上 下
285 / 360
第6章 4 運命とミライとゲーム

夜通しプレイで興奮しましょう

しおりを挟む
 ぐちゃぐちゃのクラーケンを売って、借金返済用のお金を得た日の夜。

 旅館の大浴場から戻ってくると、部屋の鍵がかかっていた。

「あれ……って、そうか」

 俺が部屋を出るときに。

「私も準備が出来たら大浴場にいきますから、部屋の鍵を持っていってくださいね」

 ってミライに言われたんだったな。

「手首についてるのにな。それだけ疲れてるってことだよなぁ」

 クラーケンを討伐しにいったせいで、めっちゃ疲れた。

 敵だったクラーケンのせいではなく、今日かかわったみんなのせいでね。

 クラーケンと戦うはずだったのに、俺が今日戦った相手は人間だったんだから、本当に驚きだよ。

 扉の鍵を開けて部屋に入る。

 中にミライはいない。

 女の子は長風呂だって言うし、まだまだ時間がかかるかな。

「ああ、マジで疲れたぁ……」

 畳の上に大の字に寝転んで、深呼吸をする。

 風呂上がり独特のぽわぽわした心地よさにつつまれ、途端におぼろげになっていく意識に身を委ねつつ、ふと部屋に併設している露天風呂を見る。

 そういや昨日、ミライとあそこで一緒だったんだよなぁ。

 もし、あのまま俺がのぼせない世界線があったとしたら、俺はミライとどうなっていたのだろう。

 どういうことを話したのだろう。

 どういう朝を迎えていたのだろう。

「朝って……なに考えてんだ俺」

 恥ずかしさが襲い掛かってくる。

 脳裏を埋め尽くそうとしたミライの艶やかな柔肌を、ぶんぶんと頭を振ってかき消した。

「ミライ、恐るべし」

「なにやってるんですか?」

 いつの間にか、浴衣を着たミライが部屋に戻ってきていた。

「しかも顔が赤く……まさか私がいない隙に私のことを思ってそういうことを」

「な、なにも考えてないって」

 慌てて否定するが、ちょっと図星なのが腹立つんだよなぁ。

「そんなはずありません。だって慌てすぎですし、顔が真っ赤すぎですよ」

「う、うるさい。ってかミライだって顔が赤いじゃないか」

 なんとか話を逸らす。

 ミライの頬はほわりと赤く染まっていて、妙に色っぽい。

 浴衣姿も相まって、とてもきれいだ。

「それは……お風呂上がりですから」

「じゃあ俺もお風呂上がりだから顔が赤いんだ」

「じゃあってなんですか、じゃあって」

 ちょっと不服そうなミライが俺の隣に正座したので、俺も体を起こしてあぐらをかく。

「まあいいでしょう。そんなことより、実はですね、私……」

 ミライがもったいぶるような間をあけ、上目づかいで俺を見る。

 前かがみになって俺の手に上に自らの手を重ねて、ぎゅっと握ってきた。

「おおおおい、いきなりどうした?」

 俺は、ミライの手の細さと大胆な行動と少しだけはだけた胸元に、どきっとしてしまう。

 ミライはとろけた声でつづけた。

「実は私、お風呂に入っているときも、誠道さんと夜通しプレイすることを考えたら……ちょっと興奮していて」

「はっ!? 俺と、夜通し……興奮って」

 ミライの体を下から順に見てしまい、最終的にそのとろんとした目に釘付けになった。

 ぷくりとした真っ赤な唇がゆっくり動く。

「はい。私と夜通し興奮しましょう。このリアルマネー人生ゲームで」

「そういうことかよ。期待して損したわ」

 ミライが体の後ろから出してきたのは、四角い箱に入ったボードゲームだった。

 ま、そういうことだろうと思っていたけどね。

 どきっとした気持ちがいま、ぽきっと折れましたよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『購入無双』 復讐を誓う底辺冒険者は、やがてこの世界の邪悪なる王になる

チョーカ-
ファンタジー
 底辺冒険者であるジェル・クロウは、ダンジョンの奥地で仲間たちに置き去りにされた。  暗闇の中、意識も薄れていく最中に声が聞こえた。 『力が欲しいか? 欲しいなら供物を捧げよ』  ジェルは最後の力を振り絞り、懐から財布を投げ込みと 『ご利用ありがとうございます。商品をお選びください』  それは、いにしえの魔道具『自動販売機』  推すめされる商品は、伝説の武器やチート能力だった。  力を得た少年は復讐……そして、さらなる闇へ堕ちていく ※本作は一部 Midjourneyにより制作したイラストを挿絵として使用しています。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 よろしくお願いいたします。 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

追放されたギルドの書記ですが、落ちこぼれスキル《転写》が覚醒して何でも《コピー》出来るようになったので、魔法を極めることにしました

遥 かずら
ファンタジー
冒険者ギルドに所属しているエンジは剣と魔法の才能が無く、文字を書くことだけが取り柄であった。落ちこぼれスキル【転写】を使いギルド帳の筆記作業で生計を立てていた。そんなある日、立ち寄った勇者パーティーの貴重な古代書を間違って書き写してしまい、盗人扱いされ、勇者によってギルドから追放されてしまう。 追放されたエンジは、【転写】スキルが、物やスキル、ステータスや魔法に至るまで何でも【コピー】できるほどに極められていることに気が付く。 やがて彼は【コピー】マスターと呼ばれ、世界最強の冒険者となっていくのであった。

処理中です...