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姫になんて
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嫌いな物が二つある、父とお酒。
父はドラゴニア王国を治める王だ、私はその娘。
十四の誕生日に初めてお酒を飲んだ、祝宴に参加していた貴族たちはとても嫌な目をしていた。
一六の年に奴隷を見た、成人したのだから見ておくべきだと父は言った。
彼らは獣だと教えられた、だがそうは思えなかった。
確かに獣の耳がある、だがそれだけだ、それだけで、彼らは奴隷なのだ。
嫌な汗が出た、姫になんてなりたくなかった。だが私は姫だ、どうにもできない。
父が勇者を探すなどと、亜人種や獣を森に放ち、民や冒険者を襲わせるゲームを初めても眺めるしかできない。
「勇者なんていやしない。」
灯りを消した部屋で一人、そう呟いた。
「姫様、勇者が決まりました、陛下がお会いになるようにと。」
使用人の声に力なく返事をする、
「わかったわ、すぐ行く。」
足が重い、ずっと寝ていたせいで頭がぼーっとする。
だが、私は姫だ、やらないと。
「おお、麗花よ、気分はどうだ?」
「だいぶ良くなりました、陛下。」
玉座に座っている父に返事をする。
父の前にひざますくのは、五人の男女、金髪の女の子は10歳くらいだろうか?
後の三人は黒髪、短髪の男の子と、隣の長髪の子は妹のようだ。
彼らは北部の出身だったはずだが、農村領の領民がここまで中央に近い街に来るとは…
「あの!大丈夫ですか!?」
長髪の子が声を上げた、父が睨む。
気にしないでと言おうとするか、足元がふらつく。
誰かが肩を支えてくれた、長髪の女の子だ。
「おい!姫様に触れるなど…」
「いいのよ、この子は私を気にかけてくれたんだから。」
「しかし…」
「そんな事言うならあんたたちが支えてあげればいいでしょ!」
「女の子が言った。
「よい。」
父の一言に兵士が黙った。
椅子に座る、女の子が顔を覗き込む。
「あの、熱ないですか?」
「ええ、少し。」
「寝てた方がいいですよ!」
「大丈夫よ、薬は飲んだわ。」
「でも…」
「娘、お前は魔法使いだろう?なんとかしろ。」
「陛下、私は大丈夫ですから。」
「ダメです、じっとしててください。
女の子におでこを触れられる。
「やっぱり、すごく熱いじゃないですか!」
「ボクの知り合いのとこに行きましょう。」
「何だと?」
「その人に見せれば良くなります、すごい魔法使いだから。」
「妙なことになれば処すぞ?」
父が言った。
「大丈夫です、姫様はちゃんと治します。
「良い、12時までに戻って来い。」
「分かりました。」
床に模様が浮かび上がる、魔法陣だ。
気がつくと赤髪の老人が顔を覗き込んでいた。
「いやあ、申し訳ない、倒れてしまわれたので、覚えておられませんかな?」
「ああ、ごめんなさい、私…」
「ご無理をなさらないでください、失礼致します。」
老人に上半身を起こされる。
「お薬ですゆっくりお飲みください。」
「失礼ですが、お食事はしっかり摂っておられましたかな?」
「ちょっと、食欲がなくて…」
「何か悩みがおありでは?」
「王家に生まれたのが苦しくて…」
「お察し致します、しかしこのままでは…」
「父は、民に重税を強いているわ、奴隷もたくさんいる、それを思うと…」
「なら、家出しようよ!」
「家、出?」
「そう、家出!」
「良いではないですか、お手伝い致しますよ?」
「ダメよ、私は…」
「姫なんだから…ですか?」
「え?」
「ご無礼いたしました、少々心を。」
「あなた、心が読めるの?」
「長く生きておりますゆえ。」
「御不安でしょうが、私めとこの子らで必ずお守り致します。」
「安心して、大丈夫!」
根拠はないが女の子の声を聞いていると、とても安心した。
父はドラゴニア王国を治める王だ、私はその娘。
十四の誕生日に初めてお酒を飲んだ、祝宴に参加していた貴族たちはとても嫌な目をしていた。
一六の年に奴隷を見た、成人したのだから見ておくべきだと父は言った。
彼らは獣だと教えられた、だがそうは思えなかった。
確かに獣の耳がある、だがそれだけだ、それだけで、彼らは奴隷なのだ。
嫌な汗が出た、姫になんてなりたくなかった。だが私は姫だ、どうにもできない。
父が勇者を探すなどと、亜人種や獣を森に放ち、民や冒険者を襲わせるゲームを初めても眺めるしかできない。
「勇者なんていやしない。」
灯りを消した部屋で一人、そう呟いた。
「姫様、勇者が決まりました、陛下がお会いになるようにと。」
使用人の声に力なく返事をする、
「わかったわ、すぐ行く。」
足が重い、ずっと寝ていたせいで頭がぼーっとする。
だが、私は姫だ、やらないと。
「おお、麗花よ、気分はどうだ?」
「だいぶ良くなりました、陛下。」
玉座に座っている父に返事をする。
父の前にひざますくのは、五人の男女、金髪の女の子は10歳くらいだろうか?
後の三人は黒髪、短髪の男の子と、隣の長髪の子は妹のようだ。
彼らは北部の出身だったはずだが、農村領の領民がここまで中央に近い街に来るとは…
「あの!大丈夫ですか!?」
長髪の子が声を上げた、父が睨む。
気にしないでと言おうとするか、足元がふらつく。
誰かが肩を支えてくれた、長髪の女の子だ。
「おい!姫様に触れるなど…」
「いいのよ、この子は私を気にかけてくれたんだから。」
「しかし…」
「そんな事言うならあんたたちが支えてあげればいいでしょ!」
「女の子が言った。
「よい。」
父の一言に兵士が黙った。
椅子に座る、女の子が顔を覗き込む。
「あの、熱ないですか?」
「ええ、少し。」
「寝てた方がいいですよ!」
「大丈夫よ、薬は飲んだわ。」
「でも…」
「娘、お前は魔法使いだろう?なんとかしろ。」
「陛下、私は大丈夫ですから。」
「ダメです、じっとしててください。
女の子におでこを触れられる。
「やっぱり、すごく熱いじゃないですか!」
「ボクの知り合いのとこに行きましょう。」
「何だと?」
「その人に見せれば良くなります、すごい魔法使いだから。」
「妙なことになれば処すぞ?」
父が言った。
「大丈夫です、姫様はちゃんと治します。
「良い、12時までに戻って来い。」
「分かりました。」
床に模様が浮かび上がる、魔法陣だ。
気がつくと赤髪の老人が顔を覗き込んでいた。
「いやあ、申し訳ない、倒れてしまわれたので、覚えておられませんかな?」
「ああ、ごめんなさい、私…」
「ご無理をなさらないでください、失礼致します。」
老人に上半身を起こされる。
「お薬ですゆっくりお飲みください。」
「失礼ですが、お食事はしっかり摂っておられましたかな?」
「ちょっと、食欲がなくて…」
「何か悩みがおありでは?」
「王家に生まれたのが苦しくて…」
「お察し致します、しかしこのままでは…」
「父は、民に重税を強いているわ、奴隷もたくさんいる、それを思うと…」
「なら、家出しようよ!」
「家、出?」
「そう、家出!」
「良いではないですか、お手伝い致しますよ?」
「ダメよ、私は…」
「姫なんだから…ですか?」
「え?」
「ご無礼いたしました、少々心を。」
「あなた、心が読めるの?」
「長く生きておりますゆえ。」
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根拠はないが女の子の声を聞いていると、とても安心した。
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