上 下
45 / 360
第1章 5 新必殺技! そして、ミライは

ミライとのあれやこれや

しおりを挟む
 紆余曲折あったが、ようやく俺の思考をミライが読み取れるのかどうかの実験をはじめることになった。

「じゃあ、目をつむりますので誠道さんはなにか適当に考えてください」

「わかった」

「美少女が目の前で無防備だからって、襲い掛からないでくださいね」

「するか!」

 言われたことによって意識しちゃうだろうが。

「では、目を閉じますね」

 ミライがゆっくりと目を閉じる。

 ああ、なんだろう。

 このじりじりとした息苦しさを伴う緊張感は。

 だって、この実験の結果によって、今後の俺の命運が決まる。

 もし、不幸にも俺の思考がミライに伝わる、つまり実験が成功してしまえば、これから先、寝る前の日課である自家発電ができなくなる。

 いつミライに思考を読み取られているのかわからないから。

 健全な男子高校生にとってそれは拷問に等しい。

 ……いや待てよ? むしろ俺が開き直ればあるいは。

 そうだ! 逆転の発想だ!

 非常に大事な時間がかかっているからか、俺の頭は今、エジソンが発明を考えているとき以上に働いている。

 今ならスーパーコンピューターの処理速度にも勝てるはずだ。

 だったらいっそうのこと……そうだよ。

 ミライでおもいっきり変態的なことを想像して、辱めを受けさせればいいんだ。

 そうすれば向こうから俺の思考を読み取ろうとすることはなくなるはず。

 だって妄想の中で自分があられもないことをされているんだよ。

 自らそのあられもない思考を読み取って、屈辱的な思いを感じる必要はない。

 よし、そうと決まれば、とびっきりエロい妄想をしてやるぜ!

「じゃあ、今から俺がなにを考えているか、わかったら教えてくれ」

「わかりました」

 絶対に負けられない戦いがここにはある。

 俺は小さく息を吐いて精神を整え、オリンピックの決勝戦に臨むアスリートのように集中した。

 さあ、試合開始だ。

 その瞬間から、俺はミライにそれはもうすごいことをしている様子を想像した。

 どうだっ! ミライはさぞ恥ずかしい思いをしているだろう。

「……えっ、あっ、そんな、ことをっ、でも、誠道さん、まさかっ」

 目の前にいるミライから、戸惑いと羞恥の声が聞こえてくる。

 よしよし、作戦は順調に進んでいるぞ。

 でも、まだだ。

 こういうときはもっと徹底的に辱めなければいけない。

 尻上がりの妄想力をもっともっとみせつけてやれ。

 妄想力で完全試合達成だぁ。

「いやっ、そんなことまで、そんな、誠道さんっ」

 でも、冷静に考えるとなんか恥ずかしいよな。

 だって悶えているミライが目の前にいるんだよ?

 ……いいやだめだだめだ。

 なにを弱気になっている?

 ここでこの恥ずかしさから逃げれば、俺は自分の命の次に大事な至福のひとときを失ってしまうんだぞ。

 逃げちゃだめだ。

 男には絶対に逃げてはいけない場面があるんだぁ!

「ああっ、もうやめてっ。そんな、鞭でたたいてほしい? 誠道さんが望むならっ。私が女王様になってもいいですよ」

 よしよし、もっともっと羞恥に悶えろ……って、ん?

 鞭でたたいてほしい?

 俺、そんなこと考えてないぞ?

「そこに跪きなさい。ユニコーンの角よりも小さな誠道さんので、私をどうにかできると思っているのですか」

「お前本当は俺の心の声聞こえてないだろ!」

 だって俺は鞭なんて想像していない。

 ってことは、ミライは俺の作戦を見越した上で、あたかも心の声が聞こえているかのように振る舞っていたということだ。

「それと最後の最後に俺をバカにしたなぁ!」

 俺のはそんなに小さくない。

 人並みだと思うぞきっと!
 
 そう信じてるぞきっと!

「いきなりなんですか。ちょっと落ち着いてください」

 目を開けたミライになだめられ、とりあえず深呼吸をして心を落ち着かせる。

 ああ、目の前にはさっきまで妄想の中で好き勝手にしていたミライが……って心を落ち着かせろ!

「誠道さん。どうして私が嘘をついていると、そう思うのですか」

「だってミライとそこまでの変態的なプレイは想像していない…………あ」

 俺は慌てて口を手で覆ったが、もう遅かった。

「へぇ、つまり誠道さんは、私とのあれやこれやを想像はしていた、と」

 どこか嬉しそうに罵ってくるミライ。

 ああ、これはもう完全に弱みを握られた。

 そもそもこいつがエロ妄想されているくらいで恥ずかしがるわけないじゃん。

 今までのこいつの言動を鑑みれば、それくらい容易に推測できただろ。

「私が読み取るとわかったうえで、私でえっちな妄想をしていたなんて。誠道さん、あなたって人は……」

 ミライが自分の腕で体を抱き、蔑みの目を向けてくる。

 俺からの発信はできない。

 つまり実験は失敗したのだから、俺の至福のひとときは守られたはずなのに……どうしてこうなった。

「でも、なんで俺の作戦に気づいたんだよ」

「面白いかなぁと思ってやってみたのですが、まさか本当に私でえっちな妄想していたとは思いませんでした」

 策士策に溺れたというより、ひとりで勝手に踊っていただけでした。

 俺は、にんまりと笑うミライを見ながら絶望する。

 今後、ミライが今日のことをいじってこないわけがないよね。

 ああ、これから俺、常に恥ずかしさと隣り合わせの生活をしないといけないのかぁ。

 もしかしたら、俺がペットとして首輪をつけている日も近いワンッ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

ちょっっっっっと早かった!〜婚約破棄されたらリアクションは慎重に!〜

オリハルコン陸
ファンタジー
王子から婚約破棄を告げられた令嬢。 ちょっっっっっと反応をミスってしまい……

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...