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第6章 2 旅館にて、契約
ロリコン疑惑
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コハクちゃんの店の周りを徘徊していたのは、バカな泥棒だった。
赤いふんどし姿という変態しかしない格好で現れて店の前を歩くことで、人通りを少なくしてから泥棒に入る。
本人曰く、練りに練った成功確率99パーセントの素晴らしい作戦だったらしい。
これまで、街でも二度試したそうだ。
うん。
どう考えてもこの泥棒、ただのバカだよね?
誰かに見られる可能性を極限まで減らせる素晴らしい作戦だと説明していたが、普通に真夜中になれば人通りは減るよね?
しかも、
「二回とも店にお金がなくて、危険を冒して泥棒に入ったのに稼ぎが少なかった。作戦は完璧だったが選ぶ店を間違えた」
なんて不満を述べたんですけど、それは変態として現れたあんたが店の売上を減少させたからではないですか?
とにもかくにも、俺たちは泥棒を捕まえたということで、グランダラの警察から表彰された。
そしていまは、リゾート都市ハグワイアムにバカンスにやってきている。
ミライが店頭販売で爆買いしたときにもらった福引券で、みごと一等を引き当てたのだ。
旅館についてチェックインした後、俺とミライはすぐに海へと向かう。
「誠道さんの方が先に着替え終わると思うので砂浜に行って準備をお願いします。パラソルとかレンタルできるので」
「わかった」
海岸に併設されてある更衣室の前でミライと別れる。
すぐに着替え終えた俺は、ミライに言われた通りビニールシートとビーチパラソルをレンタルして砂浜に設置した。
「にしても、やっぱ海は暑いなぁ。さすがリゾート、人も多いし……」
パラソルの影になっている部分に腰を下ろし、あたりを見渡す。
一年中温暖な気候で知られているハグワアイムには、時期を問わず多くの観光客が押し寄せている。
透明度の高い綺麗な海に、白い砂浜、綺麗な街並みは見ているだけで心が弾む。
「そして水着姿の女の子たちがいっぱい……目が忙しいぜ!」
「目が忙しいぜ! じゃないですよ! そんなにキョロキョロしないでください。もはや不審者なので女の子たちが怯えて去ってしまいます」
「俺の視線のどこが不審なのか聞こうじゃな……」
目の前にいるミライを見上げた瞬間、言葉が出なくなった。
ビキニ姿のミライが目の前に立っていたからだ。
大きな胸を支える白い生地はどことなく面積が少ないように見える。
見上げているので、ちょっと下乳が見えかけているのもまたいい。
真っ白のボトムは紐で結ぶタイプで、爽やかな海風に揺られている蝶々結びが緩く見えるのは気のせいか。
すらりとした足はビーチの白い砂よりも白く、陽光に照らされている海面よりも輝いている気がした。
白のシンプルなビキニが、ミライのスタイルの良さを如実に際立たせている。
「あれ、どうしたんですか? もしかして私に見惚れているとか」
「違うよ。ちょっと熱くて頭がぼーっとしただけだ」
顔が熱いのは砂浜から立ち上る熱のせいだと思い込む。
「大丈夫ですか? 海に来てすぐ熱中症になるなんて、さすが夏はクーラーがお友達、太陽の光に慣れていないで有名な引きこもりの誠道さんですね。お水を買ってきましょうか?」
「いいよ、そんなんじゃないし」
「そんなんじゃない熱中症ってどんなですか」
くすくす笑いながらミライが俺の隣に座る。
海の方から風が吹いてきて、俺の火照った体を優しくなぞってきた。
「風が気持ちいいですね。さすがリゾート都市なだけあります」
気持ちよさそうに目を閉じたミライが、靡く髪を手で押さえながら呟く。
その姿は本当に美しかった。
他の観光客たちの視線がミライに集まっている……気がする。
俺が見られているわけではないのだが、なんだか居心地が悪いし、ちょっとだけむしゃくしゃした気分になる。
まあ、引きこもりの俺に、周囲に睨みを利かすような度胸なんてないのだけど。
なんて思っていると。
「なんか、すごい視線を感じますね。ま、私は超優秀でスタイル抜群な美少女メイドなので仕方ありませんが」
「超優秀ってところは訂正しようか。過去をちゃんと振り返ろう」
「スタイル抜群で美少女だと思っていることは否定しないんですね」
「なっ……まあ、それは……まあ」
否定も肯定もできずどっちつかずな返事しかできなかった。
そんな俺を見てミライは満足げな笑みを浮かべると。
「でも、ちょっと視線を集めすぎて居心地悪いので、上から服を着ることにします。誠道さんの鞄の中に入ってますよね」
そう言いながら膝立ちになったミライは、俺の方にお尻を突き出すようにして四つん這いになって、鞄の中をガサゴソとあさりはじめた。
目に毒なのですぐに視線を逸らしたが、なぜか視界の中央にはずっとミライのお尻が!
「ありました。ちょっと大きいですが、まあ結べばいいですしね」
ミライが上から白の服を着て、腰のあたりをキュッと結ぶ。
ああ、水着の上からなにかを羽織るって、見えている肌色は減ってるんだけど、かえってえろく見えるんですよね、なぜか。
この気持ち、わかる人いるよね。
「それに、誠道さん以外に水着姿を見せる必要はありませんしね」
ふいに呟かれた言葉に心臓が弾ける。
小さな声だったので、ミライはきっと聞かれていても聞かれていなくてもどちらでもいいって感じで思っているに違いない。
だから、聞こえていないふりをして反応しなくたってなんら問題はないので、俺は目の前で遊んでいた家族連れを見ることにする。
小さな女の子が、父親と母親の手を引っ張りながらきゃあきゃあと通り過ぎていく。
その子の満面の笑顔は、キラキラと輝く海にぴったりだと思った。
「……誠道さん。その視線は普通に犯罪ですよ」
「いきなり俺にロリコン疑惑をかけるな!」
赤いふんどし姿という変態しかしない格好で現れて店の前を歩くことで、人通りを少なくしてから泥棒に入る。
本人曰く、練りに練った成功確率99パーセントの素晴らしい作戦だったらしい。
これまで、街でも二度試したそうだ。
うん。
どう考えてもこの泥棒、ただのバカだよね?
誰かに見られる可能性を極限まで減らせる素晴らしい作戦だと説明していたが、普通に真夜中になれば人通りは減るよね?
しかも、
「二回とも店にお金がなくて、危険を冒して泥棒に入ったのに稼ぎが少なかった。作戦は完璧だったが選ぶ店を間違えた」
なんて不満を述べたんですけど、それは変態として現れたあんたが店の売上を減少させたからではないですか?
とにもかくにも、俺たちは泥棒を捕まえたということで、グランダラの警察から表彰された。
そしていまは、リゾート都市ハグワイアムにバカンスにやってきている。
ミライが店頭販売で爆買いしたときにもらった福引券で、みごと一等を引き当てたのだ。
旅館についてチェックインした後、俺とミライはすぐに海へと向かう。
「誠道さんの方が先に着替え終わると思うので砂浜に行って準備をお願いします。パラソルとかレンタルできるので」
「わかった」
海岸に併設されてある更衣室の前でミライと別れる。
すぐに着替え終えた俺は、ミライに言われた通りビニールシートとビーチパラソルをレンタルして砂浜に設置した。
「にしても、やっぱ海は暑いなぁ。さすがリゾート、人も多いし……」
パラソルの影になっている部分に腰を下ろし、あたりを見渡す。
一年中温暖な気候で知られているハグワアイムには、時期を問わず多くの観光客が押し寄せている。
透明度の高い綺麗な海に、白い砂浜、綺麗な街並みは見ているだけで心が弾む。
「そして水着姿の女の子たちがいっぱい……目が忙しいぜ!」
「目が忙しいぜ! じゃないですよ! そんなにキョロキョロしないでください。もはや不審者なので女の子たちが怯えて去ってしまいます」
「俺の視線のどこが不審なのか聞こうじゃな……」
目の前にいるミライを見上げた瞬間、言葉が出なくなった。
ビキニ姿のミライが目の前に立っていたからだ。
大きな胸を支える白い生地はどことなく面積が少ないように見える。
見上げているので、ちょっと下乳が見えかけているのもまたいい。
真っ白のボトムは紐で結ぶタイプで、爽やかな海風に揺られている蝶々結びが緩く見えるのは気のせいか。
すらりとした足はビーチの白い砂よりも白く、陽光に照らされている海面よりも輝いている気がした。
白のシンプルなビキニが、ミライのスタイルの良さを如実に際立たせている。
「あれ、どうしたんですか? もしかして私に見惚れているとか」
「違うよ。ちょっと熱くて頭がぼーっとしただけだ」
顔が熱いのは砂浜から立ち上る熱のせいだと思い込む。
「大丈夫ですか? 海に来てすぐ熱中症になるなんて、さすが夏はクーラーがお友達、太陽の光に慣れていないで有名な引きこもりの誠道さんですね。お水を買ってきましょうか?」
「いいよ、そんなんじゃないし」
「そんなんじゃない熱中症ってどんなですか」
くすくす笑いながらミライが俺の隣に座る。
海の方から風が吹いてきて、俺の火照った体を優しくなぞってきた。
「風が気持ちいいですね。さすがリゾート都市なだけあります」
気持ちよさそうに目を閉じたミライが、靡く髪を手で押さえながら呟く。
その姿は本当に美しかった。
他の観光客たちの視線がミライに集まっている……気がする。
俺が見られているわけではないのだが、なんだか居心地が悪いし、ちょっとだけむしゃくしゃした気分になる。
まあ、引きこもりの俺に、周囲に睨みを利かすような度胸なんてないのだけど。
なんて思っていると。
「なんか、すごい視線を感じますね。ま、私は超優秀でスタイル抜群な美少女メイドなので仕方ありませんが」
「超優秀ってところは訂正しようか。過去をちゃんと振り返ろう」
「スタイル抜群で美少女だと思っていることは否定しないんですね」
「なっ……まあ、それは……まあ」
否定も肯定もできずどっちつかずな返事しかできなかった。
そんな俺を見てミライは満足げな笑みを浮かべると。
「でも、ちょっと視線を集めすぎて居心地悪いので、上から服を着ることにします。誠道さんの鞄の中に入ってますよね」
そう言いながら膝立ちになったミライは、俺の方にお尻を突き出すようにして四つん這いになって、鞄の中をガサゴソとあさりはじめた。
目に毒なのですぐに視線を逸らしたが、なぜか視界の中央にはずっとミライのお尻が!
「ありました。ちょっと大きいですが、まあ結べばいいですしね」
ミライが上から白の服を着て、腰のあたりをキュッと結ぶ。
ああ、水着の上からなにかを羽織るって、見えている肌色は減ってるんだけど、かえってえろく見えるんですよね、なぜか。
この気持ち、わかる人いるよね。
「それに、誠道さん以外に水着姿を見せる必要はありませんしね」
ふいに呟かれた言葉に心臓が弾ける。
小さな声だったので、ミライはきっと聞かれていても聞かれていなくてもどちらでもいいって感じで思っているに違いない。
だから、聞こえていないふりをして反応しなくたってなんら問題はないので、俺は目の前で遊んでいた家族連れを見ることにする。
小さな女の子が、父親と母親の手を引っ張りながらきゃあきゃあと通り過ぎていく。
その子の満面の笑顔は、キラキラと輝く海にぴったりだと思った。
「……誠道さん。その視線は普通に犯罪ですよ」
「いきなり俺にロリコン疑惑をかけるな!」
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