだから少女漫画にはパターンがないって言われるんですよ! 普通にどう考えてもそうでしょうが!」

 聖ちゃんが怒鳴るようにそう言ってくれた。

「……誠道さんが、わたしに、惚れて」

 小さくうなずく。

 その真相は誠道さんの心の中にしかないけれど、私はそうであると信じたい。

 というより、そうであってほしい。

「だから、ミライさんが誠道さんの恋心を燃え上がらせて、オリョウさんが与えたラブパワーの総量を上回れば、誠道さんは開放されます」

「理屈は理解できました。でも、どうやって誠道さんの恋心を」

「それはっ」

 そのとき、誠道さんが攻撃している外側の【聖結界せいけっかい】に亀裂が走った。
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