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第1章 3 はじめての敵、それはゴブリン
心菜聖という女の子
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「なひっ! ……えー、ごほん。ななな、なんでしょうか?」
いきなりのことで驚いてしまい、情けない悲鳴を上げてしまったが、咳払いをしてさも悲鳴など上げてなかったかのように振り返る。
そこには、見覚えのある女の子がいた。
肩のあたりまで伸びている髪をおさげにしていて、赤い眼鏡をかけた、可愛らしい童顔の女の子。
胸は……まだ成長期を迎えていないのかな。
たぶん、俺より二つか三つ年下だろう。
彼女は片手剣と皮の盾を持ち、銀色の鎧を着ている。
「えっと、私……は心菜聖と言います。石川さんと同じ転生者です」
そうか。だから見覚えがあったのか。
……って、あれ?
「転生者だって知ってるのはいいとしてさ、どうして俺の名前まで知ってるの?」
俺はまだ心菜さんに名乗っていない。
まさかこの子の固有ステータスで?
「女神様の前であんなに騒いでいたら、普通覚えますよ」
で、ですよねー。
俺はがっくりと肩を落とす。
よくよく考えれば、あの惨めな場面を転生者全員に見られてるんだよなぁ。
あのオムツおじさんよりはましだと思うけど。
自分より下がいるってこんなに安心するんだねっ。
「誠道さんの黒歴史で盛り上がるのは後にしてください。一週間あっても語りつくせませんから」
俺たちの会話にミライが不機嫌そうに割って入る。
「って俺の黒歴史の数を勝手に決めつけるのはやめろよ!」
「そんなことより心菜聖さん」
あ、スルーされたよ!
「どうしてあなたは私たちに話しかけてきたのですか?」
「どうして、って、それは……」
「こんなことを言うのは本意ではないですが」
ミライの声音は少し尖っている。
警戒しているのだろうか。
もう心菜さん泣きそうだからやめた方がいいよ。
「誠道さんがあなたの役に立つとは到底思えません。なんせ、彼の固有ステータスは【新偉人】。なんの役にも立ちませんので、潔くお引き取り願います」
「あれれー? なぜか俺が傷ついて泣きそうなんですけどー」
「私は!」
心菜さんが声を張り上げる。
お、この流れ、絶対俺を擁護してくれるやつやん。
そんなことないよって、俺を必要としてくれるやつやん。
まったく、ミライも少しは見習ってほしいよね、心菜さんの思いやりを!
「私は、そんなどうしようもなく弱い石川さんだからこそ話しかけたんです」
うん。必要とはされたけど擁護はしてくれなかったよ。
この世界に俺の真の味方はいないのかなぁ。
「と、いいますと、どういうことでしょう」
ミライも困惑気味だ。
|
「それは、ちょっとここだと説明しづらいので、私の家にきてもらってもいいですか?」
「どうします? 誠道さん」
ミライが困惑の目を俺に向ける。
そんなの、返事は決まってるじゃないか。
「いくに決まってるだろ。困ってる女の子を見捨てるわけにはいかない」
「ありがとうございます」
俺がそう言った瞬間、心菜さんは深々と頭を下げた。
ミライも「誠道さん」と尊敬のまなざしを向けている。
やべっ、可愛い女の子の家に入りたかっただけなんて、もう死んでも言えない空気だ。
「あ、すみません。私、ちょっとだけ気になっていたことがあるんですけど、聞いてもいいですか?」
「なんだい、心菜さん」
「石川さんが振り返ったときに、私の胸を見て哀れんでいたような気がするんですけど、そんなことありませんよね? よね?」
体中を寒気が襲う。
やばい。
心菜さんの暗黒の目が「そんなことありません」と言えと、無言の圧をかけてきている。
「も、もちろん気のせいだよ。ソンナコトナイヨ」
「よかったです。それを聞いて安心しました」
心菜さんは胸に手を当ててにっこりと笑う……が、目だけは全然笑っていなかった。
これは、今後気をつける必要があるみたいだな。
この子、結構勘が鋭いし、胸のこともコンプレックスに思ってたぁ!
いきなりのことで驚いてしまい、情けない悲鳴を上げてしまったが、咳払いをしてさも悲鳴など上げてなかったかのように振り返る。
そこには、見覚えのある女の子がいた。
肩のあたりまで伸びている髪をおさげにしていて、赤い眼鏡をかけた、可愛らしい童顔の女の子。
胸は……まだ成長期を迎えていないのかな。
たぶん、俺より二つか三つ年下だろう。
彼女は片手剣と皮の盾を持ち、銀色の鎧を着ている。
「えっと、私……は心菜聖と言います。石川さんと同じ転生者です」
そうか。だから見覚えがあったのか。
……って、あれ?
「転生者だって知ってるのはいいとしてさ、どうして俺の名前まで知ってるの?」
俺はまだ心菜さんに名乗っていない。
まさかこの子の固有ステータスで?
「女神様の前であんなに騒いでいたら、普通覚えますよ」
で、ですよねー。
俺はがっくりと肩を落とす。
よくよく考えれば、あの惨めな場面を転生者全員に見られてるんだよなぁ。
あのオムツおじさんよりはましだと思うけど。
自分より下がいるってこんなに安心するんだねっ。
「誠道さんの黒歴史で盛り上がるのは後にしてください。一週間あっても語りつくせませんから」
俺たちの会話にミライが不機嫌そうに割って入る。
「って俺の黒歴史の数を勝手に決めつけるのはやめろよ!」
「そんなことより心菜聖さん」
あ、スルーされたよ!
「どうしてあなたは私たちに話しかけてきたのですか?」
「どうして、って、それは……」
「こんなことを言うのは本意ではないですが」
ミライの声音は少し尖っている。
警戒しているのだろうか。
もう心菜さん泣きそうだからやめた方がいいよ。
「誠道さんがあなたの役に立つとは到底思えません。なんせ、彼の固有ステータスは【新偉人】。なんの役にも立ちませんので、潔くお引き取り願います」
「あれれー? なぜか俺が傷ついて泣きそうなんですけどー」
「私は!」
心菜さんが声を張り上げる。
お、この流れ、絶対俺を擁護してくれるやつやん。
そんなことないよって、俺を必要としてくれるやつやん。
まったく、ミライも少しは見習ってほしいよね、心菜さんの思いやりを!
「私は、そんなどうしようもなく弱い石川さんだからこそ話しかけたんです」
うん。必要とはされたけど擁護はしてくれなかったよ。
この世界に俺の真の味方はいないのかなぁ。
「と、いいますと、どういうことでしょう」
ミライも困惑気味だ。
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「それは、ちょっとここだと説明しづらいので、私の家にきてもらってもいいですか?」
「どうします? 誠道さん」
ミライが困惑の目を俺に向ける。
そんなの、返事は決まってるじゃないか。
「いくに決まってるだろ。困ってる女の子を見捨てるわけにはいかない」
「ありがとうございます」
俺がそう言った瞬間、心菜さんは深々と頭を下げた。
ミライも「誠道さん」と尊敬のまなざしを向けている。
やべっ、可愛い女の子の家に入りたかっただけなんて、もう死んでも言えない空気だ。
「あ、すみません。私、ちょっとだけ気になっていたことがあるんですけど、聞いてもいいですか?」
「なんだい、心菜さん」
「石川さんが振り返ったときに、私の胸を見て哀れんでいたような気がするんですけど、そんなことありませんよね? よね?」
体中を寒気が襲う。
やばい。
心菜さんの暗黒の目が「そんなことありません」と言えと、無言の圧をかけてきている。
「も、もちろん気のせいだよ。ソンナコトナイヨ」
「よかったです。それを聞いて安心しました」
心菜さんは胸に手を当ててにっこりと笑う……が、目だけは全然笑っていなかった。
これは、今後気をつける必要があるみたいだな。
この子、結構勘が鋭いし、胸のこともコンプレックスに思ってたぁ!
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