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第5章 2 背徳快感爆走中!
いいファン、悪いファン、そんなの人それぞれ
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今日も俺は、ホンアちゃんのライブ会場にいる。
場所はいつもの広場。
隣には、なぜかめちゃうざ古参ファンのコジキーがいる。
俺は遠回しに拒絶しているにもかかわらず、一方的に懐かれてしまったのだ。
今日もコジキーは、ホンアちゃんファンクラブ並びにホンアちゃんファンクラブ会長のキシャダ・マシイを蔑むような目で見ている。
「けっ、あいつら、最近のホンアちゃんしか知らねぇにわかが。俺は俺しかファンがいなかった時代からホンアちゃんを応援してんだ。本当のホンアちゃんを知らねぇくせに、幅利かせやがって、ムカつくなぁ」
えっと、あなたも本当のホンアちゃん知らないですよねぇ。
あの子、ファンのことを背徳感を得るための道具としか見てませんよ。
男、ですよ。
「しっかし、今日はずいぶんと遅いなぁ。あんなキモい奴らの前で歌うのが嫌なんじゃねぇのかなぁ」
コジキ―さんがさらに愚痴る。
一向にホンアちゃんが現れないのはそんなクソみたいな理由じゃないと思うが、たしかにちょっと遅すぎだ。
もうライブの開始時間はとっくに過ぎてしまっている。
観客たちのざわめきも徐々に大きくなっている。
……って、あれ、見間違いか?
俺は何度も瞬きをして、目を擦りに擦って、ざわめく観客の中にいる一人の女性を見る。
「きゃー、ホンアちゃーん! まだなのぉ? まだなのぉ!?」
ホンアちゃんラブの文字が書かれた手作りうちわを持っているテンション高めの女性は、間違いなく氷の大魔法使い、マーズ・シィだ。
なにやってんだよあいつ……って俺もライブに来てるんだから人のこと言えねぇか。
でも、ホンアちゃんは女(男)だぞ。
なんで女が女を応援するんだ……って、そういう考えは時代遅れか。
女が女を応援したっていい。
誰の目も気にせず、好きなものを好きだと言えばいい。
それをバカにするやつなんか、大したことないさ。
それに、アイドルをやってるホンアちゃんを応援したくなる気持ちはよくわかる。
ステージに立つホンアちゃんはキラキラ輝いていて、老若男女を虜にするような素敵な魅力を――
「さぁ! 早く出てきてちょうだい! あなたがライブしているのを見ているだけで、なぜだかすごくバカにされているような気分になるの! 笑顔で踊っているのに蔑まれていると感じるの! さいっこうの快感なのっ!」
全然よくわからなかったわ!!
なんだよその理由!!
ってかマーズがドMすぎて、ホンアちゃんの真の目的、『ファンをバカにして背徳感を得たい』に気づきかけてるんですけど!
ある意味すごいよ!
あんたは正真正銘、ドMの鏡だよ!
それから、さらに十分ほど待たされたあと、ようやく舞台上に人が現れる。
「お、ようやくか……って、ホンアちゃんじゃねぇじゃねぇか」
コジキーが立ったまま貧乏ゆすりをしはじめる。
舞台に上がったのは、ぷりちーな衣装を着たぷりちーアイドルホンアちゃんではなく、一人のスーツ姿の男性だった。
「皆様、本日はぷりちーアイドルホンアちゃんのライブのためにお集まりいただき、誠にありがとうございます。私は、この広場の所有者で、舞台の出演スケジュールを管理している者です。本日、出演予定のホンアちゃんですが、急な体調不良のため本日は欠席となります。それに伴って、本日のライブは中止となります。急な決定となってしまいまして、大変申しわけございません」
事情を説明した男性が頭を下げると、観客たちから落胆の声が上がる。
しかし、ヤジを飛ばしたり男性に詰め寄ったりする人はいない。
まあ、しょうがないよね。
体調不良なんだから。
「くそがっ! そんなことどうでもいいからホンアちゃんを出せよ! 体調不良がどうした! ファンが第一だろうがよ!!」
……俺は、隣で唯一最低なヤジを飛ばしているコジキーさんを置いて、その場から立ち去った。
「んんあっ! 今日ホンアちゃんは姿を見せていないのに、姿を見せていないからこそ、なぜだかバカにされたように感じるわ。もうああっんんっ、最高よぉ!」
去り際に聞こえたマーズの言葉は、考えても考えても理解できなかった。
しかし、すぐにその理由がわかってしまうことを、このときの俺はまだ知らないのだった。
場所はいつもの広場。
隣には、なぜかめちゃうざ古参ファンのコジキーがいる。
俺は遠回しに拒絶しているにもかかわらず、一方的に懐かれてしまったのだ。
今日もコジキーは、ホンアちゃんファンクラブ並びにホンアちゃんファンクラブ会長のキシャダ・マシイを蔑むような目で見ている。
「けっ、あいつら、最近のホンアちゃんしか知らねぇにわかが。俺は俺しかファンがいなかった時代からホンアちゃんを応援してんだ。本当のホンアちゃんを知らねぇくせに、幅利かせやがって、ムカつくなぁ」
えっと、あなたも本当のホンアちゃん知らないですよねぇ。
あの子、ファンのことを背徳感を得るための道具としか見てませんよ。
男、ですよ。
「しっかし、今日はずいぶんと遅いなぁ。あんなキモい奴らの前で歌うのが嫌なんじゃねぇのかなぁ」
コジキ―さんがさらに愚痴る。
一向にホンアちゃんが現れないのはそんなクソみたいな理由じゃないと思うが、たしかにちょっと遅すぎだ。
もうライブの開始時間はとっくに過ぎてしまっている。
観客たちのざわめきも徐々に大きくなっている。
……って、あれ、見間違いか?
俺は何度も瞬きをして、目を擦りに擦って、ざわめく観客の中にいる一人の女性を見る。
「きゃー、ホンアちゃーん! まだなのぉ? まだなのぉ!?」
ホンアちゃんラブの文字が書かれた手作りうちわを持っているテンション高めの女性は、間違いなく氷の大魔法使い、マーズ・シィだ。
なにやってんだよあいつ……って俺もライブに来てるんだから人のこと言えねぇか。
でも、ホンアちゃんは女(男)だぞ。
なんで女が女を応援するんだ……って、そういう考えは時代遅れか。
女が女を応援したっていい。
誰の目も気にせず、好きなものを好きだと言えばいい。
それをバカにするやつなんか、大したことないさ。
それに、アイドルをやってるホンアちゃんを応援したくなる気持ちはよくわかる。
ステージに立つホンアちゃんはキラキラ輝いていて、老若男女を虜にするような素敵な魅力を――
「さぁ! 早く出てきてちょうだい! あなたがライブしているのを見ているだけで、なぜだかすごくバカにされているような気分になるの! 笑顔で踊っているのに蔑まれていると感じるの! さいっこうの快感なのっ!」
全然よくわからなかったわ!!
なんだよその理由!!
ってかマーズがドMすぎて、ホンアちゃんの真の目的、『ファンをバカにして背徳感を得たい』に気づきかけてるんですけど!
ある意味すごいよ!
あんたは正真正銘、ドMの鏡だよ!
それから、さらに十分ほど待たされたあと、ようやく舞台上に人が現れる。
「お、ようやくか……って、ホンアちゃんじゃねぇじゃねぇか」
コジキーが立ったまま貧乏ゆすりをしはじめる。
舞台に上がったのは、ぷりちーな衣装を着たぷりちーアイドルホンアちゃんではなく、一人のスーツ姿の男性だった。
「皆様、本日はぷりちーアイドルホンアちゃんのライブのためにお集まりいただき、誠にありがとうございます。私は、この広場の所有者で、舞台の出演スケジュールを管理している者です。本日、出演予定のホンアちゃんですが、急な体調不良のため本日は欠席となります。それに伴って、本日のライブは中止となります。急な決定となってしまいまして、大変申しわけございません」
事情を説明した男性が頭を下げると、観客たちから落胆の声が上がる。
しかし、ヤジを飛ばしたり男性に詰め寄ったりする人はいない。
まあ、しょうがないよね。
体調不良なんだから。
「くそがっ! そんなことどうでもいいからホンアちゃんを出せよ! 体調不良がどうした! ファンが第一だろうがよ!!」
……俺は、隣で唯一最低なヤジを飛ばしているコジキーさんを置いて、その場から立ち去った。
「んんあっ! 今日ホンアちゃんは姿を見せていないのに、姿を見せていないからこそ、なぜだかバカにされたように感じるわ。もうああっんんっ、最高よぉ!」
去り際に聞こえたマーズの言葉は、考えても考えても理解できなかった。
しかし、すぐにその理由がわかってしまうことを、このときの俺はまだ知らないのだった。
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