279 / 360
第6章 3 クラーケンの倒し方
最強の釣り師でした!
しおりを挟む
「そもそもピンクのフリフリ衣装なんてクラーケンの餌にもならねぇよ!」
俺がそう指摘すると、ホンアちゃんはぷくぅっと頬を膨らませる。
「でもでもー、私と握手をしたら、みんなファンになってくれますよ?」
「クラーケンと握手なんかしたら、その触手で縛り上げられて終わりだよ! そんな無駄なことは普通にやめとけ!」
正論を口にすると、それまで静観を貫いていたミライが首をかしげる。
「誠道さん? もしかしてホンアちゃんが釣ることに反対しているのは、自分が釣ろうとしているからではないですか? それでクラーケンの触手に縛られたいと、それはそれでありだと思っていませんか?」
「普通に考えて思ってるわけねぇだろ!」
「安心してください。引きこもりの誠道さんが握手会を開いても、クラーケンどころか女の子一人釣れませんから。そもそも誰も来ませんから」
「ストレートなご意見ありがとう!」
そうやって本当のこと言わないでよぉ。
めちゃくちゃ悲しくなるだけじゃん。
そりゃあさ、プリチーアイドルホンアちゃんと違って、俺には集客力はないよ。
あのジョ〇マンだって、昔は握手会に誰も来なかったけど今は握手会ゼロ人じゃないんだよ?
「ってまるで俺がジョ〇マン以下だって言ってるみたいじゃねぇか!」
「実際そうでしょう。ジョ〇マンさんにはファンがいて、しかも芸能人ですのできっとそれなりにお金を持っています。対して誠道さんは引きこもりで借金まみれ。雲泥の差がそこにはあります」
「だから現実を突きつけるな! ……いや借金まみれなのは俺じゃなくてミライだから!」
「そもそも誠道さんを縛っていいのは私だけですので、縛られたいときはいつでも言ってください!」
「そんなときは一生来ないからな!」
俺が一度でもミライに自発的に縛られたことなんかな……たぶんきっとないよね?
自信をもって否定できないなんて、もしかして俺って本当はM……なわけないに決まってるから!
そして、俺とミライが激しく言い争っている間に、イツモフさんとプリチーアイドルホンアちゃんはがっちりと握手を交わしていた。
「いやぁ、本当にタイミングがよくて助かりました。まさかプリチーアイドルのホンアちゃんが出張公演でハグワイアムに来ていたなんて」
「いえいえ、こちらこそ、新たなファン獲得の機会を作ってもらって光栄です」
二人は大きな契約を提携した経営者同士のように、互いに満足げな笑みを浮かべている。
「クラーケンとの対峙をファン獲得の機会と捉えられる前向きさだけは褒めてやるよ! ホンアちゃんはクラーケンを釣れる自信と作戦があるんですねぇ!」
二人が変な会話をしていたからきちんとツッコみつつ、ここはちゃんとしないといけないと思って、俺はイツモフさんの後ろに並ぶ。
なにを隠そう、俺はまごうことなき紳士だからね。
割り込みなんてしないんだよ。
「誠道さん!」
嫉妬顔のミライに耳を掴まれて引っ張られる。
「おい、いきなりなにすんだよ」
「じゃあ聞きますが、どうして握手会に並ぶオタクムーブを?」
……。
…………。
「はっ! いつの間にかホンアちゃんの魅力にほだされて、つい握手会のように並んでしまった」
イツモフさんがホンアちゃんと握手していたから、つい無意識に体が動いてしまった。
ホンアちゃんの魅力、恐るべし。
「あれ? 俺を無意識に動かしてしまうほどの魅力を持っているなら、もしかしてホンアちゃんの魅力は種族を越える?」
「誠道さんがアホでちょろいだけだと思うのですが」
呆れたように首を振るミライ。
そして、ミライの言った通り、ホンアちゃんがいくら歌って踊ってもクラーケンが動くことはなかった。
「ってこれだと俺が本当にちょろいみたいじゃねぇか!」
「クラーケンを引き寄せるためのダンスに引き寄せられてオタ芸してる誠道さんに言われても、説得力ないですからね!」
俺がそう指摘すると、ホンアちゃんはぷくぅっと頬を膨らませる。
「でもでもー、私と握手をしたら、みんなファンになってくれますよ?」
「クラーケンと握手なんかしたら、その触手で縛り上げられて終わりだよ! そんな無駄なことは普通にやめとけ!」
正論を口にすると、それまで静観を貫いていたミライが首をかしげる。
「誠道さん? もしかしてホンアちゃんが釣ることに反対しているのは、自分が釣ろうとしているからではないですか? それでクラーケンの触手に縛られたいと、それはそれでありだと思っていませんか?」
「普通に考えて思ってるわけねぇだろ!」
「安心してください。引きこもりの誠道さんが握手会を開いても、クラーケンどころか女の子一人釣れませんから。そもそも誰も来ませんから」
「ストレートなご意見ありがとう!」
そうやって本当のこと言わないでよぉ。
めちゃくちゃ悲しくなるだけじゃん。
そりゃあさ、プリチーアイドルホンアちゃんと違って、俺には集客力はないよ。
あのジョ〇マンだって、昔は握手会に誰も来なかったけど今は握手会ゼロ人じゃないんだよ?
「ってまるで俺がジョ〇マン以下だって言ってるみたいじゃねぇか!」
「実際そうでしょう。ジョ〇マンさんにはファンがいて、しかも芸能人ですのできっとそれなりにお金を持っています。対して誠道さんは引きこもりで借金まみれ。雲泥の差がそこにはあります」
「だから現実を突きつけるな! ……いや借金まみれなのは俺じゃなくてミライだから!」
「そもそも誠道さんを縛っていいのは私だけですので、縛られたいときはいつでも言ってください!」
「そんなときは一生来ないからな!」
俺が一度でもミライに自発的に縛られたことなんかな……たぶんきっとないよね?
自信をもって否定できないなんて、もしかして俺って本当はM……なわけないに決まってるから!
そして、俺とミライが激しく言い争っている間に、イツモフさんとプリチーアイドルホンアちゃんはがっちりと握手を交わしていた。
「いやぁ、本当にタイミングがよくて助かりました。まさかプリチーアイドルのホンアちゃんが出張公演でハグワイアムに来ていたなんて」
「いえいえ、こちらこそ、新たなファン獲得の機会を作ってもらって光栄です」
二人は大きな契約を提携した経営者同士のように、互いに満足げな笑みを浮かべている。
「クラーケンとの対峙をファン獲得の機会と捉えられる前向きさだけは褒めてやるよ! ホンアちゃんはクラーケンを釣れる自信と作戦があるんですねぇ!」
二人が変な会話をしていたからきちんとツッコみつつ、ここはちゃんとしないといけないと思って、俺はイツモフさんの後ろに並ぶ。
なにを隠そう、俺はまごうことなき紳士だからね。
割り込みなんてしないんだよ。
「誠道さん!」
嫉妬顔のミライに耳を掴まれて引っ張られる。
「おい、いきなりなにすんだよ」
「じゃあ聞きますが、どうして握手会に並ぶオタクムーブを?」
……。
…………。
「はっ! いつの間にかホンアちゃんの魅力にほだされて、つい握手会のように並んでしまった」
イツモフさんがホンアちゃんと握手していたから、つい無意識に体が動いてしまった。
ホンアちゃんの魅力、恐るべし。
「あれ? 俺を無意識に動かしてしまうほどの魅力を持っているなら、もしかしてホンアちゃんの魅力は種族を越える?」
「誠道さんがアホでちょろいだけだと思うのですが」
呆れたように首を振るミライ。
そして、ミライの言った通り、ホンアちゃんがいくら歌って踊ってもクラーケンが動くことはなかった。
「ってこれだと俺が本当にちょろいみたいじゃねぇか!」
「クラーケンを引き寄せるためのダンスに引き寄せられてオタ芸してる誠道さんに言われても、説得力ないですからね!」
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
駆け落ち男女の気ままな異世界スローライフ
壬黎ハルキ
ファンタジー
それは、少年が高校を卒業した直後のことだった。
幼なじみでお嬢様な少女から、夕暮れの公園のど真ん中で叫ばれた。
「知らない御曹司と結婚するなんて絶対イヤ! このまま世界の果てまで逃げたいわ!」
泣きじゃくる彼女に、彼は言った。
「俺、これから異世界に移住するんだけど、良かったら一緒に来る?」
「行くわ! ついでに私の全部をアンタにあげる! 一生大事にしなさいよね!」
そんな感じで駆け落ちした二人が、異世界でのんびりと暮らしていく物語。
※2019年10月、完結しました。
※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。
兎人ちゃんと異世界スローライフを送りたいだけなんだが
アイリスラーメン
ファンタジー
黒髪黒瞳の青年は人間不信が原因で仕事を退職。ヒキニート生活が半年以上続いたある日のこと、自宅で寝ていたはずの青年が目を覚ますと、異世界の森に転移していた。
右も左もわからない青年を助けたのは、垂れたウサ耳が愛くるしい白銀色の髪をした兎人族の美少女。
青年と兎人族の美少女は、すぐに意気投合し共同生活を始めることとなる。その後、青年の突飛な発想から無人販売所を経営することに。
そんな二人に夢ができる。それは『三食昼寝付きのスローライフ』を送ることだ。
青年と兎人ちゃんたちは苦難を乗り越えて、夢の『三食昼寝付きのスローライフ』を実現するために日々奮闘するのである。
三百六十五日目に大戦争が待ち受けていることも知らずに。
【登場人物紹介】
マサキ:本作の主人公。人間不信な性格。
ネージュ:白銀の髪と垂れたウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。恥ずかしがり屋。
クレール:薄桃色の髪と左右非対称なウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。人見知り。
ダール:オレンジ色の髪と短いウサ耳が特徴的な兎人族の美少女。お腹が空くと動けない。
デール:双子の兎人族の幼女。ダールの妹。しっかり者。
ドール:双子の兎人族の幼女。ダールの妹。しっかり者。
ルナ:イングリッシュロップイヤー。大きなウサ耳で空を飛ぶ。実は幻獣と呼ばれる存在。
ビエルネス:子ウサギサイズの妖精族の美少女。マサキのことが大好きな変態妖精。
ブランシュ:外伝主人公。白髪が特徴的な兎人族の女性。世界を守るために戦う。
【お知らせ】
◆2021/12/09:第10回ネット小説大賞の読者ピックアップに掲載。
◆2022/05/12:第10回ネット小説大賞の一次選考通過。
◆2022/08/02:ガトラジで作品が紹介されました。
◆2022/08/10:第2回一二三書房WEB小説大賞の一次選考通過。
◆2023/04/15:ノベルアッププラス総合ランキング年間1位獲得。
◆2023/11/23:アルファポリスHOTランキング5位獲得。
◆自費出版しました。メルカリとヤフオクで販売してます。
※アイリスラーメンの作品です。小説の内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
『購入無双』 復讐を誓う底辺冒険者は、やがてこの世界の邪悪なる王になる
チョーカ-
ファンタジー
底辺冒険者であるジェル・クロウは、ダンジョンの奥地で仲間たちに置き去りにされた。
暗闇の中、意識も薄れていく最中に声が聞こえた。
『力が欲しいか? 欲しいなら供物を捧げよ』
ジェルは最後の力を振り絞り、懐から財布を投げ込みと
『ご利用ありがとうございます。商品をお選びください』
それは、いにしえの魔道具『自動販売機』
推すめされる商品は、伝説の武器やチート能力だった。
力を得た少年は復讐……そして、さらなる闇へ堕ちていく
※本作は一部 Midjourneyにより制作したイラストを挿絵として使用しています。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
よろしくお願いいたします。
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる