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第4章 1 いざ猫族の里へ

どうして次章ではネタキャラに

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「……あれ、俺は、いまなにを」

 突然の出来事になにが起ったかわからず、あおむけに倒れたまま呆然とする俺。

「マドモアゼルって……くふふっ。誠道さんっ! 笑わせないでくださいよっ!」

 ミライが腹を抱えて笑っている。

 ベッドの上では猫族の女の子が、ぶるぶると体を震わせている。

「あ、そういえば伝え忘れてたわね」

 マーズが胸の前でポンと手を合わせ。

「この子はね、男性に対して嫌悪感を抱いているらしいの」

「マーズさん、それ言うの遅いよ」

 殴られた頬をさすりながら、マーズを睨む。

 先に言ってくれていたら俺は近づかなかったよ。

「え? どうして私が非難されているのかしら? 誠道くんはドMだから殴られたいという欲求があるはずだと思って、あえて言わない方がいいと思ったのに」

「なんでだよ! だから俺はドMじゃねぇ!」

 ふざけたことを抜かしたマーズは、なぜか急に目を輝かせた。

「はっ! 待って! 男になれば合法的に猫パンチで殴られることができる? 聖さん。いますぐ誠道くんの睾丸をむしり取って私につけてください!」

「むしり取られるつもりもないし、そもそもつけられないから!」

「え、合法的にむしり取っていいんですか?」

「もちろんよ。この氷の大魔法使いの私が許すわ」

「よくねぇから! とりあえず、ちょっと二人とも黙ろうか」

 特殊な性癖を持つこの二人を出会わせてはいけなかったのかもしれない。

 俺は猫族の女の子の方を向いて、優しく微笑みかける。

 害のない男であることだけはアピールしておこうと思ったのだ。

「大丈夫。君がどんなつらい経験をしたのかはわからないけ」

「そういうことね!」

 なぜかマーズが俺の言葉を引き継いだ。

 さっき黙っていようかって言ったばかりだよね、俺。

「やっぱり誠道くんにとって可愛い女の子に殴られるのはご褒美なのね。だから心配ご無用だと、ドMだからもっと猫パンチを頂戴と、この子にそう伝えたいのね」

「勝手に俺の感情を代弁するな! いや代弁できてすらねぇよ!」

 ってか俺を見ている猫族の女の子の体の震えがさらに大きくなったんだけど。

 恐怖に侮蔑の色が加わったんだけど。

「誠道さん、殴られたいならそう言ってください。私はいつでも殴る準備はできています」

「ミライはシュッシュッってスパークリングするのやめて。殴られたいなんて思ってないから」

「私は常日頃からミライさんに殴られたいと思ってるわ! なぜならドMなのだからっ!」

「うん、だからマーズは永久に黙ろうか」

「残念ながら私は永久に黙る、つまり死ぬことはできないの。なぜならドMで不死のリッチーだからっ! でも辛辣な言葉攻めは大歓迎よっ!」

「あーはいわかったもういいよ」

 興奮気味に身をよじるマーズをあしらってから、怯えたように俺を見る猫族の女の子に改めて話しかける。

「どんなつらい経験をしたのかはわからないけど、俺は無害だから。安心して。……って言葉で言っても伝わらないか。ははは。男性恐怖症だもんな」

 男性恐怖症の人に対してどう接していいのかわからないけど、とにかく優しい笑顔と優しい言葉を心がける。

 すると猫族の女の子が怖々と口を開いた。

「……ご、ごめんなさい。私は男性恐怖症ではありません。それはマーズさんという方の勝手な妄想です」

「え、じゃあなんで俺は殴られたの?」

「ネコさん? という方に憑依されているとき、あなたが私の胸をガン見していたからです。その視線が気持ち悪くて、恐ろしくて。ああ、私はなんてことを。いくら憑依されていたからといって、こんなエロ男に体やおっぱいを押しつけるなんて。少しでも女性的でいるため、女の部分を強調できるよう露出度高めの格好をしてますけど、あの視線はさすがに気持ち悪いです」

「それに関してはごめんなさい」

 事実だから素直に謝るしかないね。

 過去の俺なにやってんだよ!

 そこに山があったら登ってみたくなるように、谷間があったら見てしまうのは男としての本能なので抗えないんだよぉ!

「大丈夫です。誠道さんは本当に優しいお方ですので、ご安心ください。ちょっと思春期をエロ方向に拗らせているだけですから」

 落ち込む俺の横に立ったミライが庇ってくれる。

 いや全然庇ってねぇな!

 思春期のエロ方向って東西南北どの方角だよ!

 でも、まあ、ミライもミライなりになんとかこの子の警戒心を解こうとしてくれているのだろう。

 猫族の女の子も、心なしか俺に心を開きかけているような気が。

「ただ、嘘はいけませんよ、誠道さん」

 あれー、なんか流れがおかしいぞー。

「誠道さんは、女の裸を透視しようとしたり、裸の女を見るために混浴に入ろうとしたり、いきなりおっぱいを揉んだりするような男なので、一概に無害とは言えません。なので世の女性は、確実に誠道さんに近づかない方がいいです。変態引きこもりの誠道さんのそばにいられるのは、この優秀で寛容な美少女メイドの私くらいですからね。そこのところはきっちりと理解してもらわないと」

 勝ち誇ったような笑みを浮かべるミライ。

 いや、せっかく心を開きかけた猫族の女の子が生理的に無理ですって顔をしてるんですけど。

「ミライは余計なことを言わないでくれるかなぁ」

「でも、全部真実ですよね」

「世の中にはグレーにしておいた方がいいことがあるんだよ?」

「ああっ、私もそんなふうにミライさんからなじられたいっ!」

「だからマーズはいいかげん黙って!」
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