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第2章 1 なにか忘れてるような
ぐちゃらーな二人
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「あれ、そういえば聖ちゃん。どうして聖ちゃんはうちにきたんだっけ?」
俺は呪われた鞭のせいでそれまくった話を、当初の話題に戻す。
「はっ。そうでした」
聖ちゃんはまた恥ずかしそうに頬を赤らめる。
「私、誠道さんに、つき合ってほしいことがあるんです」
あ、そういえばそうだった。
俺、聖ちゃんからデートのお誘いを受けてたんだ。
ついに異世界で俺のモテ期到来だぁ!
「弱らせたレッサーデーモンを近くまで連れてきてるんです。それを一緒にぐちゃぐちゃにしようと思って」
「んなもんにつき合うわけねぇだろうが!」
引きこもりにモテ期なんてあるわけないですよね、すみません。
「え、どうしてですか?」
聖ちゃんの顔が悲しみに歪む。
いや、なんでグチャグチャごっこにつき合うことが当然みたいな顔してんの?
サイコパスなの?
「私と約束しましたよねぇ? それを破るなんてひどいです」
「や、約束……って?」
「本当にひどいです。レッサーデーモンをぐちゃぐちゃにする方法をレクチャーしますって、だからレッサーデーモンを連れ帰ってきますって、言いましたよね?」
「あっ! ずっとなにか忘れている気がしていたのってこれか! やったぁ伏線回収だぁ!」
「ど、う、な、ん、で、す、か?」
「ごめんなさい。すっかり忘れてました」
大度出たちとの一件があったため、本当に頭からすっぽりと抜け落ちていた。
「ってかなんで俺が謝る展開になってんの? 俺はその道に足を突っ込むつもりはないぞ。そもそもよく考えたら約束もしていないぞ」
「だったら私の努力はなんだったんですか。レッサーデーモンも無駄ぐちゃ死にですよ! 私に惨殺されたレッサーデーモンに今すぐ謝ってください! 一匹捉えるまでに何匹のレッサーデーモンが無駄ぐちゃ死にしたと思ってるんですか」
「いや俺それ関係なくない? ってか聖ちゃんが自分の欲望を抑えられずに、勢い余ってレッサーデーモンを殺し尽くしただけだよね?」
俺は正論を述べたつもりなのだが、聖ちゃんはきょとんと首を傾げた。
「実は私って、【愉悦の睾丸女帝】って呼ばれてるんですよね。誰の、とは言いませんけどこの場には睾丸が二つありますよね」
「レッサーデーモンさんすみませんでした!」
なぜか謝ることになってる俺。
ってか聖ちゃん、一応レッサーデーモンを思いやる気持ち持ってたんですねぇ。
そのレッサーデーモンをぐちゃぐちゃにしたのは聖ちゃんですけどねぇ。
「わかりました。ここは、私の広い心に免じて許しましょう」
聖ちゃん、すごい善人ぶってるけど、許すかどうかの判断をするのはグチャグチャにされたレッサーデーモンだと思うんですけどねぇ。
「ではこれから、私が弱らせてきたレッサーデーモンを使ってぐちゃり方をレクチャーします。いいですね。ほんと誠道さんは忘れっぽいんですから」
「ちょっと、二人で勝手に話を進めないでください」
聖ちゃんの暴走をさすがに見かねたのか、ミライが止めに入ってくれる。
遅すぎるくらいだけど、ナイスミライ!
さすが! 俺を支援してくれるメイドだ!
「そうやって、どさくさに紛れて誠道さんと二人で出かけるなんて認められません。二人きりで手取り足取りぐちゃり方のレクチャーなんて、デート……いやもはや体のおつき合いです!」
うん!
どう考えたらそのトンデモ理論がやってくるのかわかんないけど、もうなんでもいいから言ってやれ!
まあ二人きりじゃなくてレッサーデーモンさんもいるけどね。
瀕死状態だけど。
「そこまでして聖さんが誠道さんを連れていきたいというのなら、私にも考えがあります!」
そうだ!
もうここまできたら多少の実力行使でもいいぞ!
「私も一緒に連れていってください!」
「どうしてこうなった!」
頭を抱える。
本当に、どうしてそうなるの?
「ミライお前、女王様癖の次はぐちゃり癖かよ! もしかして異世界でブームになりかけてんの?」
聖ちゃんというJCがやってるから?
もし異世界に動画投稿サイトがあったら、魔物グチャグチャ動画があふれてたりすんのかなぁ。
「だっておかしいじゃないですか。グチャるときに二人きりである必要はありません。当然私も参加します」
珍しく子供のように駄々をこねるミライ。
え、そんなにレッサーデーモンぐちゃぐちゃにしたいの?
まあ、その……そんなに好きなら、やりたいなら、止めるのもあれだし、ね?
「そんなにぐちゃぐちゃにしたいなら、聖ちゃんとミライ、二人でいってきなよ」
ミライがそんなにやりたいのなら、ミライだけが教えてもらえばいい。
そうすれば、俺はやりたくないことをやらずに引きこもることができる。
聖ちゃんもグチャラー(呼び方これでいいの?)仲間ができる。
まさに三人とも、ウィンウィンウィンじゃん!
しかし。
「「……はぁ」」
なぜかミライと聖ちゃんから深いため息がこぼれました。
「なんで二人とも落胆してんの? 聖ちゃんはグチャラー仲間がほしい、ミライはぐちゃりたい。俺は引きこもりたい。全員の希望が叶ってる素晴らしい提案じゃん」
「「はぁ……本当にバカなんでしょうね」」
はい、今度は二人からため息プラス罵りまでいただきました。
「誠道さん」
ミライが俺の肩に手を置く。
「お気持ちは嬉しいのですが、それでは意味がないのです。それであれば、私はぐちゃりにいきたくありません」
「え? じゃあなんでさっきぐちゃりたいって言ったの?」
「それは……」
ミライがポッと顔を赤く染める。
「この乙女の機微がわからないのですか?」
「だから、機微とかじゃなくてどういうことか説明しろよ」
「もう、誠道さん……」
今度は聖ちゃんにわき腹をぽふっと殴られた。
「さすがに気づいてくださいよ。私でもわかりましたよ」
「え? 聖ちゃんが? ミライの意見が二転三転してる理由がわかったの?」
俺にはさっぱりなんですけど、どういうこと?
疑問符しか浮かんでいない俺を聖ちゃんが手で押しのける。
ミライの前に立った聖ちゃんは、
「あのですね、ミライさん。安心してください」
優しい声音でそうささやいた。
「私は、こんな引きこもりなんか、眼中にありませんから」
声と内容のギャップ激しすぎ!
いきなりなんてこと言い出すの、この子。
人間の心のぐちゃり方を試してるの?
「そうですか」
そしてミライは主がひどい言葉で貶されたにもかかわらず、安堵したような笑みを浮かべている。
「そうですよね。こんな引きこもりなんか選ぶ人いませんよね」
ぐはっ!
ミライまで俺の心グチャラーだった。
しかも言い終えた後、上品に笑いやがって。
もしかして事前に聖ちゃんから心ぐちゃり方のレクチャー受けてたんじゃないの?
「ですです。普通に考えたらこんな引きこもりにモテ期なんてやってきませんよ」
聖ちゃんも満面の笑みで同調しないでよー。
心にギロチン落ちましたー。
今ならマリー○ントワネットとなかよくなれそうですー。
「ありがとうございます聖さん。誠道さんは引きこもりなのでモテるわけがない。視点が狭くなっていました。考えればすぐにわかることでした」
「そうですよ。引きこもりなんて選ばれませんって」
なんか二人でがっちり握手したんですけどー。
もうきっと俺の心はぼこぼこで原型とどめてないですー。
「あのぉ、お二人さん。もうそろそろ俺を傷つけるのやめてくれませんかねぇ。心のライフがゼロですぅ……」
俺は、床にへばりつくように倒れながら二人に懇願する。
すると、ミライと聖ちゃんは俺を見下ろして、少ししてからまた顔を見合わせて。
「「やっぱりどうしようもない鈍感男ですね」」
くすくすと二人から笑われましたとさ。
うん!
もう無理!
今日で俺は溶けてなくなります!
俺は呪われた鞭のせいでそれまくった話を、当初の話題に戻す。
「はっ。そうでした」
聖ちゃんはまた恥ずかしそうに頬を赤らめる。
「私、誠道さんに、つき合ってほしいことがあるんです」
あ、そういえばそうだった。
俺、聖ちゃんからデートのお誘いを受けてたんだ。
ついに異世界で俺のモテ期到来だぁ!
「弱らせたレッサーデーモンを近くまで連れてきてるんです。それを一緒にぐちゃぐちゃにしようと思って」
「んなもんにつき合うわけねぇだろうが!」
引きこもりにモテ期なんてあるわけないですよね、すみません。
「え、どうしてですか?」
聖ちゃんの顔が悲しみに歪む。
いや、なんでグチャグチャごっこにつき合うことが当然みたいな顔してんの?
サイコパスなの?
「私と約束しましたよねぇ? それを破るなんてひどいです」
「や、約束……って?」
「本当にひどいです。レッサーデーモンをぐちゃぐちゃにする方法をレクチャーしますって、だからレッサーデーモンを連れ帰ってきますって、言いましたよね?」
「あっ! ずっとなにか忘れている気がしていたのってこれか! やったぁ伏線回収だぁ!」
「ど、う、な、ん、で、す、か?」
「ごめんなさい。すっかり忘れてました」
大度出たちとの一件があったため、本当に頭からすっぽりと抜け落ちていた。
「ってかなんで俺が謝る展開になってんの? 俺はその道に足を突っ込むつもりはないぞ。そもそもよく考えたら約束もしていないぞ」
「だったら私の努力はなんだったんですか。レッサーデーモンも無駄ぐちゃ死にですよ! 私に惨殺されたレッサーデーモンに今すぐ謝ってください! 一匹捉えるまでに何匹のレッサーデーモンが無駄ぐちゃ死にしたと思ってるんですか」
「いや俺それ関係なくない? ってか聖ちゃんが自分の欲望を抑えられずに、勢い余ってレッサーデーモンを殺し尽くしただけだよね?」
俺は正論を述べたつもりなのだが、聖ちゃんはきょとんと首を傾げた。
「実は私って、【愉悦の睾丸女帝】って呼ばれてるんですよね。誰の、とは言いませんけどこの場には睾丸が二つありますよね」
「レッサーデーモンさんすみませんでした!」
なぜか謝ることになってる俺。
ってか聖ちゃん、一応レッサーデーモンを思いやる気持ち持ってたんですねぇ。
そのレッサーデーモンをぐちゃぐちゃにしたのは聖ちゃんですけどねぇ。
「わかりました。ここは、私の広い心に免じて許しましょう」
聖ちゃん、すごい善人ぶってるけど、許すかどうかの判断をするのはグチャグチャにされたレッサーデーモンだと思うんですけどねぇ。
「ではこれから、私が弱らせてきたレッサーデーモンを使ってぐちゃり方をレクチャーします。いいですね。ほんと誠道さんは忘れっぽいんですから」
「ちょっと、二人で勝手に話を進めないでください」
聖ちゃんの暴走をさすがに見かねたのか、ミライが止めに入ってくれる。
遅すぎるくらいだけど、ナイスミライ!
さすが! 俺を支援してくれるメイドだ!
「そうやって、どさくさに紛れて誠道さんと二人で出かけるなんて認められません。二人きりで手取り足取りぐちゃり方のレクチャーなんて、デート……いやもはや体のおつき合いです!」
うん!
どう考えたらそのトンデモ理論がやってくるのかわかんないけど、もうなんでもいいから言ってやれ!
まあ二人きりじゃなくてレッサーデーモンさんもいるけどね。
瀕死状態だけど。
「そこまでして聖さんが誠道さんを連れていきたいというのなら、私にも考えがあります!」
そうだ!
もうここまできたら多少の実力行使でもいいぞ!
「私も一緒に連れていってください!」
「どうしてこうなった!」
頭を抱える。
本当に、どうしてそうなるの?
「ミライお前、女王様癖の次はぐちゃり癖かよ! もしかして異世界でブームになりかけてんの?」
聖ちゃんというJCがやってるから?
もし異世界に動画投稿サイトがあったら、魔物グチャグチャ動画があふれてたりすんのかなぁ。
「だっておかしいじゃないですか。グチャるときに二人きりである必要はありません。当然私も参加します」
珍しく子供のように駄々をこねるミライ。
え、そんなにレッサーデーモンぐちゃぐちゃにしたいの?
まあ、その……そんなに好きなら、やりたいなら、止めるのもあれだし、ね?
「そんなにぐちゃぐちゃにしたいなら、聖ちゃんとミライ、二人でいってきなよ」
ミライがそんなにやりたいのなら、ミライだけが教えてもらえばいい。
そうすれば、俺はやりたくないことをやらずに引きこもることができる。
聖ちゃんもグチャラー(呼び方これでいいの?)仲間ができる。
まさに三人とも、ウィンウィンウィンじゃん!
しかし。
「「……はぁ」」
なぜかミライと聖ちゃんから深いため息がこぼれました。
「なんで二人とも落胆してんの? 聖ちゃんはグチャラー仲間がほしい、ミライはぐちゃりたい。俺は引きこもりたい。全員の希望が叶ってる素晴らしい提案じゃん」
「「はぁ……本当にバカなんでしょうね」」
はい、今度は二人からため息プラス罵りまでいただきました。
「誠道さん」
ミライが俺の肩に手を置く。
「お気持ちは嬉しいのですが、それでは意味がないのです。それであれば、私はぐちゃりにいきたくありません」
「え? じゃあなんでさっきぐちゃりたいって言ったの?」
「それは……」
ミライがポッと顔を赤く染める。
「この乙女の機微がわからないのですか?」
「だから、機微とかじゃなくてどういうことか説明しろよ」
「もう、誠道さん……」
今度は聖ちゃんにわき腹をぽふっと殴られた。
「さすがに気づいてくださいよ。私でもわかりましたよ」
「え? 聖ちゃんが? ミライの意見が二転三転してる理由がわかったの?」
俺にはさっぱりなんですけど、どういうこと?
疑問符しか浮かんでいない俺を聖ちゃんが手で押しのける。
ミライの前に立った聖ちゃんは、
「あのですね、ミライさん。安心してください」
優しい声音でそうささやいた。
「私は、こんな引きこもりなんか、眼中にありませんから」
声と内容のギャップ激しすぎ!
いきなりなんてこと言い出すの、この子。
人間の心のぐちゃり方を試してるの?
「そうですか」
そしてミライは主がひどい言葉で貶されたにもかかわらず、安堵したような笑みを浮かべている。
「そうですよね。こんな引きこもりなんか選ぶ人いませんよね」
ぐはっ!
ミライまで俺の心グチャラーだった。
しかも言い終えた後、上品に笑いやがって。
もしかして事前に聖ちゃんから心ぐちゃり方のレクチャー受けてたんじゃないの?
「ですです。普通に考えたらこんな引きこもりにモテ期なんてやってきませんよ」
聖ちゃんも満面の笑みで同調しないでよー。
心にギロチン落ちましたー。
今ならマリー○ントワネットとなかよくなれそうですー。
「ありがとうございます聖さん。誠道さんは引きこもりなのでモテるわけがない。視点が狭くなっていました。考えればすぐにわかることでした」
「そうですよ。引きこもりなんて選ばれませんって」
なんか二人でがっちり握手したんですけどー。
もうきっと俺の心はぼこぼこで原型とどめてないですー。
「あのぉ、お二人さん。もうそろそろ俺を傷つけるのやめてくれませんかねぇ。心のライフがゼロですぅ……」
俺は、床にへばりつくように倒れながら二人に懇願する。
すると、ミライと聖ちゃんは俺を見下ろして、少ししてからまた顔を見合わせて。
「「やっぱりどうしようもない鈍感男ですね」」
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