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思惑
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だが、オルフェウスはすぐに気が付いた。
罠だということに。嫌な予感が先程からしているからだ。
諦めたのではなく、罠を仕掛け誘い込んで始末するつもりなのだろう。まだその事にエルザとジークは気が付いていない。
走りながら考えを巡らせる。
このままでは三人共に墓へ入らないといけなくなるが、オルフェウスには策があった。
物陰に隠れ様子を伺う。やはり誰も来ていない。
「ジーク!オマエにやってもらいたい仕事がある。実は……」
「え!…でも、それじゃあオル達が…」
「フッ、俺を誰だと思っていやがる!そんなもん、返り討ちにしてやる。ーーで、やるのか?」
「わ、分かった!やってみるオル!上手くできるか分からないけど、頑張るよ!」
「ーーああ、頼りにしてるぞジーク!」
エルザは不思議そうな表情をし、二人の顔を交互に見やる。
誇らしげにジークは笑みを浮かべ、オルフェウス達と別れ、別行動をすることになった。
帽子を被り直すと小さく息を吐き、エルザの手を取り再び走り出す。
ったく、何で俺の周りは厄介事だらけなんだか。
ーーそれも運命なのかも知れんが……。
正直、自分を呪いたくなる心境だ。今更言っても仕方のない話だが。
成り行き上、エルザを奴等から守らないといけない今、無事に隣国に送り届ける必要がある。
それに奴等の背後に黒幕が居るのは間違いない。それなりの地位の者だろう。
街が見渡せる丘まで来た時である。
「きゃっ!」
「ん?ああ…済まない」
急に立ち止まったせいか、エルザはオルフェウスの背中に激突した。
どうやらオルフェウスの読みが当たったようだ。物影に隠れ、こちらの様子を伺う気配を感じる。人数からして五、六人といったところだろう。
「…エルザ、俺の傍から離れるなよ」
「え?は、はい!」
スッポリとオルフェウスの腕の中に収まり、少しエルザは緊張しているようだ。それをチラリと見て微笑むと、ゆっくり歩きだす。
微かにエルザの手は小刻みに揺れている。今更だが奴らに身柄を渡すつもりも、殺されてやるつもりもない。
物影からようやく奴らが姿を現す。
見たことのある顔が二つ。しかし残りの奴らは知らない新顔ばかりだ。見た目はひ弱そうな奴も見受けられるが、実際のところハッキリとは分からない。
「…もう逃げられんぞ!さあ、こちらにその娘を渡してもらおうか」
「フッ、…断る!」
「な、何!貴様、ソフィニア皇国の近衛兵だと知っての狼藉か!!」
「ーーああ、そうだ。嫌がる娘を無理矢理連行とは…聞いて呆れるぜ。この件、嘸さぞキル皇子が聞いたらタダでは済まないだろうな…」
「…………!?」
エルザは言葉を失う。
思わぬところからエルザの兄の名を耳にしたからである。しかし、キルとはどんな関係なのだろうか。だが、今はそんな事を考えている場合ではない。
オルフェウスの後ろに隠れ、隙間から様子を伺う。
近衛兵達はジリジリと此方へ近付いて来る。
懐から煙草を一本取りだし火を点けた。大きく息を吐き出すと、上着の内ポケットへ手を滑り込ませる。デザートイーグル50AEをカバーから外す。
いつの間にか左手に握られていた。
「時間がないから手短に話すが、俺が合図したら迷わず丘の方へ走れ」と小声でオルフェウスはエルザに告げる。
そして一瞬、近衛兵が怯んだ隙にオルフェウスはチャンスだと、エルザに合図をよこす。
小さく頷いたが、躊躇うようにもう一度オルフェウスの背中を見る。
罠だということに。嫌な予感が先程からしているからだ。
諦めたのではなく、罠を仕掛け誘い込んで始末するつもりなのだろう。まだその事にエルザとジークは気が付いていない。
走りながら考えを巡らせる。
このままでは三人共に墓へ入らないといけなくなるが、オルフェウスには策があった。
物陰に隠れ様子を伺う。やはり誰も来ていない。
「ジーク!オマエにやってもらいたい仕事がある。実は……」
「え!…でも、それじゃあオル達が…」
「フッ、俺を誰だと思っていやがる!そんなもん、返り討ちにしてやる。ーーで、やるのか?」
「わ、分かった!やってみるオル!上手くできるか分からないけど、頑張るよ!」
「ーーああ、頼りにしてるぞジーク!」
エルザは不思議そうな表情をし、二人の顔を交互に見やる。
誇らしげにジークは笑みを浮かべ、オルフェウス達と別れ、別行動をすることになった。
帽子を被り直すと小さく息を吐き、エルザの手を取り再び走り出す。
ったく、何で俺の周りは厄介事だらけなんだか。
ーーそれも運命なのかも知れんが……。
正直、自分を呪いたくなる心境だ。今更言っても仕方のない話だが。
成り行き上、エルザを奴等から守らないといけない今、無事に隣国に送り届ける必要がある。
それに奴等の背後に黒幕が居るのは間違いない。それなりの地位の者だろう。
街が見渡せる丘まで来た時である。
「きゃっ!」
「ん?ああ…済まない」
急に立ち止まったせいか、エルザはオルフェウスの背中に激突した。
どうやらオルフェウスの読みが当たったようだ。物影に隠れ、こちらの様子を伺う気配を感じる。人数からして五、六人といったところだろう。
「…エルザ、俺の傍から離れるなよ」
「え?は、はい!」
スッポリとオルフェウスの腕の中に収まり、少しエルザは緊張しているようだ。それをチラリと見て微笑むと、ゆっくり歩きだす。
微かにエルザの手は小刻みに揺れている。今更だが奴らに身柄を渡すつもりも、殺されてやるつもりもない。
物影からようやく奴らが姿を現す。
見たことのある顔が二つ。しかし残りの奴らは知らない新顔ばかりだ。見た目はひ弱そうな奴も見受けられるが、実際のところハッキリとは分からない。
「…もう逃げられんぞ!さあ、こちらにその娘を渡してもらおうか」
「フッ、…断る!」
「な、何!貴様、ソフィニア皇国の近衛兵だと知っての狼藉か!!」
「ーーああ、そうだ。嫌がる娘を無理矢理連行とは…聞いて呆れるぜ。この件、嘸さぞキル皇子が聞いたらタダでは済まないだろうな…」
「…………!?」
エルザは言葉を失う。
思わぬところからエルザの兄の名を耳にしたからである。しかし、キルとはどんな関係なのだろうか。だが、今はそんな事を考えている場合ではない。
オルフェウスの後ろに隠れ、隙間から様子を伺う。
近衛兵達はジリジリと此方へ近付いて来る。
懐から煙草を一本取りだし火を点けた。大きく息を吐き出すと、上着の内ポケットへ手を滑り込ませる。デザートイーグル50AEをカバーから外す。
いつの間にか左手に握られていた。
「時間がないから手短に話すが、俺が合図したら迷わず丘の方へ走れ」と小声でオルフェウスはエルザに告げる。
そして一瞬、近衛兵が怯んだ隙にオルフェウスはチャンスだと、エルザに合図をよこす。
小さく頷いたが、躊躇うようにもう一度オルフェウスの背中を見る。
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