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第4章 1 いざ猫族の里へ
そいつはそこはかとなく
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猫族の里へは約一日半かかった。
道中にある街で一泊して――宿泊費はマーズが出してくれた――さらに三時間ほど。
宿泊地を朝に出発したので、門の前についたのはお昼すぎだった。
猫族の里は木の柵で囲われている、小さな村だ。
「ふぅ……ようやくついたな」
プレミアム馬車から下りて、背伸びをしてから門に近づこうとすると。
「……あの、待ってください」
コハクちゃんに呼び止められた。
「私、そこから入ると、その……みんなと会わないといけないので、村の裏側からでいいですか?」
「……え? みんなに会いたくないの?」
「実は名前の件もあって、あまりみんなとは良好な関係とは言いづらいというか、そんな感じなんです」
そう言われたら断れない。
ってか、この村の人たちはそんなにコハクちゃんを目の敵にしているのか?
とりあえず、俺たちは「神が猫族の里を観光してあげよう」とかほざいている彦宇木さんと別れ、猫族のコハクちゃんの後につづいて、森の中に入っていく。
里を囲っている木の柵に沿うように歩いていると、前を歩くコハクちゃんに聞こえないようなひそひそ声で、マーズが変なことを言い出した。
「実は……猫族の里ってここ最近、いい噂を聞かないのよ」
「……え? どういうこと?」
「猫族の里って、住人の容姿を生かした歓楽街として以前は賑わっていたの。誠道くんみたいな趣味の人はたくさんいるから」
「以前は……って」
なんか不気味な物言いだな。
「ってか俺にそんな趣味はないけど……とりあえずつづけて」
「でも、突然里の近くで虎? ライオン? みたいな姿をしたモンスターが現れるようになったの。それで観光客は激減。腕利きの冒険者たちも何人もやられてしまってまだ討伐できていないの。しかも戦いに挑んだ冒険者たちは、必ず身ぐるみを剥がされて金目のものを根こそぎ奪われてしまうの。ああ! なんて羨ましいぃ!」
「マジかよそれ。めちゃくちゃ危険じゃねぇか」
「まあでも、ここにいるのは冒険者じゃなくて、引きこもりとリッチーとメイドと猫娘だから、私たちが襲われる心配はないわね」
「おい! どう考えてもこれフラグってやつじゃ…………」
俺がその可能性を危惧したまさにそのとき。
「……きゃああああっ!」
コハクちゃんの悲鳴が聞こえる。
彼女は尻餅をついて、足をガクガクと震わせていた。
「おいおいおい、なんだあれ」
俺たちの目の前には、ライオンのような顔、胴体に蝙蝠のような翼、蠍のような尻尾を持つモンスターが立ちはだかっていた。
明らかにやばいモンスターだ。
マーズが言っていたモンスターはこいつで間違いない。
だってライオンの顔してるもん。
不気味な風がざざざざという音とともに、俺たちの周りを駆け抜けていった。
「大丈夫ですか、コハクさん!」
ミライがコハクちゃんの元に駆け寄って手を取り、俺たちの後ろに引っ張っていく。
「まさか……本当に現れるなんて」
マーズの眉間に皺が寄る。
「ここにいるのは冒険者じゃなくて、引きこもりとリッチーとメイドと猫娘なのに」
「いや、あんたがフラグを作ったからだろ!」
マーズさん、しっかりしてくれよぉ!
「それに……」
マーズは腕を組んで考え込む。
「なんでこんなところに、そこはかとなくえっちな名前を持つ魔物、マンティコアがいるのかしら?」
「…………あの、マーズさん。この緊迫した状況で申しわけないんだけど、もう一度繰り返してもらってもいいですか?」
「なんでこんなところに、そこはかとなくえっちな名前を持つ魔物、マンティコアがいるのかしら?」
「そこはかとなくえっちってなんだよ! 変な枕詞つけんな!」
マンティコア、マンティコア…………ああもう!
そういう意味にしか聞こえなくなっちゃったよ!
道中にある街で一泊して――宿泊費はマーズが出してくれた――さらに三時間ほど。
宿泊地を朝に出発したので、門の前についたのはお昼すぎだった。
猫族の里は木の柵で囲われている、小さな村だ。
「ふぅ……ようやくついたな」
プレミアム馬車から下りて、背伸びをしてから門に近づこうとすると。
「……あの、待ってください」
コハクちゃんに呼び止められた。
「私、そこから入ると、その……みんなと会わないといけないので、村の裏側からでいいですか?」
「……え? みんなに会いたくないの?」
「実は名前の件もあって、あまりみんなとは良好な関係とは言いづらいというか、そんな感じなんです」
そう言われたら断れない。
ってか、この村の人たちはそんなにコハクちゃんを目の敵にしているのか?
とりあえず、俺たちは「神が猫族の里を観光してあげよう」とかほざいている彦宇木さんと別れ、猫族のコハクちゃんの後につづいて、森の中に入っていく。
里を囲っている木の柵に沿うように歩いていると、前を歩くコハクちゃんに聞こえないようなひそひそ声で、マーズが変なことを言い出した。
「実は……猫族の里ってここ最近、いい噂を聞かないのよ」
「……え? どういうこと?」
「猫族の里って、住人の容姿を生かした歓楽街として以前は賑わっていたの。誠道くんみたいな趣味の人はたくさんいるから」
「以前は……って」
なんか不気味な物言いだな。
「ってか俺にそんな趣味はないけど……とりあえずつづけて」
「でも、突然里の近くで虎? ライオン? みたいな姿をしたモンスターが現れるようになったの。それで観光客は激減。腕利きの冒険者たちも何人もやられてしまってまだ討伐できていないの。しかも戦いに挑んだ冒険者たちは、必ず身ぐるみを剥がされて金目のものを根こそぎ奪われてしまうの。ああ! なんて羨ましいぃ!」
「マジかよそれ。めちゃくちゃ危険じゃねぇか」
「まあでも、ここにいるのは冒険者じゃなくて、引きこもりとリッチーとメイドと猫娘だから、私たちが襲われる心配はないわね」
「おい! どう考えてもこれフラグってやつじゃ…………」
俺がその可能性を危惧したまさにそのとき。
「……きゃああああっ!」
コハクちゃんの悲鳴が聞こえる。
彼女は尻餅をついて、足をガクガクと震わせていた。
「おいおいおい、なんだあれ」
俺たちの目の前には、ライオンのような顔、胴体に蝙蝠のような翼、蠍のような尻尾を持つモンスターが立ちはだかっていた。
明らかにやばいモンスターだ。
マーズが言っていたモンスターはこいつで間違いない。
だってライオンの顔してるもん。
不気味な風がざざざざという音とともに、俺たちの周りを駆け抜けていった。
「大丈夫ですか、コハクさん!」
ミライがコハクちゃんの元に駆け寄って手を取り、俺たちの後ろに引っ張っていく。
「まさか……本当に現れるなんて」
マーズの眉間に皺が寄る。
「ここにいるのは冒険者じゃなくて、引きこもりとリッチーとメイドと猫娘なのに」
「いや、あんたがフラグを作ったからだろ!」
マーズさん、しっかりしてくれよぉ!
「それに……」
マーズは腕を組んで考え込む。
「なんでこんなところに、そこはかとなくえっちな名前を持つ魔物、マンティコアがいるのかしら?」
「…………あの、マーズさん。この緊迫した状況で申しわけないんだけど、もう一度繰り返してもらってもいいですか?」
「なんでこんなところに、そこはかとなくえっちな名前を持つ魔物、マンティコアがいるのかしら?」
「そこはかとなくえっちってなんだよ! 変な枕詞つけんな!」
マンティコア、マンティコア…………ああもう!
そういう意味にしか聞こえなくなっちゃったよ!
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