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第2章 2 男として、俺は先にいくよ

いつまでも仲よく

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 それからまた少し四人で歩いて、イツモフさんたちとは別れることになった。

「今日はありがとうございました」

「誠道お兄ちゃん、ミライお姉ちゃん、またね」

 軽くお辞儀をしたイツモフさんと無邪気に手を振るジツハフくんは、仲よく手を繋いだまま去っていった。

 彼女らの姿が見えなくなってから、俺は口を開く。

「なんか俺今さ、廃教会から帰ってきて、イツモフさんと話したときと同じ気分だわ」


 ――なるほど。私が無様に気絶していたときに、そういうことがあったんですね。


 あのとき、イツモフさんは陰のある笑みを浮かべながらそう呟いた。


 ――誠道くんは、ミライさんを助けにいけた。私とは違って……ははは、強いんですね。


「あのときのイツモフさんには、目の前でミライを連れ去られてしまったことに対する後悔以上の、なにか強い思いを感じたんだ」

「私もそれは思いました。イツモフさんが次に言った言葉も、どことなく自分を責める色を帯びていましたし」


 ――世の中にとって正しいことなんて、生きていればだいたいわかるのに、それが私にとって正しくないってことも、こんなになるまで生きてきたんだから、正しいなんて選びたくないのに。間違ってる人の方が優しいし、寄り添い合ってくれるし……。


「だよな。だからこそ……ちょっと今不意に思い出して、気になったっていうか」

「さっきのイツモフさんが誤魔化した言葉もありますしね」

「ミライも聞いてたのかよ」

 一心不乱に金貸し屋を見ていただけじゃなかったんだな。

「私も、イツモフさんには恩がありますから。助けてあげられるなら助けてあげたいです」

「だな」

 深くうなずくミライに、俺もすぐさま同調する……あれ?

 よく考えるとイツモフさんに感謝するようなことなんてあったか?

「……ちなみに恩ってのは、あの似非ポジティブシンキングを教えてもらったことか?」

「そうですけど、なにか?」

「そんなもん恩に感じるなよ!」

「どうしてですか?」

「どうしてもだよ!」

 唇をとがらせて不満を表明するミライだったが、それ以上言い返すことはなかった。

 すぐにまぶしいものを見るかのような表情で空を見上げ。

「なにはともあれイツモフさんとジツハフさんが、いつまでも仲よしでいられるといいですね」

「そうだな」

 ミライの言葉に賛成とうなずく。


 ――ただ……もし私が守れなかったときは、ジツハフのこと、お願いしていいでしょうか。


 俺の耳には、その言葉に乗せられていた切なげな響きがまだ残っている。
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