上 下
154 / 360
第3章 4 決意と謝罪の性感帯

心出の本音

しおりを挟む
 代表して、心出が口を開く。

「俺たちを頼ってくれてありがとう。誠道くんのためなら俺たちはなんだってするから」

「いや、お願いするのは俺の方だ。頼む、ミライを一緒に助けてほしい」

 俺は心出たちに深々と頭を下げた。

「えっ? ミライさんを助ける? それより顔を上げてほしい、誠道くん」

 心出に言われて頭を上げると、困ったような顔をしていた心出と目が合った。

「助けになりたいとお願いしたのは俺たちなんだから、誠道くんが頭を下げる必要はないんだ」

 そう言われても、これは俺のけじめだ。

 いまここで、心出たちに頭を下げることが俺にとって必要なことだから、悔しいとか、惨めだとかは一切感じていなかった。

 俺はこれまでのことを心出たちに説明する。

「実はミライが連れ去られたんだ。しかも、マーズ・シィっていう元氷の大魔法使い、現リッチーのものすごく強いやつに」

「そうか……ミライさんが連れ去られて」

 心出の表情が引き締まる。

「それは、命を懸けて救出しないといけないな。特に俺たちは」

「ですね、皇帝さん」

 光聖志が、心出の右肩に手を置く。

「俺だって、同じ気持ちです」

 真枝務が、光聖志の手の上に自分の手を置く。

「マーズ・シィって、いまの皇帝さんの懐事情の方がマーズ・シィですよ。ってことはマーズ・シィよりも貧しい皇帝さん――貧始皇帝まずしこうていさんの方が、そういう考え方をすれば強いってことになります! 絶対勝てます!」

「一文無しの心出のことを秦の始皇帝みたいに言うなよ!」

 五升も同じく手を乗せたが、こいつだけはやっぱり心出のことバカにしてない?

 そりゃあオールインして負けたから、心出は一文無しの貧しい男だけどさ。

 貧始皇帝だけどさ。

「光聖志、真枝務、五升。お前ら、本当にありがとう」

 心出たちは涙しながら互いに抱き合っている。

「感動しているところ悪いんだが、マーズ・シィは本当に強いんだ。俺はマーズ・シィに一度コテンパンにやられている」

 敗北した事実を伝えるのは恥ずかしかったが、正直に言うことにした。

 ミライを助けるため。

 心出たちに驕った状態でマーズ・シィとの戦いに臨んでほしくなかった。

「そうか。でも、それがどうした?」

 心出は怯むどころか、むしろより気合を露わにした。

「相手がものすごく強い。それは俺たちの逃げる理由にはならない。誠道くんが助けてほしいと頼ってくれたのだから、俺たちはどんなことがあっても、その思いに報いるだけだ」

「心出……」

「こやつら大丈夫そうじゃにゃ」

 ネコさんも心出たちを受け入れてくれたみたいだ。

「はい。頼りになりそうです」

「あ、ちなみになんだが、誠道くん」

 突然心出が、なぜか俺の顔に耳を近づけてひそひそ声で。

「あとでこの猫耳の女の子について詳しく教えてくれ。真面目に好きになってしまったんだ」

「お前ケモナーだったのかよ!!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

ちょっっっっっと早かった!〜婚約破棄されたらリアクションは慎重に!〜

オリハルコン陸
ファンタジー
王子から婚約破棄を告げられた令嬢。 ちょっっっっっと反応をミスってしまい……

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

田舎で師匠にボコされ続けた結果、気づいたら世界最強になっていました

七星点灯
ファンタジー
俺は屋上から飛び降りた。いつからか始まった、凄惨たるイジメの被害者だったから。 天国でゆっくり休もう。そう思って飛び降りたのだが── 俺は赤子に転生した。そしてとあるお爺さんに拾われるのだった。 ──数年後 自由に動けるようになった俺に対して、お爺さんは『指導』を行うようになる。 それは過酷で、辛くて、もしかしたらイジメられていた頃の方が楽だったかもと思ってしまうくらい。 だけど、俺は強くなりたかった。 イジメられて、それに負けて自殺した自分を変えたかった。 だから死にたくなっても踏ん張った。 俺は次第に、拾ってくれたおじいさんのことを『師匠』と呼ぶようになり、厳しい指導にも喰らいつけるようになってゆく。 ドラゴンとの戦いや、クロコダイルとの戦いは日常茶飯事だった。 ──更に数年後 師匠は死んだ。寿命だった。 結局俺は、師匠が生きているうちに、師匠に勝つことができなかった。 師匠は最後に、こんな言葉を遺した。 「──外の世界には、ワシより強い奴がうじゃうじゃいる。どれ、ワシが居なくなっても、お前はまだまだ強くなれるぞ」 俺はまだ、強くなれる! 外の世界には、師匠よりも強い人がうじゃうじゃいる! ──俺はその言葉を聞いて、外の世界へ出る決意を固めた。 だけど、この時の俺は知らなかった。 まさか師匠が、『かつて最強と呼ばれた冒険者』だったなんて。

処理中です...