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第6章 6 絶世の美女と真実の愛

高尾山だっていいじゃないか

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 反射的に目を閉じ、顔を手で覆う。

 光はオリョウの足元から発せられていたような気がしたけど……これはいったい?

「……え、これ、は」

 なにが起こったんだと恐るおそる目を開けると、オリョウの足元にあった黒の魔法陣が拡大しており、俺も参加者たちもその中に入っていた。

 役目を終えて焦げていたんじゃなかったのか。

 なんだなんだ、と俺と同じように目を開けた参加者たちを、オリョウは感情のこもっていない目で見下ろし。

「いまさら焦ってももう遅いわ。まったく、こんな大会に参加するような性欲にまみれたしょうもない男どもには、お仕置きが必要よね」

 びぐんっ! と俺の心はオリョウの言葉に反応してませんよ!

 だってミライの罵倒じゃないからね。

 お仕置きって言葉が出たくらいじゃさすがの俺も……じゃなくてそもそも俺はドMじゃないから!

 ミライの罵倒でも興奮しないから!

「私に支配されなさい! 【女体化支配レディースドミネーション】」

 オリョウがそう高らかに唱えると、魔方陣が更なる不気味な輝きを放ちはじめる。

 しまった。

 オリョウの色仕掛けにやられていたわけじゃないけど、おっぱいのほくろに見惚れてるはずなんかなかったけど、完全に油断していた。

 舞台下の男どもの変態発言に気を取られて、オリョウを気絶させよう作戦を完璧に失念していたのだ!

 せっかくこうして近づけたのに……いや、そもそもオリョウを気絶させる隙なんかなかったよね?

 俺はいつだってチャンスをうかがっていたのに、隙ひとつ見せないなんて。

 経理担当とはいえ、さすが元魔王軍。

「うわぁ、体が、熱いぃ……」

「股の間に違和感が、ひゅんひゅんってなるぅ!」

「胸のあたりがもわもわするぅ。おい、膨らんできやがったぞ!」

「風に飛ばされたオリョウ様の髪の毛を頭に植えようとしたら、俺にも銀色の髪が生えてきたっ?」

 舞台下の観客たちが自分の体を触りながら泣き喚きはじめる。

 そうか。

 この魔方陣の中にいる人間が女体奴隷化されてしまうのか。

 さっきオリョウが手招きしたのは、参加者たちをこの魔方陣内に誘い込むためだったんだ!

 俺は舞台下の男どもと同じように、いままさに女体化しようとする体をまさぐる。

「うわぁ! 俺も体が熱……くない? ああ! 股の間がひゅんひゅん……ならない? 胸のあたりがもわもわしない?」

 え? え? え? と思っている間に輝きが消える。

 舞台下の大会参加者たちは、全員が屈強な男だったはずなのに、いまは見渡す限り女、女、女だらけだ!

 しかも、いきなり女になってしまえば普通は慌てふためくはずなのに、彼らは全員うつむいて、腕をだらんとさせたまま動かない。

 ああ、こいつらは女体化しただけじゃなく奴隷化されてしまったんだ。

 でもさ、やっぱりおかしくない?

 俺はもう一度自分の体を見下ろす。

 これまでの石川誠道の体が変わらずにそこにある。

 俺も女奴隷化魔法の範囲内にいて、確実に魔法を受けたはずなのに、高尾山級の男の象徴はたしかに俺の体にぶら下がっている。

 って誰が高尾山級だ!

 エベレストじゃないにしても富士山級だこらぁ!

「ふぅ。これでまた真の男女平等に一歩近づいたわね」

 ゼイ・ダッツ・オリョウが、一仕事終えた大工の棟梁のように、腕で額の汗をぬぐう。

「さて、あとはこいつらを売りさばいてお金儲けすれば…………えっ?」

 そして、オリョウが俺の方を向いて。

「……えっ? えっ?」

 ばっちりと目が合った。

「えっ? えっ? えっ?」

 ぱちぱちぱちぱちと、信じられないものを見たかのようにまばたきを繰り返すオリョウ。

 俺の体を上から順に確認していき、最後に俺の下半身をまじまじと見つめ。

「ええええぇぇ! なんでまだ子供が砂場で作る砂山級がついてるのよっ!?」

 オリョウはマンガの描写のように目玉を飛び出させながら驚きで尻もちをつく。

 膝を立てているのでスカートの中の真っ赤なパンツが丸見えで、そんなコメディチックな姿も美しいと感じてしまうとかもいまはどうでもよくて!

「俺のは砂山級じゃなくて高尾山級だっつってんだろ! いやそれも違うわ!」

 叫び終えた俺が肩で息をしていると、司会のボブヘアーの女性が近づいてきて、ぽんと肩に手を置かれた。

「石川様。オリョウ様に唾を飛ばしながらツッコむと失礼に値すると、確かに言いましたよね」

「いやいま指摘すべきは絶対にそこじゃな――――くっ!」

 隠し持っていた短刀を俺の喉に突き刺そうとしてきたので、慌てて後ろに飛びのいた。
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