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第5章 3 発覚
体の不調とミルフィーユ
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ホンアちゃんの予想に反して、俺の家の周りに集ったホンアちゃんのファンたちは、五日たっても帰ろうとしなかった。
それだけ、ホンアちゃんが愛されている、心配されているということだろう。
ファンたちはさすがにもう声を荒らげることはなくなったが、その代わりにまるでここがキャンプ場かのように、俺の家の周囲で寝泊まりをはじめた。
「まったく、本当にしつこいなぁ。ファンのくせにさ。普通三日坊主だろ。アイドルなんか腐るほどいるのに、本当にもう」
さっきホンアちゃんはそう呟いてから、この家の客間――ホンアちゃんが寝室として利用している部屋――に消えていった。
言葉とは裏腹にちょっとだけ嬉しそうに見えたのは気のせいだろうか。
「ってかなんでこんな痛いんだよ。寝違えたか?」
ソファにぐでんと座って、首や肩をとんとんたたく。
なぜかここのところ肩とか腰とか首とか、体中が痛いんだよなぁ。
なんでだろう。
夜寝ているときなんか、急に釘を打ち込まれたみたいな痛みを感じて飛び起きることもある。
そのせいで常時寝不足状態。
まぶたが非常に重く、気を抜けば永眠してしまいそうだ。
「本当に、困りましたねぇ」
俺の背後でミライが大きなため息をつく。
「え? もしかしてミライにも体の不調が?」
「いえ、私は精神的な悩みです。食料の備蓄はまだ余裕があるとはいえ、ファンたちに囲まれ、常時監視状態で一歩も外に出られない生活がこんなに窮屈で息苦しいなんて……あ、すみません誠道さん。いまのは誠道さんへの皮肉になってしまいますね。引きこもりの誠道さんにとってはこれが普通なんですもんね」
「ミライは本当に謝る気があるのか?」
皮肉に皮肉を重ねられた気がするんですけど。
あ、ちょっと不意にミルフィーユ食べたくなったよ。
「……にしても、ちょっとおかしくありませんか?」
「え? ミルフィーユはたしかにお菓子だけど」
「なにを言っているのですか? ファンたちの様子のことですよ」
ミライは不満げに、リビングの窓を覆い隠すカーテンを見やる。
「彼らの中には五日も同じ場所に居座れるような装備の人はいませんでした。食料とかはどうしているんでしょう。トレイの問題だってあります。身なりも、まるで昨日温泉につかってきたかのように綺麗ですし」
「俺たちが見ていない隙に帰ってるんじゃないのか?」
「いえ、ファンを不眠不休で監視するように命令したマーズさんが定期的に報告してくれるんですが、誰ひとりとしてこの場所を動いたファンはいないとのことです。マーズさんがこの家にきて報告を終えてから外に出るまでたった一分弱。皆さんずっとここにとどまっているとしか考えられません」
「俺としては、マーズがまだファンたちの防波堤になってくれていたことに驚きだよ」
ごめんね、マーズ。
ミライにいい様に利用されてることもそうだし、そもそも俺は二日目くらいからマーズの存在を完全に忘れていた。
「マーズさんは、私の言うことを嬉々として聞いてくれますので。こういうときは本当に便利です」
「ああっ! なぜかいま、私が雑に扱われている気がするぅ!」
あ、ミライの言う通り、本当にマーズはまだ俺んちの外にいたんだね。
外からマーズの興奮の声が聞こえてきたよ。
「でも……たしかに不自然だな」
「ええ。それに、最近ではみなさん誠道さんの顔の絵が描かれた藁人形を持って、せっせと釘を打ち込んでいます」
「俺の体の痛みの理由がようやくわかったわ! ってかマーズはそういう行為を取り締まれよ!」
「マーズさんはファンの監視の他に、藁人形と自分の体をリンクさせる魔法を開発するので忙しいそうで、そこまで手が回らないとおっしゃっていました」
「なんだそりゃ! 全然忙しくねぇだろ! 会社で新聞読んでるおじさんの方がまだましだわ!」
それだけ、ホンアちゃんが愛されている、心配されているということだろう。
ファンたちはさすがにもう声を荒らげることはなくなったが、その代わりにまるでここがキャンプ場かのように、俺の家の周囲で寝泊まりをはじめた。
「まったく、本当にしつこいなぁ。ファンのくせにさ。普通三日坊主だろ。アイドルなんか腐るほどいるのに、本当にもう」
さっきホンアちゃんはそう呟いてから、この家の客間――ホンアちゃんが寝室として利用している部屋――に消えていった。
言葉とは裏腹にちょっとだけ嬉しそうに見えたのは気のせいだろうか。
「ってかなんでこんな痛いんだよ。寝違えたか?」
ソファにぐでんと座って、首や肩をとんとんたたく。
なぜかここのところ肩とか腰とか首とか、体中が痛いんだよなぁ。
なんでだろう。
夜寝ているときなんか、急に釘を打ち込まれたみたいな痛みを感じて飛び起きることもある。
そのせいで常時寝不足状態。
まぶたが非常に重く、気を抜けば永眠してしまいそうだ。
「本当に、困りましたねぇ」
俺の背後でミライが大きなため息をつく。
「え? もしかしてミライにも体の不調が?」
「いえ、私は精神的な悩みです。食料の備蓄はまだ余裕があるとはいえ、ファンたちに囲まれ、常時監視状態で一歩も外に出られない生活がこんなに窮屈で息苦しいなんて……あ、すみません誠道さん。いまのは誠道さんへの皮肉になってしまいますね。引きこもりの誠道さんにとってはこれが普通なんですもんね」
「ミライは本当に謝る気があるのか?」
皮肉に皮肉を重ねられた気がするんですけど。
あ、ちょっと不意にミルフィーユ食べたくなったよ。
「……にしても、ちょっとおかしくありませんか?」
「え? ミルフィーユはたしかにお菓子だけど」
「なにを言っているのですか? ファンたちの様子のことですよ」
ミライは不満げに、リビングの窓を覆い隠すカーテンを見やる。
「彼らの中には五日も同じ場所に居座れるような装備の人はいませんでした。食料とかはどうしているんでしょう。トレイの問題だってあります。身なりも、まるで昨日温泉につかってきたかのように綺麗ですし」
「俺たちが見ていない隙に帰ってるんじゃないのか?」
「いえ、ファンを不眠不休で監視するように命令したマーズさんが定期的に報告してくれるんですが、誰ひとりとしてこの場所を動いたファンはいないとのことです。マーズさんがこの家にきて報告を終えてから外に出るまでたった一分弱。皆さんずっとここにとどまっているとしか考えられません」
「俺としては、マーズがまだファンたちの防波堤になってくれていたことに驚きだよ」
ごめんね、マーズ。
ミライにいい様に利用されてることもそうだし、そもそも俺は二日目くらいからマーズの存在を完全に忘れていた。
「マーズさんは、私の言うことを嬉々として聞いてくれますので。こういうときは本当に便利です」
「ああっ! なぜかいま、私が雑に扱われている気がするぅ!」
あ、ミライの言う通り、本当にマーズはまだ俺んちの外にいたんだね。
外からマーズの興奮の声が聞こえてきたよ。
「でも……たしかに不自然だな」
「ええ。それに、最近ではみなさん誠道さんの顔の絵が描かれた藁人形を持って、せっせと釘を打ち込んでいます」
「俺の体の痛みの理由がようやくわかったわ! ってかマーズはそういう行為を取り締まれよ!」
「マーズさんはファンの監視の他に、藁人形と自分の体をリンクさせる魔法を開発するので忙しいそうで、そこまで手が回らないとおっしゃっていました」
「なんだそりゃ! 全然忙しくねぇだろ! 会社で新聞読んでるおじさんの方がまだましだわ!」
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