50 / 360
第1章 6 レッサーデーモンとの戦いは欧米文化との戦い
ぐちゃぐちゃ
しおりを挟む
俺たちがレッサーデーモンを倒したという事実は、瞬く間にグランダラ中に知れ渡った。
なんでも、あの山は他の街との交易に重要な場所だったらしく、レッサーデーモンが現れてから、それが途絶えていたそうだ。
ま、俺たちにとっては借金を完済できたことがすべてなのだけど。
スインスイのクーリングオフもできたし、これでようやく借金生活が終了した。
「ああ、世界がカラフルに見えるよ」
誇らしい気持ちで今日も家に引きこもっていると、玄関の扉をノックする者が現れた。
やってきたのは聖ちゃん。
とりあえずリビングに通す。
ミライがお茶を入れて、聖ちゃんの前に置いた。
「あ、ありがとうございます」
聖ちゃんはきちんとお礼を言い、両手でコップを持ってふぅふぅと息を吹きかけてからお茶を啜る。
本当に可愛らしい。
魔物を前にしなければ本当にいい子なんだがなぁ。
俺は聖ちゃんの対面に、ミライは俺の横に座った。
「で、今日はどうしてここに?」
「あ、そうでした」
聖ちゃんの眼鏡の奥の瞳がキラキラと輝く。
「実は、お二人がレッサーデーモンを倒したとお聞きしまして」
「まあ、そうだけど」
「本当にすごいです。レッサーデーモンはものすごく強い魔物ですから」
「ま、まあ俺にかかればあんなもの、一撃で跡形もなく粉々だよ」
【愉悦の睾丸女帝】という異名を持っている、遥か高みにいってしまった聖ちゃんから褒められると、なんだか鼻が高い。
「一撃……で? 跡形もなく?」
聖ちゃんの表情が固まる。
尊敬の眼差しから一転、哀れみをその視線に込められた。
「どうしてそんなもったいないことができるんですか。引きこもりの家にわざわざうかがったのに、それじゃあレッサーデーモンをぐちゃぐちゃにしたときの感想を聞けないじゃないですか」
「俺に魔物をぐちゃぐちゃにする趣味はないぞ」
「そんなのおかしいです。人生の半分は損してます」
「人生の半分云々を言うやつのウザさは尋常じゃないからな。明らかに聖ちゃんの方がおかしいからな」
「だって、レッサーデーモンと言えばぐちゃぐちゃにしがいがある魔物ランキング第二位ですよ? それを一撃で粉々って。おかしいです。じっくり一か所ずつぐちゃぐちゃにして堪能しましょうよ。お寿司とステーキとフカヒレが好物だからって、全部を一緒にミキサーに入れてぐちゃぐちゃにして食べますか? しませんよね? それぞれ楽しみますよね? つまり好きなものをぐちゃぐちゃにするのはよくないんです!」
「あなたは魔物をぐちゃぐちゃにしてますけどね。例えが悪すぎて聖ちゃんがなにを主張したいのかちっとも頭に入ってこなかったよ」
「こうなったら仕方ありません。私、今からレッサーデーモンの巣窟と呼ばれる場所にいってきます。そこから弱らせたレッサーデーモンを連れ帰ってくるので、レッサーデーモンを気持ちよくぐちゃぐちゃにするにはどうしたらいいか、手取り足取りレクチャーしてあげます」
「結構ですけど」
「よかったです! では、レッサーデーモンの生息地までは最低でも二日かかるので少しだけ待っていてください。必ず一緒にぐちゃぐちゃにしましょう。いいですか。逃げないでくださいね」
「なんで俺が肯定したことになってんの? 聖ちゃんは日本語を覚えたての外国人ですか?」
「はぁ。誠道さんのおかげで面倒が増えました。せっかく遠い場所にしかいないレッサーデーモンが向こうから寄ってきてくれたのに。本当に意味がわかりません」
聖ちゃんは謎の愚痴をこぼしながら帰っていった。
「なぁ、ミライ。俺たち、レッサーデーモンの倒し方、間違っていたのかな?」
「聖さん。やりますね。まさかそんな方法で誠道さんをお出かけに誘い、共通の趣味を得ようとするなんて」
顎に手を当ててぶつぶつなにか呟いているミライ。
ちょっと、俺の話聞いてる?
「み、ミライ? 俺、今なにか間違っていたかなって聞いてるんだけど」
「誠道さんも誠道さんです。あんな簡単に聖さんを受け入れて。おかしいですよ。間違っています」
なんだかよくわからないが、ミライから怒鳴られてしまった。
しかも俺の方が間違っていたらしい。
レッサーデーモンはぐちゃぐちゃにして楽しむのが通だなんて、そんなの信じられるかよ。
「あー、もうほんとに誠道さんは。どうしてこうも鈍感なんでしょうか」
プイッとそっぽを向いてリビングを出ていくミライ。
ほんと、意味わからんな。
俺は自室に戻ってふて寝したが……それがまずかった。
俺が部屋から出ていった後、ミライはストレス発散という名目の元、後払いで大量のユニコーンの角を買ってきたのだ。
そのため俺たちは、また借金生活に逆戻りするのでしたとさ。
なんでも、あの山は他の街との交易に重要な場所だったらしく、レッサーデーモンが現れてから、それが途絶えていたそうだ。
ま、俺たちにとっては借金を完済できたことがすべてなのだけど。
スインスイのクーリングオフもできたし、これでようやく借金生活が終了した。
「ああ、世界がカラフルに見えるよ」
誇らしい気持ちで今日も家に引きこもっていると、玄関の扉をノックする者が現れた。
やってきたのは聖ちゃん。
とりあえずリビングに通す。
ミライがお茶を入れて、聖ちゃんの前に置いた。
「あ、ありがとうございます」
聖ちゃんはきちんとお礼を言い、両手でコップを持ってふぅふぅと息を吹きかけてからお茶を啜る。
本当に可愛らしい。
魔物を前にしなければ本当にいい子なんだがなぁ。
俺は聖ちゃんの対面に、ミライは俺の横に座った。
「で、今日はどうしてここに?」
「あ、そうでした」
聖ちゃんの眼鏡の奥の瞳がキラキラと輝く。
「実は、お二人がレッサーデーモンを倒したとお聞きしまして」
「まあ、そうだけど」
「本当にすごいです。レッサーデーモンはものすごく強い魔物ですから」
「ま、まあ俺にかかればあんなもの、一撃で跡形もなく粉々だよ」
【愉悦の睾丸女帝】という異名を持っている、遥か高みにいってしまった聖ちゃんから褒められると、なんだか鼻が高い。
「一撃……で? 跡形もなく?」
聖ちゃんの表情が固まる。
尊敬の眼差しから一転、哀れみをその視線に込められた。
「どうしてそんなもったいないことができるんですか。引きこもりの家にわざわざうかがったのに、それじゃあレッサーデーモンをぐちゃぐちゃにしたときの感想を聞けないじゃないですか」
「俺に魔物をぐちゃぐちゃにする趣味はないぞ」
「そんなのおかしいです。人生の半分は損してます」
「人生の半分云々を言うやつのウザさは尋常じゃないからな。明らかに聖ちゃんの方がおかしいからな」
「だって、レッサーデーモンと言えばぐちゃぐちゃにしがいがある魔物ランキング第二位ですよ? それを一撃で粉々って。おかしいです。じっくり一か所ずつぐちゃぐちゃにして堪能しましょうよ。お寿司とステーキとフカヒレが好物だからって、全部を一緒にミキサーに入れてぐちゃぐちゃにして食べますか? しませんよね? それぞれ楽しみますよね? つまり好きなものをぐちゃぐちゃにするのはよくないんです!」
「あなたは魔物をぐちゃぐちゃにしてますけどね。例えが悪すぎて聖ちゃんがなにを主張したいのかちっとも頭に入ってこなかったよ」
「こうなったら仕方ありません。私、今からレッサーデーモンの巣窟と呼ばれる場所にいってきます。そこから弱らせたレッサーデーモンを連れ帰ってくるので、レッサーデーモンを気持ちよくぐちゃぐちゃにするにはどうしたらいいか、手取り足取りレクチャーしてあげます」
「結構ですけど」
「よかったです! では、レッサーデーモンの生息地までは最低でも二日かかるので少しだけ待っていてください。必ず一緒にぐちゃぐちゃにしましょう。いいですか。逃げないでくださいね」
「なんで俺が肯定したことになってんの? 聖ちゃんは日本語を覚えたての外国人ですか?」
「はぁ。誠道さんのおかげで面倒が増えました。せっかく遠い場所にしかいないレッサーデーモンが向こうから寄ってきてくれたのに。本当に意味がわかりません」
聖ちゃんは謎の愚痴をこぼしながら帰っていった。
「なぁ、ミライ。俺たち、レッサーデーモンの倒し方、間違っていたのかな?」
「聖さん。やりますね。まさかそんな方法で誠道さんをお出かけに誘い、共通の趣味を得ようとするなんて」
顎に手を当ててぶつぶつなにか呟いているミライ。
ちょっと、俺の話聞いてる?
「み、ミライ? 俺、今なにか間違っていたかなって聞いてるんだけど」
「誠道さんも誠道さんです。あんな簡単に聖さんを受け入れて。おかしいですよ。間違っています」
なんだかよくわからないが、ミライから怒鳴られてしまった。
しかも俺の方が間違っていたらしい。
レッサーデーモンはぐちゃぐちゃにして楽しむのが通だなんて、そんなの信じられるかよ。
「あー、もうほんとに誠道さんは。どうしてこうも鈍感なんでしょうか」
プイッとそっぽを向いてリビングを出ていくミライ。
ほんと、意味わからんな。
俺は自室に戻ってふて寝したが……それがまずかった。
俺が部屋から出ていった後、ミライはストレス発散という名目の元、後払いで大量のユニコーンの角を買ってきたのだ。
そのため俺たちは、また借金生活に逆戻りするのでしたとさ。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件
シュミ
ファンタジー
高二である天音 旬はある日、女神によって異世界と現実世界を行き来できるようになった。
旬が異世界から現実世界に帰る直前に転びそうな少女を助けた結果、旬の自宅にその少女を持ち帰ってしまった。その少女はリーシャ・ミリセントと名乗り、王子に婚約破棄されたと話し───!?
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
特殊スキル持ちの低ランク冒険者の少年は、勇者パーティーから追い出される際に散々罵しった癖に能力が惜しくなって戻れって…頭は大丈夫か?
アノマロカリス
ファンタジー
少年テイトは特殊スキルの持ち主だった。
どんなスキルかというと…?
本人でも把握出来ない程に多いスキルなのだが、パーティーでは大して役には立たなかった。
パーティーで役立つスキルといえば、【獲得経験値数○倍】という物だった。
だが、このスキルには欠点が有り…テイトに経験値がほとんど入らない代わりに、メンバーには大量に作用するという物だった。
テイトの村で育った子供達で冒険者になり、パーティーを組んで活躍し、更にはリーダーが国王陛下に認められて勇者の称号を得た。
勇者パーティーは、活躍の場を広げて有名になる一方…レベルやランクがいつまでも低いテイトを疎ましく思っていた。
そしてリーダーは、テイトをパーティーから追い出した。
ところが…勇者パーティーはのちに後悔する事になる。
テイトのスキルの【獲得経験値数○倍】の本当の効果を…
8月5日0:30…
HOTランキング3位に浮上しました。
8月5日5:00…
HOTランキング2位になりました!
8月5日13:00…
HOTランキング1位になりました(๑╹ω╹๑ )
皆様の応援のおかげです(つД`)ノ
クラス転移したひきこもり、僕だけシステムがゲームと同じなんですが・・・ログアウトしたら地球に帰れるみたいです
こたろう文庫
ファンタジー
学校をズル休みしてオンラインゲームをプレイするクオンこと斉藤悠人は、登校していなかったのにも関わらずクラス転移させられた。
異世界に来たはずなのに、ステータス画面はさっきやっていたゲームそのもので…。
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜
水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑
★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位!
★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント)
「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」
『醜い豚』
『最低のゴミクズ』
『無能の恥晒し』
18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。
優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。
魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。
ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。
プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。
そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。
ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。
「主人公は俺なのに……」
「うん。キミが主人公だ」
「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」
「理不尽すぎません?」
原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。
※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる