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プロジェクト.イヴ

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「素晴らしい、合格です、黒曜ミヤさん。」
骨村はにっこりと笑った。
「選出は終わった、あとは…」
骨村が見つめるカプセルには幼い少女が入っている。
「君が起きるだけだ、イヴ、僕の娘。」
「マキナ、今日が君の誕生日だ。」
「はい、マスター。」
「君の新しい名前は、イヴだ。さあ、始めよう!」

鳥の囀りが聞こえる、朝だ。
「ふぁ、あいつら起こさねえと。」
階段を降り、妹たちの部屋に行く。
「ミヤ、ニナ、起きろー、お祈り遅れるぞー。」
「お兄ー、もっと撫でてー。」
「撫でてやるから、起きろー。」
「ふあ、おはよう、お兄。」
「おはよう、お祈り行くぞ。」
「うん、ニナちゃーん、朝だよー。」
「くう、くう。」
「幸せそうに寝てるな。」
「うん、起こさないであげよう。」
「そだな。」
教会に行くと村の人々が集まっていた、だがその中に盛大にあくびをしている人がいた。
「もう、リュウちゃん、神父様に怒られるよー!」
「早く起きんのは苦手なんだよ。」
「西園寺さん、おはようございます。」
「おはようございます。」
「おー、ユイト、ミヤちゃんおはようさん。」
「おはよう、二人ともえらいね、ちゃんと起きて。」
「セナさん、おはようございます。」
「ちゃんと起きなくてわりーな。」
「いいよ、リュウちゃん寝顔かわいいから。」
「俺は可愛くねえ!」
談笑していると神父様がきた。
皆で手を合わせ、お祈りをし、その後は説法だ。
「えー聖典にはこうあります、太陽は創世の女神の愛であると…」
「あーやっと終わったー。」
「リュウちゃん、そんなふうに言わないの、まあ。ちょっと長いけどね。」
「じゃあ、俺たちは飯食ってきます。」
「おう、またな!」
家に帰り妹たちと朝食を済ませ、畑に出る、いつも通りの日常。
「けど、なんか物足りねえような…」
最近この事ばかり考えてしまう、田舎の農民として生まれたのだから、平凡な人生しか望まないつもりだったのに。
「お兄~ お弁当持ってきたよー!」
「おう、いつもありがとうな。」
妹のミヤがサンドイッチを持ってきてくれた。
「あむ!ほんっとうまいよ、お前のサンドイッチ。」
「えへへ、今日はね、ニナちゃんが卵割ってくれたの。」
「そっか、じゃああいつも撫でてやらねえとな。」
「お兄、つまんないの?」
「へ?」
「笑ってるけど、つまんなそう。」
「いや、楽しいよ?」
「嘘言わないで、お兄のことならなんでもわかるんだから!」
ミヤが頬を膨らませる。
「あー、なんかさー、物足りねえんだよ、狭苦しいっていうか?ごめんな、よくわかんねえ事言って。」
「ううん、わかるよ、ねえ、みんなで森行こうよ、気分転換!」
そんなわけで、三人で森に行くことになった。
「気持ちいいねー。」
「なー。」
「なんか声聞こえない?」
「へ?」
「女の子、ひまちゃん?」
「そう?」
「ほら、あっち!」
走り出したミヤについて行く、そこではひまわりちゃんが岩を押していた。
「ゔゔゔっゔーん!」
「ひまわりちゃん、何してんの?」
「特訓!ゔーん!」
「俺みてえになりてぇんだとよ。」
「西園寺さん!?」
「俺たち、いつか村出るんだよ。」
「村を出る?」
「冒険者になんだよ。」
「どうしてですか?」
 「狭苦しいんだよ、お前もだろ?」
「あ、それは少し…」
「ならお前らもやったらどうだ? スッキリするぞ?」
「ボク、やります、憂さ晴らししたい!」
「お、やるか!」
「はい!」
「よっしゃ、気合い入れろ!」
「ふん~!ゔゔゔ!貴族なんかあ、くそらえだー!!ゔ~!」
「お兄もやんなよ、気持ちいいよ!」
疲れるのは嫌いだが、たまにはいいような気がしてきた。
「よし!俺もやる!」
「ふっゔゔゔ、税金ばっか取りやがってえー!!ゔゔゔ、おおお!」
「おっ、ユイト動いたじゃねえか!」
「お兄すごいじゃん、よーしボクも!ゔーん!ゔゔゔ!」
「あー疲れた」
「ねー。」
「俺ら冒険者になれるんじゃね、マジで。」
「うん、ボク黒い竜とか召喚したい! 魔女になるの!」
「ん? 魔女ってなんか聞いたことあるような?」
「王都にたくさんいるんでしょ?」
「いやそうじゃなくてさ…ニナって魔女じゃないっけ?」







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