242 / 360
第5章 2 背徳快感爆走中!
呼吸を忘れるほどに
しおりを挟む
その後も、いろいろと危ない場面はありつつも、なんとか騒ぎにならずにデートを終えた。
あれからホンアちゃんはフードを三回も取るという笑えないおバカっぷりを見せたので、本当にヒヤヒヤものだった。
ホンアちゃんと別れ、家に帰るとすぐにリビングのソファの上に倒れ込む。
いつもより体が深く沈み込む感じがした。
それだけ疲れていたということだろう。
「あ、お帰りなさい、誠道さん。帰っていたんですね」
ミライの声が聞こえてくる。
いままで自室にいたのだろうか。
俺はソファの座面に顔を埋めたまま答える。
「ああ、ミライ、今日はもう疲れたよ。なんだか僕、とっても眠いんだ」
「それ死んじゃうやつなのでやめてください」
いやこんなんで死なないから。
「それより誠道さん。今日のライブはそんなに白熱していたんですか?」
「いや、今日は中止だったんだ。ホンアちゃんが体調を崩したってことで」
「え? 中止? じゃあいままでいったいどこに?」
「ああ、実はそのあと、体調を崩したはずのホンアちゃんと会ったんだよ。実は体調を崩したって話がまず嘘で、嘘をついた理由は、体調を崩したと嘘をついて彼氏とデートをしている背徳感がどうとか、言ってたな」
うん、自分で説明していてなんだが、まったく意味がわからないね。
背徳感お化けの言っていることをすべて理解しようとすることが間違いか、ははは。
「なるほど。つまり誠道さんは、いままでホンアちゃんとデートをしていたと」
「それがすごい大変でさ。ホンアちゃん、秘密にしなきゃいけないのにフードを何度も外すんだよ。自分からバラしたいのかって感じだよ」
「なるほど。それは大変でしたね」
それからミライと何度か言葉を交わしたあと。
「ご飯はこの後作ります。ちょっと失礼します」
一礼したミライはそそくさとリビングを出ていった。
俺はソファの上で寝返りを打って、今度はあおむけになる。
今日のデートで感じた、少しの違和感を頭の中で反芻させる。
ホンアちゃんって、なんか背徳感で興奮しているときより、ライブで歌って踊ってるときの方が楽しそうなんだよなぁ。
俺とデートしてるとき、ふいに影のある表情を浮かべてるんだよなぁ。
「誠道さん。お待たせいたしました。いまからご飯を作りますね」
「ああ……頼むっ、って」
俺はリビングに入って来た逆さのミライを見て飛び上がった。
ホンアちゃんに対しての思考も、空高く吹っ飛んでいく。
すぐに起き上がって、今度はちゃんとソファの上に座って、まじまじとミライを見る。
「ちょっと、そんな、見ないでください。恥ずかしいです」
「いや、だって……」
ミライが、いつものセーラー服姿ではなく、ピンクのフリフリのミニワンピースを着ているからだ。
そのミニワンピースの裾をぎゅっと掴んで、頬を朱色に染めてうつむいている。
「ふ、服の趣味でも変わったのか? ってかそれ、どこかで見たことあるような」
「これはですね。ホンアさんがライブのときに着ていた衣装です」
そうかっ!
それで見たことがあったのか。
「でも……なんでいきなり? もしかしてミライもホンアちゃんのファンなの?」
元の世界にいるときは、押しのアイドルの衣装を忠実に再現し、ダンスを完コピするタイプのアイドルオタクもいた。
「いえ。私はアイドルなんぞに興味は一切ございません」
「じゃあ、ほんとになんで」
「それは……」
ミライは俺の目の前まで歩いてきて、上目遣いで見つめてくる。
「ホンアさんは男なので大丈夫だと思っているんですが、誠道さんのあまりの熱中ぶりに不安になりまして。それで……」
「ふ、不安って」
俺がじりと一歩下がると、ミライはすぐにその距離を詰めてくる。
「この格好、どうでしょうか?」
「どうって……その、まあ、似合ってて、その……可愛いというか、まあ、いいんじゃないの?」
何度もつっかえながらだったが、なんとか正直にそう伝える。
ミライの真っすぐな瞳に、ごまかさないでくださいよという圧を感じたのだ。
「か、可愛い。そ、そうです、か……」
ミライの耳が赤くなる。
その耳を隠すように両手で押さえ、三歩後ろに下がる。
「ありがとうございます。誠道さんにそう言っていただけて、苦労して準備した甲斐がありました」
まだ赤い顔をくしゃりと緩ませて本当に幸せそうに笑うミライ。
俺はその顔から目を逸らす事が出来なかった。
体中が熱くて、呼吸も忘れていて、ただただミライの笑顔に見惚れていた。
あれからホンアちゃんはフードを三回も取るという笑えないおバカっぷりを見せたので、本当にヒヤヒヤものだった。
ホンアちゃんと別れ、家に帰るとすぐにリビングのソファの上に倒れ込む。
いつもより体が深く沈み込む感じがした。
それだけ疲れていたということだろう。
「あ、お帰りなさい、誠道さん。帰っていたんですね」
ミライの声が聞こえてくる。
いままで自室にいたのだろうか。
俺はソファの座面に顔を埋めたまま答える。
「ああ、ミライ、今日はもう疲れたよ。なんだか僕、とっても眠いんだ」
「それ死んじゃうやつなのでやめてください」
いやこんなんで死なないから。
「それより誠道さん。今日のライブはそんなに白熱していたんですか?」
「いや、今日は中止だったんだ。ホンアちゃんが体調を崩したってことで」
「え? 中止? じゃあいままでいったいどこに?」
「ああ、実はそのあと、体調を崩したはずのホンアちゃんと会ったんだよ。実は体調を崩したって話がまず嘘で、嘘をついた理由は、体調を崩したと嘘をついて彼氏とデートをしている背徳感がどうとか、言ってたな」
うん、自分で説明していてなんだが、まったく意味がわからないね。
背徳感お化けの言っていることをすべて理解しようとすることが間違いか、ははは。
「なるほど。つまり誠道さんは、いままでホンアちゃんとデートをしていたと」
「それがすごい大変でさ。ホンアちゃん、秘密にしなきゃいけないのにフードを何度も外すんだよ。自分からバラしたいのかって感じだよ」
「なるほど。それは大変でしたね」
それからミライと何度か言葉を交わしたあと。
「ご飯はこの後作ります。ちょっと失礼します」
一礼したミライはそそくさとリビングを出ていった。
俺はソファの上で寝返りを打って、今度はあおむけになる。
今日のデートで感じた、少しの違和感を頭の中で反芻させる。
ホンアちゃんって、なんか背徳感で興奮しているときより、ライブで歌って踊ってるときの方が楽しそうなんだよなぁ。
俺とデートしてるとき、ふいに影のある表情を浮かべてるんだよなぁ。
「誠道さん。お待たせいたしました。いまからご飯を作りますね」
「ああ……頼むっ、って」
俺はリビングに入って来た逆さのミライを見て飛び上がった。
ホンアちゃんに対しての思考も、空高く吹っ飛んでいく。
すぐに起き上がって、今度はちゃんとソファの上に座って、まじまじとミライを見る。
「ちょっと、そんな、見ないでください。恥ずかしいです」
「いや、だって……」
ミライが、いつものセーラー服姿ではなく、ピンクのフリフリのミニワンピースを着ているからだ。
そのミニワンピースの裾をぎゅっと掴んで、頬を朱色に染めてうつむいている。
「ふ、服の趣味でも変わったのか? ってかそれ、どこかで見たことあるような」
「これはですね。ホンアさんがライブのときに着ていた衣装です」
そうかっ!
それで見たことがあったのか。
「でも……なんでいきなり? もしかしてミライもホンアちゃんのファンなの?」
元の世界にいるときは、押しのアイドルの衣装を忠実に再現し、ダンスを完コピするタイプのアイドルオタクもいた。
「いえ。私はアイドルなんぞに興味は一切ございません」
「じゃあ、ほんとになんで」
「それは……」
ミライは俺の目の前まで歩いてきて、上目遣いで見つめてくる。
「ホンアさんは男なので大丈夫だと思っているんですが、誠道さんのあまりの熱中ぶりに不安になりまして。それで……」
「ふ、不安って」
俺がじりと一歩下がると、ミライはすぐにその距離を詰めてくる。
「この格好、どうでしょうか?」
「どうって……その、まあ、似合ってて、その……可愛いというか、まあ、いいんじゃないの?」
何度もつっかえながらだったが、なんとか正直にそう伝える。
ミライの真っすぐな瞳に、ごまかさないでくださいよという圧を感じたのだ。
「か、可愛い。そ、そうです、か……」
ミライの耳が赤くなる。
その耳を隠すように両手で押さえ、三歩後ろに下がる。
「ありがとうございます。誠道さんにそう言っていただけて、苦労して準備した甲斐がありました」
まだ赤い顔をくしゃりと緩ませて本当に幸せそうに笑うミライ。
俺はその顔から目を逸らす事が出来なかった。
体中が熱くて、呼吸も忘れていて、ただただミライの笑顔に見惚れていた。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
死を約束されたデスゲームの悪役令嬢に転生したので、登場人物を皆殺しにして生き残りを目指すことにした ~なのにヒロインがグイグイと迫ってきて~
アトハ
ファンタジー
私(ティアナ)は、6人で互いに勝利条件の達成を目指して争う『デスゲーム』の悪役令嬢に転生してしまう。勝利条件は【自分以外の全プレイヤーの死亡】という、他の参加者とは決して相容れないものだった。
「生き残るためには、登場人物を皆殺しにするしかない」
私はそう決意する。幸いにしてここは、私が前世で遊んだゲームの世界だ。前世の知識を使って有利に立ち回れる上に、ゲームでラスボスとして君臨していたため、圧倒的な戦闘力を誇っている。
こうして決意を固めたものの――
「ティアナちゃん! 助けてくれてありがとう」
ひょんな偶然から、私は殺されかけているヒロインを助けることになる。ヒロインは私のことをすっかり信じきってしまい、グイグイと距離を縮めようとする。
(せいぜい利用させてもらいましょう。こんな能天気な女、いつでも殺せるわ)
そんな判断のもと、私はヒロインと共に行動することに。共に過ごすうちに「登場人物を皆殺しにする」という決意と裏腹に、私はヒロインを大切に思う自らの気持ちに気が付いてしまう。
自らが生き残るためには、ヒロインも殺さねばならない。葛藤する私は、やがて1つの答えにたどり着く。
※ ほかサイトにも投稿中です
異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~
水無月 静琉
ファンタジー
神様のミスによって命を落とし、転生した茅野巧。様々なスキルを授かり異世界に送られると、そこは魔物が蠢く危険な森の中だった。タクミはその森で双子と思しき幼い男女の子供を発見し、アレン、エレナと名づけて保護する。格闘術で魔物を楽々倒す二人に驚きながらも、街に辿り着いたタクミは生計を立てるために冒険者ギルドに登録。アレンとエレナの成長を見守りながらの、のんびり冒険者生活がスタート!
***この度アルファポリス様から書籍化しました! 詳しくは近況ボードにて!
スカートの中、…見たいの?
サドラ
大衆娯楽
どうしてこうなったのかは、説明を省かせていただきます。文脈とかも適当です。官能の表現に身を委ねました。
「僕」と「彼女」が二人っきりでいる。僕の指は彼女をなぞり始め…
傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~
日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】
https://ncode.syosetu.com/n1741iq/
https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199
【小説家になろうで先行公開中】
https://ncode.syosetu.com/n0091ip/
働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。
地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?
乙女ゲーム攻略対象者の母になりました。
緋田鞠
恋愛
【完結】「お前を抱く気はない」。夫となった王子ルーカスに、そう初夜に宣言されたリリエンヌ。だが、子供は必要だと言われ、医療の力で妊娠する。出産の痛みの中、自分に前世がある事を思い出したリリエンヌは、生まれた息子クローディアスの顔を見て、彼が乙女ゲームの攻略対象者である事に気づく。クローディアスは、ヤンデレの気配が漂う攻略対象者。可愛い息子がヤンデレ化するなんて、耐えられない!リリエンヌは、クローディアスのヤンデレ化フラグを折る為に、奮闘を開始する。
旦那様に離婚を突きつけられて身を引きましたが妊娠していました。
ゆらゆらぎ
恋愛
ある日、平民出身である侯爵夫人カトリーナは辺境へ行って二ヶ月間会っていない夫、ランドロフから執事を通して離縁届を突きつけられる。元の身分の差を考え気持ちを残しながらも大人しく身を引いたカトリーナ。
実家に戻り、兄の隣国行きについていくことになったが隣国アスファルタ王国に向かう旅の途中、急激に体調を崩したカトリーナは医師の診察を受けることに。
愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす
リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」
夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。
後に夫から聞かされた衝撃の事実。
アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。
※シリアスです。
※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる