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第6章 6 絶世の美女と真実の愛
ラブアローハート
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「はっ、これが本物のツッコみ。なんて情熱的なのかしら」
「オリョウ様。お気をたしかに」
ふらふらしはじめたオリョウを、後ろに控えていユーリが抱きかかえるようにして支える。
つづけてユーリはチッと舌打ちをして、俺を睨みつけてきた。
「だからオリョウ様にツッコむな、とあれほど言っていたのに」
「いや俺は当然のことをしたまでというか、人間にはそれぞれ役割があってそれを遂行しただけというか」
ものすごい恨みの感情を向けられ、たじたじになってしまう。
でも、ボケた相手に(オリョウにそのつもりはなかったのかもしれないが)ツッコまないのは、ありえないと思うんだ。
「いきなり変なことを言い出した相手にツッコまないのは逆に失礼というか、ツッコむのが礼儀だから、そうやって睨まれても困るというか」
「オリョウ様はその美貌から、なにをやっても言っても肯定されることしかなかった。だからツッコまれることに対して人の何倍も憧れを抱くようになった。夫婦漫才に憧れるのも必然なんですよ!」
「必然の意味をもう一回辞書で調べようか!」
でも……なるほど。
オリョウがツッコまれることに対して、ここまで興奮する理由がよくわかったような、わからないような。
ってかそもそも、オリョウのことをわかろうとする必要はないんじゃないだろうか。
こんな変人、理解できる人なんていないんじゃないだろうか。
「くそがっ! どうしてこんな引きこもり男がオリョウ様の夫婦漫才の相手に。私はオリョウ様に一度もツッコんだことなんかないのに!」
「いやお付きの者的な空気出しといて、一度もツッコめないっておかしいだろ! しゃべるたびにボケまくるオリョウの近くにいるんだからさ!」
「オリョウ様は高貴な存在すぎて私なんかがツッコめないのっ! はっ! もしかしてオリョウ様があんたなんかに惚れたのは、あんたのツッコみの才能に惚れたからか。美人と結ばれる野獣は、なにかしらのとてつもない才能を持っているという法則があるから!」
「俺を野獣って言いたいのか! しかもツッコみの才能ってなんだよ!」
「はっ! たしかにあなたは野獣ではありませんでした。すみません。あなたは引きこもりですから、ただのナマケモノですね」
「うまいこと言ってんじゃねぇ!」
俺が後世に語り継がれるユーリと舌戦を繰り広げていると。
「ちょっとユーリ。私の石川くんからそんなにツッコまれるなんて……まさか寝取る気じゃないでしょうね」
冷たい目をしたオリョウが、ユーリを睨んだ。
「そ、そそそ、そんな滅相もありません」
怯えたように立ち上がったユーリは、心臓をささげるポーズを取る。
「だったらいいわ。……そういえば、これまで私の行動がよくわからなかったという話だったわね」
目をハートにしたオリョウが俺をじっと見つめる。
「私は絶対に男を惚れさせるのに、なぜかチャーム魔法を習得した。そう、私はこの時を待っていたの。私がチャーム魔法を習得したのはこの時のため。私が恋をするのは、私に惚れない男なんだって、どこかでわかっていたのね。だからこそ、そんな石川くんを私は惚れさせたい。私の恋人にしたい。夫婦漫才がしたい!」
覚悟しなさい!
叫んだオリョウが、弓矢を射るようなポーズをとる。
すると、なにもなかった空間に、ピンク色の弓と、矢尻がハートの形になった矢が現れた。
「必殺、【愛惚穿】!」
「誠道さん逃げて!」
ミライが叫んで、俺もその場から飛びのこうとしたが――なぜか足が動かない。
「すべてはオリョウ様のため、オリョウ様のため」
どうやらオリョウの後ろにいるユーリが、俺に拘束系の魔法をかけているらしい。
弓から放たれた矢のスピードはすさまじく、必殺技の発動も間に合わなかったため、矢は俺の胸に直撃し、突き刺さった。
「オリョウ様。お気をたしかに」
ふらふらしはじめたオリョウを、後ろに控えていユーリが抱きかかえるようにして支える。
つづけてユーリはチッと舌打ちをして、俺を睨みつけてきた。
「だからオリョウ様にツッコむな、とあれほど言っていたのに」
「いや俺は当然のことをしたまでというか、人間にはそれぞれ役割があってそれを遂行しただけというか」
ものすごい恨みの感情を向けられ、たじたじになってしまう。
でも、ボケた相手に(オリョウにそのつもりはなかったのかもしれないが)ツッコまないのは、ありえないと思うんだ。
「いきなり変なことを言い出した相手にツッコまないのは逆に失礼というか、ツッコむのが礼儀だから、そうやって睨まれても困るというか」
「オリョウ様はその美貌から、なにをやっても言っても肯定されることしかなかった。だからツッコまれることに対して人の何倍も憧れを抱くようになった。夫婦漫才に憧れるのも必然なんですよ!」
「必然の意味をもう一回辞書で調べようか!」
でも……なるほど。
オリョウがツッコまれることに対して、ここまで興奮する理由がよくわかったような、わからないような。
ってかそもそも、オリョウのことをわかろうとする必要はないんじゃないだろうか。
こんな変人、理解できる人なんていないんじゃないだろうか。
「くそがっ! どうしてこんな引きこもり男がオリョウ様の夫婦漫才の相手に。私はオリョウ様に一度もツッコんだことなんかないのに!」
「いやお付きの者的な空気出しといて、一度もツッコめないっておかしいだろ! しゃべるたびにボケまくるオリョウの近くにいるんだからさ!」
「オリョウ様は高貴な存在すぎて私なんかがツッコめないのっ! はっ! もしかしてオリョウ様があんたなんかに惚れたのは、あんたのツッコみの才能に惚れたからか。美人と結ばれる野獣は、なにかしらのとてつもない才能を持っているという法則があるから!」
「俺を野獣って言いたいのか! しかもツッコみの才能ってなんだよ!」
「はっ! たしかにあなたは野獣ではありませんでした。すみません。あなたは引きこもりですから、ただのナマケモノですね」
「うまいこと言ってんじゃねぇ!」
俺が後世に語り継がれるユーリと舌戦を繰り広げていると。
「ちょっとユーリ。私の石川くんからそんなにツッコまれるなんて……まさか寝取る気じゃないでしょうね」
冷たい目をしたオリョウが、ユーリを睨んだ。
「そ、そそそ、そんな滅相もありません」
怯えたように立ち上がったユーリは、心臓をささげるポーズを取る。
「だったらいいわ。……そういえば、これまで私の行動がよくわからなかったという話だったわね」
目をハートにしたオリョウが俺をじっと見つめる。
「私は絶対に男を惚れさせるのに、なぜかチャーム魔法を習得した。そう、私はこの時を待っていたの。私がチャーム魔法を習得したのはこの時のため。私が恋をするのは、私に惚れない男なんだって、どこかでわかっていたのね。だからこそ、そんな石川くんを私は惚れさせたい。私の恋人にしたい。夫婦漫才がしたい!」
覚悟しなさい!
叫んだオリョウが、弓矢を射るようなポーズをとる。
すると、なにもなかった空間に、ピンク色の弓と、矢尻がハートの形になった矢が現れた。
「必殺、【愛惚穿】!」
「誠道さん逃げて!」
ミライが叫んで、俺もその場から飛びのこうとしたが――なぜか足が動かない。
「すべてはオリョウ様のため、オリョウ様のため」
どうやらオリョウの後ろにいるユーリが、俺に拘束系の魔法をかけているらしい。
弓から放たれた矢のスピードはすさまじく、必殺技の発動も間に合わなかったため、矢は俺の胸に直撃し、突き刺さった。
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