上 下
166 / 360
第4章 1 いざ猫族の里へ

まどもあぜる

しおりを挟む
 心出たちは、俺たちに赦してもらえたことに安堵したようで、リビングの床の上でぐっすりと寝てしまった。

 マーズとの壮絶な戦いの疲労も影響しているのかもしれない。

 聖ちゃんもふわわぁとかわいらしくあくびをしながら目を擦っており、心出たちと同じくいまにも寝てしまいそうだったが。

「いま寝ると、誠道さんになにをされるかわかりませんから寝ませんよ」

「なにもしないって」

 ミライもいるし、それに聖ちゃんは妹のような存在だ。

「でも、さっきはどさくさに紛れて意識を失っているミライさんのおっぱいを揉んでましたよね?」

「それは偶然だ! 不可抗力だ!」

 ってか聖ちゃんには揉まれるような大き――

「その視線はなんですか? 私の成長期はまだなんです! いつか必ずミライさんみたいなグラマラス……って、その大人に憧れる子供を見るような穏やかな目はなんですかっ!」

「いやぁ、だってまあ……いい子にしていればきっと成長期はやってくるよ」

「成長期をサンタクロースみたいに言わないでください!」

「魔物をぐちゃぐちゃにする癖をやめないといい子にはなれないと思うけどね」

「ぐちゃぐちゃ道をやめるくらいなら、一生おっぱいなんていりません!」

 いや、さすがにそこはおっぱいを取ってよ。

 いや、取られるようなおっぱいなんてまな板の聖ちゃんにはな……

「なんですかその憐れむような目は! そんなに誠道さんは睾丸を取ってほしいんですね」

「取られてたまるかよ!」

「みなさん! ようやく彼女が起きたの!」

 俺が股を両手で覆ったとき、マーズが長い髪を靡かせながらリビングにやってきた。

 どうやら猫族の女の子が起きたらしい。

 マーズは部屋を見渡してから、最終的に俺の股間に目を向け、にんまりする。

「なるほどね。誠道くんには、みんなに見られながら自家発電をする趣味があるのね」

「なわけないだろ!」

 俺は股間を押さえていた手を離し。

「それより早くいくぞ。ようやく起きたんだろ?」

 俺たちは、寝ている心出たちを残して、猫族の女の子が寝ているミライの部屋へ向かう。

 ベッドの上には、猫耳をぴくぴくと小刻みに動かして、怯えたように俺たちを見る猫族の女の子がいた。

「一応事情は説明しておきましたし、私がつけてしまった傷も、なんとか治癒魔法で治せました」

 マーズがネコさんに近づきながら説明してくれる。

「よかったぁ。もう大丈夫なんだね」

 霊に取りつかれても死ぬことはないと聖ちゃんは言っていたが、正直ネコさんはかなり無理をしていた。

 マーズの攻撃もその体に受けているし、とても心配だった。

 俺もマーズにつづいて、猫族の女の子に歩み寄っていく。

「……あ、あなたは」

 猫族の女の子は俺をじっと見たあと、恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めた。

 ……え?

 もしかして俺に惚れちゃったの?

 俺の格好よさに気がついちゃった?

 やったぁ!

 きっと俺は猫族にモテる体質なんだぁあああ!

「ふっ、もう体は大丈夫なのかい? マドモアゼル?」

 とりあえず、ベッドの横でしゃがんで、イケメン王子がするみたいに髪を手で靡かせながら問いかけると。

「私に近寄らないでくださいっ!」

 頬に思いっきり猫パンチをくらって吹っ飛ばされましたとさ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

2代目魔王と愉快な仲間たち

助兵衛
ファンタジー
魔物やら魔法やらが当たり前にある世界に、いつの間にか転がり込んでしまった主人公進藤和也。 成り行き、運命、八割悪ノリであれよあれよと担ぎ上げられ、和也は2代目魔王となってしまう…… しかし彼には、ちょっとした秘密があった。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

田舎で師匠にボコされ続けた結果、気づいたら世界最強になっていました

七星点灯
ファンタジー
俺は屋上から飛び降りた。いつからか始まった、凄惨たるイジメの被害者だったから。 天国でゆっくり休もう。そう思って飛び降りたのだが── 俺は赤子に転生した。そしてとあるお爺さんに拾われるのだった。 ──数年後 自由に動けるようになった俺に対して、お爺さんは『指導』を行うようになる。 それは過酷で、辛くて、もしかしたらイジメられていた頃の方が楽だったかもと思ってしまうくらい。 だけど、俺は強くなりたかった。 イジメられて、それに負けて自殺した自分を変えたかった。 だから死にたくなっても踏ん張った。 俺は次第に、拾ってくれたおじいさんのことを『師匠』と呼ぶようになり、厳しい指導にも喰らいつけるようになってゆく。 ドラゴンとの戦いや、クロコダイルとの戦いは日常茶飯事だった。 ──更に数年後 師匠は死んだ。寿命だった。 結局俺は、師匠が生きているうちに、師匠に勝つことができなかった。 師匠は最後に、こんな言葉を遺した。 「──外の世界には、ワシより強い奴がうじゃうじゃいる。どれ、ワシが居なくなっても、お前はまだまだ強くなれるぞ」 俺はまだ、強くなれる! 外の世界には、師匠よりも強い人がうじゃうじゃいる! ──俺はその言葉を聞いて、外の世界へ出る決意を固めた。 だけど、この時の俺は知らなかった。 まさか師匠が、『かつて最強と呼ばれた冒険者』だったなんて。

処理中です...