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第4章・玄き竪琴の調べを誰が聴く

本編・北の国"玄武国"に招かれて

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北の国"玄武国"は、高い山々に囲まれた天然の城塞国家だ。他国との接触もほぼなく、自給自足の生活をしている。

かの国の守護神は"知略に富んだ玄武神"ショワン様だ。水辺に住まう魚類の眷属を統べ、"水の気"の魔法を加護する。

水は雨水が地上に落ち、川を流れて大海にそそがれ、やがて天に昇り雲となり、また雨粒になる。"水"とは即ち"循環"である。

"木の気"が生物の栄枯盛衰を司るモノなら、"水の気"は水気を帯びた無機物の『流れ』を司る。

ちなみに。"水の気"と"火の気"は互いに相殺しあう関係なので、"火"の加護を持つ商人シナンガとは相性があまりよくない。ー シナンガ本人は、そういうことは気にしない質だが。


今回、ミコトが受けた依頼は『オルフェの竪琴』と呼ばれる楽器の呪いを解く仕事だ。
元々は旅の竪琴弾きの持ち物で、見た目は簡素な造り。持ち主が非業の最後を遂げたことで、災いを呼ぶアイテム楽器に成り果ててしまった。
弾き手が居なくても勝手に音を鳴らす竪琴の、なんともいえない悲しい調べは。聴くものを鬱々とさせ、やがて気鬱の病にまで発症させるのだという。
何度、破壊を試みても壊せなかった為に、神殿の奥深くに封印されていたのだ。


依頼主である玄武国国王アグロスの執務室に通されたのは、もはや見慣れたメンバーだ。

最近は『呪い』関連の仕事ばかり指名を受けるようになったミコトと護衛子守りのパウロ。
『唄』には『歌』をと、朱雀国の歌姫カナリョーが呼ばれた。ちゃっかり彼女の護衛としてシナンガが着いてきたことは言うまでもない。


そしてまぁ、いつものごとく。子連れミコトと間違われたパウロの為に、子守の侍女が呼び出された。ー 腰に姫をくっつけて。

姫の名はカリオペ。齢10才の末姫である。自分と同じ年頃の女の子ミコトの話を聞いて、着いてきたのだ。

カリオペ姫はミコトの顔を見て。
「これじゃない!」と叫んだ。
なかなか人を見る目があると。ミコト達一行は深く頷いた。だが事態は深刻だった。

「こんなに小さい子の相手なんか出来ない!」
空気が凍った。ミコトの垂れた目が、珍しい程ひんむかれた。

10才の子に、10才以下に見られた。しかも玄武国関係者も、ソレを否定しようともしない。ミコトの周囲をブリザードが舞う。黒い髪がゆらゆらと、若布のように揺らめいた。

「…申し訳ございません、カリオペ姫。」ミコトはこれでも17才になるところですー という言葉は。玄武国関係者に莫大な衝撃を与えた。

 
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