上 下
245 / 360
第5章 3 発覚

大臣就任

しおりを挟む
 俺の家はいま、ホンアちゃんのスキャンダルを知ったホンアちゃんのファンたちに包囲されていた。

 もちろん、そのファンたちを取りまとめているのはキシャダ・マシィだ。

 さすがに家に押し入ってくるまではしないみたいだが、結構な恐怖だな、これ。

 芸能人って、いつもこんな恐怖を味わっているのか。

 ちなみに、ホンアちゃんは俺の家で保護してある。

 二階の自室の窓をわずかに開けて外の様子をうかがうと、ファンの怒りの声がはっきりと聞こえてきた。

「俺たちは説明を要求する!」

「この写真はどういうことか説明してくれ!」

「俺たちは、ただホンアちゃんを信じたいだけなんだ!」

「どうして、こんなただの引きこもり男なんかに! ――くそう! だったら俺にもチャンスがあったんじゃないか!」

 最後の人だけは、ちょっと違うんじゃないだろうか。

 あなたには俺の家を取り囲む資格はないと思いますが?

「そうですよ! 誠道さん! 私もあーんについての説明を要求します! ナルチーって誰ですか? どうしたらこんなことできるんですか!!」

「なんでミライはそっち側にいるんだよ!」

 ファンに混ざって抗議するミライを見つけ、思わず窓を全開にして顔を出してしまった。

「おい! でてきたぞ!」

「あいつが天性の引きこもり男か!」

「俺たちのホンアちゃんを返せ!」

「やばっ!」

 石やらゴミやら投げてきそうな勢いで罵られたので、慌てて窓から顔を引っ込める。

 ってミライは本当になにやってんだよ!!

 俺を支援する立場なのに、なんで敵に回ってんだ!

 明らかにおかしいだろ!

 そもそもミライはすべての事情を知ってるだろ!!

 どうしたらいいのかわからないまま、俺はリビングに下りて、とりあえず水を飲む。

 カーテンが閉め切られているため、この家の空気はひどく重苦しい。

 ホンアちゃんはソファの上で膝を抱えて縮こまっており、その隣にはマーズと聖ちゃんが……。

「いやなんで二人がいるんだよ!」

「だってここにいれば、まるで私が罵声を浴びせられているように思えるでしょ? ここはドMのオアシス! 誠道くんったら、こんな天国を作り出すなんて、ドM大臣に任命してあげてもいいわ!」

「私は、ミライさんとの約束通り、ゴブリンタイラントの睾丸を持ってきました」

 ……。

 …………はぁ。

 なんか、ため息はついてしまったけど、通常運転のマーズも聖ちゃんが見られて、ちょっと心が落ち着きました。

「でも、二人はよくここまで来られたな。俺の家の周りはファンでごった返してるってのに」

「聖ちゃんと歩いていたら、なぜか男のファンたちは股間を抑えながら道を開けてくれたのよ。モーゼになった気分だったわ」

「睾丸女帝の本領発揮だな!」

「あと私たちが家に入ろうとしたら、他に二人も女がいるのかっ! あんな引きこもりのどこがいいんだっ! って罵られたわ」

「俺のイメージ大暴落じゃねえか!」

「あの睾丸女帝を受け入れられるような心の広い男なら仕方がないか……、という諦めの声もあったわよ」

「受け入れてねぇから!」

 マーズにツッコんだあとでがっくりと項垂れていると、聖ちゃんが俺の肩に優しく手を置いて一言。

「こんなことで落ち込まないでください。だって、私は知っていますから」

 にこりと笑みを浮かべる聖ちゃん。

 おお、俺を励ましてくれるのか。

「元から誠道さんは、大暴落するほどイメージよくないですよね」

 まあ、こういう言葉が飛んでくることは薄々わかってはいたけどね。

 期待するのは無料でしょ?

「で、そういえばミライさんはどこにいるんですか? 早くゴブリンタイラントの睾丸を渡したいのですが」

 聖ちゃんにそう聞かれたので、俺はミライがファンに紛れているので連れて帰ってきてほしいとお願いした。

 ほら、だって聖ちゃんには男どもが近づけないからね。

 ミライを連れ戻す役割を任せるのには、一番適任で一番安全でしょ?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

2代目魔王と愉快な仲間たち

助兵衛
ファンタジー
魔物やら魔法やらが当たり前にある世界に、いつの間にか転がり込んでしまった主人公進藤和也。 成り行き、運命、八割悪ノリであれよあれよと担ぎ上げられ、和也は2代目魔王となってしまう…… しかし彼には、ちょっとした秘密があった。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

処理中です...