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第6章 3 クラーケンの倒し方

最強の釣り師でした!

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「そもそもピンクのフリフリ衣装なんてクラーケンの餌にもならねぇよ!」

 俺がそう指摘すると、ホンアちゃんはぷくぅっと頬を膨らませる。

「でもでもー、私と握手をしたら、みんなファンになってくれますよ?」

「クラーケンと握手なんかしたら、その触手で縛り上げられて終わりだよ! そんな無駄なことは普通にやめとけ!」

 正論を口にすると、それまで静観を貫いていたミライが首をかしげる。

「誠道さん? もしかしてホンアちゃんが釣ることに反対しているのは、自分が釣ろうとしているからではないですか? それでクラーケンの触手に縛られたいと、それはそれでありだと思っていませんか?」

「普通に考えて思ってるわけねぇだろ!」

「安心してください。引きこもりの誠道さんが握手会を開いても、クラーケンどころか女の子一人釣れませんから。そもそも誰も来ませんから」

「ストレートなご意見ありがとう!」

 そうやって本当のこと言わないでよぉ。

 めちゃくちゃ悲しくなるだけじゃん。

 そりゃあさ、プリチーアイドルホンアちゃんと違って、俺には集客力はないよ。

 あのジョ〇マンだって、昔は握手会に誰も来なかったけど今は握手会ゼロ人じゃないんだよ?

「ってまるで俺がジョ〇マン以下だって言ってるみたいじゃねぇか!」

「実際そうでしょう。ジョ〇マンさんにはファンがいて、しかも芸能人ですのできっとそれなりにお金を持っています。対して誠道さんは引きこもりで借金まみれ。雲泥の差がそこにはあります」

「だから現実を突きつけるな! ……いや借金まみれなのは俺じゃなくてミライだから!」

「そもそも誠道さんを縛っていいのは私だけですので、縛られたいときはいつでも言ってください!」

「そんなときは一生来ないからな!」

 俺が一度でもミライに自発的に縛られたことなんかな……たぶんきっとないよね?

 自信をもって否定できないなんて、もしかして俺って本当はM……なわけないに決まってるから!

 そして、俺とミライが激しく言い争っている間に、イツモフさんとプリチーアイドルホンアちゃんはがっちりと握手を交わしていた。

「いやぁ、本当にタイミングがよくて助かりました。まさかプリチーアイドルのホンアちゃんが出張公演でハグワイアムに来ていたなんて」

「いえいえ、こちらこそ、新たなファン獲得の機会を作ってもらって光栄です」

 二人は大きな契約を提携した経営者同士のように、互いに満足げな笑みを浮かべている。

「クラーケンとの対峙をファン獲得の機会と捉えられる前向きさだけは褒めてやるよ! ホンアちゃんはクラーケンを釣れる自信と作戦があるんですねぇ!」

 二人が変な会話をしていたからきちんとツッコみつつ、ここはちゃんとしないといけないと思って、俺はイツモフさんの後ろに並ぶ。

 なにを隠そう、俺はまごうことなき紳士だからね。

 割り込みなんてしないんだよ。

「誠道さん!」

 嫉妬顔のミライに耳を掴まれて引っ張られる。

「おい、いきなりなにすんだよ」

「じゃあ聞きますが、どうして握手会に並ぶオタクムーブを?」



 ……。

 …………。



「はっ! いつの間にかホンアちゃんの魅力にほだされて、つい握手会のように並んでしまった」

 イツモフさんがホンアちゃんと握手していたから、つい無意識に体が動いてしまった。

 ホンアちゃんの魅力、恐るべし。

「あれ? 俺を無意識に動かしてしまうほどの魅力を持っているなら、もしかしてホンアちゃんの魅力は種族を越える?」

「誠道さんがアホでちょろいだけだと思うのですが」

 呆れたように首を振るミライ。

 そして、ミライの言った通り、ホンアちゃんがいくら歌って踊ってもクラーケンが動くことはなかった。

「ってこれだと俺が本当にちょろいみたいじゃねぇか!」

「クラーケンを引き寄せるためのダンスに引き寄せられてオタ芸してる誠道さんに言われても、説得力ないですからね!」
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