286 / 360
第6章 4 運命とミライとゲーム
全オタク憧れの
しおりを挟む
「期待?」
ミライは首を傾げた後、にやにやとからかうように、でもどこか嬉しそうに笑う。
「夜通しプレイという言葉を聞いて、誠道さんはいったいどんなことを妄想していたんですか?」
「ううう、うるさい! ってかそんなもの旅館で貸し出してたんだな」
ま、旅館だったらボドゲの貸出サービスくらいやっててもおかしくないか。
そう結論づけた矢先、ミライがおとぼけフェイスを披露してきやがった!
「いえ、買いました。クラーケンで得たお金を使って」
「は?」
ねぇ、お願いだから言い間違えたと言ってくれ。
それが俺の聞き間違いであってくれ。
貸出備品だと言ってくれ。
「なんですか、鳩が豆鉄砲喰らったような顔をして」
「それよく聞くけどどんな顔かいまいち想像できないからやめてくれ。冷静に考えたら言葉にするには長すぎて使いにくい表現第一位を使うな」
ちなみに二位は、苦虫をかみつぶしたような、である。
「まあまあ、誠道さん。ご安心ください」
「ここまでのやり取りで安心できる要素なんかあったか?」
「安心できる要素だらけですよ」
正論をぶつけるも、ミライにはまったく効いていないご様子。
あれ、正論って一番切れ味のある攻撃方法だって学んだはずだけどなぁ。
「え? どうして安心できる要素だらけかって?」
勝手に話を進めるミライが、リアルマネー人生ゲームの入った箱を頭上に掲げる。
テッテレー、という効果音が聞こえてきそうだ。
「実はこの商品、どこを探しても売っていなくて、ようやくこのハグワイアムのとある店で見つけた超貴重品なんです! しかも店頭在庫が残り一つしかなくて。プレミア価格ではありましたが、クラーケンでお金を稼いでいたおかげでなんとか買えました!」
「よし、そんな貴重な品ならいますぐ転売して儲けよう」
「ダメですよ! 転売なんてできるわけがありません!」
ミライがボードゲームを、まるで我が子を守るかのごとく大事そうにぎゅっと抱きしめる。
「とにかく、安心してください」
だから安心できる要素なんかないっての。
ミライは少し考えて、いいことひらめいたっ、と言わんばかりに目を輝かせた。
「これは買ったというより、投資なんです」
「おいてめぇ本当は転売しようとしてんだろ! 投資って言葉は転売を最大限いい風に着飾らせた言葉だからな!」
ってかなんでこんなツッコみしてんだろう俺。
転売しようとしてるなら、それでいいじゃないか。
ついついツッコみ役として、己の胸に秘めたツッコみ力を解放し、暴走してしまった。
「なにを言ってるんですか。転売なんてもったいない。このリアルマネー人生ゲームはゲームの中に入ってリアルマネー、つまり現実のお金を使って人生ゲームをするんです」
「そんなあり得ないゲームが登場してたまるかぁ!」
「このゲームの製作者の名前から考察するに、誠道さんと同じ転生者が作ったものだと考えられます」
「くっ、それならありえる……と思わなければいけないことが悔しい」
転生者は変な能力を持っている。
これまでに様々な能力を見せつけられてきたからね。
あのお遊び好きの神様ならやりかねない。
「ルールは普通の人生ゲームと同じです。なので、このゲームをするだけでリアルマネー、つまり現実のお金が増える可能性が大いにあります」
なるほど。
つまり競馬とか、宝くじとか、そういった類の話ってことだろ。
要は一種のギャンブルだ。
であるならは、まあ、人気なのもうなずける。
ギャンブルには一定の需要があるからね。
「では、箱を開いたら自動的に中へ入れます」
「えっ? もうやるの?」
「善は急げです」
畳の上に箱を置いたミライが、満面の笑みで箱の蓋をあけようとする。
「あ、ちなみに、その製作者の名前を聞いてもいいか」
「はい。創流雅楽太さんです」
「へぇ、つくるが、らくた。つくる、が、らくた、作るガラクタ……」
それに気づいた瞬間、背中に悪寒がほとばしる。
「おいミライその商品は信用ならねぇ!」
「え?」
しかし、時すでに遅し。
ミライはすでに箱を空けてしまっていた。
箱の中からまばゆい光が発生し、目を開けていられなくなる。
ブラックホールに吸い込まれていくかのように、自分の体よりも小さな箱の中に吸い寄せられていき、揺れと浮遊感が収まったあとで目を開けると。
「ここが……」
「はい。ゲームの世界です」
「なんで異世界転生してんのにゲームの世界に入ってんだよ!」
「一石二鳥ですね。全オタクが憧れる展開です」
そんな会話をしつつ周囲を見渡す。
俺たちは、新宿の駅前を再現している空間に立っていた。
だって後ろの駅に新宿駅って書いてあるんだもん。
正確に覚えているわけではないけど、この背の高いビル群はどこからどうみても都心だ。
やはり転生者が作ったので間違いない。
じゃないと、こんな正確に日本の大都市を再現できるはずがない。
人が俺たちしかいないのが違和感だけどね。
ミライは首を傾げた後、にやにやとからかうように、でもどこか嬉しそうに笑う。
「夜通しプレイという言葉を聞いて、誠道さんはいったいどんなことを妄想していたんですか?」
「ううう、うるさい! ってかそんなもの旅館で貸し出してたんだな」
ま、旅館だったらボドゲの貸出サービスくらいやっててもおかしくないか。
そう結論づけた矢先、ミライがおとぼけフェイスを披露してきやがった!
「いえ、買いました。クラーケンで得たお金を使って」
「は?」
ねぇ、お願いだから言い間違えたと言ってくれ。
それが俺の聞き間違いであってくれ。
貸出備品だと言ってくれ。
「なんですか、鳩が豆鉄砲喰らったような顔をして」
「それよく聞くけどどんな顔かいまいち想像できないからやめてくれ。冷静に考えたら言葉にするには長すぎて使いにくい表現第一位を使うな」
ちなみに二位は、苦虫をかみつぶしたような、である。
「まあまあ、誠道さん。ご安心ください」
「ここまでのやり取りで安心できる要素なんかあったか?」
「安心できる要素だらけですよ」
正論をぶつけるも、ミライにはまったく効いていないご様子。
あれ、正論って一番切れ味のある攻撃方法だって学んだはずだけどなぁ。
「え? どうして安心できる要素だらけかって?」
勝手に話を進めるミライが、リアルマネー人生ゲームの入った箱を頭上に掲げる。
テッテレー、という効果音が聞こえてきそうだ。
「実はこの商品、どこを探しても売っていなくて、ようやくこのハグワイアムのとある店で見つけた超貴重品なんです! しかも店頭在庫が残り一つしかなくて。プレミア価格ではありましたが、クラーケンでお金を稼いでいたおかげでなんとか買えました!」
「よし、そんな貴重な品ならいますぐ転売して儲けよう」
「ダメですよ! 転売なんてできるわけがありません!」
ミライがボードゲームを、まるで我が子を守るかのごとく大事そうにぎゅっと抱きしめる。
「とにかく、安心してください」
だから安心できる要素なんかないっての。
ミライは少し考えて、いいことひらめいたっ、と言わんばかりに目を輝かせた。
「これは買ったというより、投資なんです」
「おいてめぇ本当は転売しようとしてんだろ! 投資って言葉は転売を最大限いい風に着飾らせた言葉だからな!」
ってかなんでこんなツッコみしてんだろう俺。
転売しようとしてるなら、それでいいじゃないか。
ついついツッコみ役として、己の胸に秘めたツッコみ力を解放し、暴走してしまった。
「なにを言ってるんですか。転売なんてもったいない。このリアルマネー人生ゲームはゲームの中に入ってリアルマネー、つまり現実のお金を使って人生ゲームをするんです」
「そんなあり得ないゲームが登場してたまるかぁ!」
「このゲームの製作者の名前から考察するに、誠道さんと同じ転生者が作ったものだと考えられます」
「くっ、それならありえる……と思わなければいけないことが悔しい」
転生者は変な能力を持っている。
これまでに様々な能力を見せつけられてきたからね。
あのお遊び好きの神様ならやりかねない。
「ルールは普通の人生ゲームと同じです。なので、このゲームをするだけでリアルマネー、つまり現実のお金が増える可能性が大いにあります」
なるほど。
つまり競馬とか、宝くじとか、そういった類の話ってことだろ。
要は一種のギャンブルだ。
であるならは、まあ、人気なのもうなずける。
ギャンブルには一定の需要があるからね。
「では、箱を開いたら自動的に中へ入れます」
「えっ? もうやるの?」
「善は急げです」
畳の上に箱を置いたミライが、満面の笑みで箱の蓋をあけようとする。
「あ、ちなみに、その製作者の名前を聞いてもいいか」
「はい。創流雅楽太さんです」
「へぇ、つくるが、らくた。つくる、が、らくた、作るガラクタ……」
それに気づいた瞬間、背中に悪寒がほとばしる。
「おいミライその商品は信用ならねぇ!」
「え?」
しかし、時すでに遅し。
ミライはすでに箱を空けてしまっていた。
箱の中からまばゆい光が発生し、目を開けていられなくなる。
ブラックホールに吸い込まれていくかのように、自分の体よりも小さな箱の中に吸い寄せられていき、揺れと浮遊感が収まったあとで目を開けると。
「ここが……」
「はい。ゲームの世界です」
「なんで異世界転生してんのにゲームの世界に入ってんだよ!」
「一石二鳥ですね。全オタクが憧れる展開です」
そんな会話をしつつ周囲を見渡す。
俺たちは、新宿の駅前を再現している空間に立っていた。
だって後ろの駅に新宿駅って書いてあるんだもん。
正確に覚えているわけではないけど、この背の高いビル群はどこからどうみても都心だ。
やはり転生者が作ったので間違いない。
じゃないと、こんな正確に日本の大都市を再現できるはずがない。
人が俺たちしかいないのが違和感だけどね。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
2代目魔王と愉快な仲間たち
助兵衛
ファンタジー
魔物やら魔法やらが当たり前にある世界に、いつの間にか転がり込んでしまった主人公進藤和也。
成り行き、運命、八割悪ノリであれよあれよと担ぎ上げられ、和也は2代目魔王となってしまう……
しかし彼には、ちょっとした秘密があった。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる