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第3章・琥珀の獅子が護りしものは
最終話・テスカトリポカの処遇
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シナンガ達は隠してあった荷馬車に乗って、王都バイフリアを目指した。荷台にシナンガ達とテスカトリポカを乗せて。
泣き止んだミコトに、琥珀を渡したのはパウロだ。彼にはミコトの旅を見届ける、後見人の役目があるからだ。
琥珀はミコトの手にのせた途端、淡雪のように消えた。ミコトは掌を握りしめた。その手を身の内に隠すよう、体を丸めてー まるで冬眠する栗鼠のようにー そのまま眠ってしまった。
意識のないミコトとテスカトリポカをのせて、荷馬車は走った。シナンガとパウロは、会話をしない。いや無言で会話をしていたと、いうべきか。ミコトの心情を思いやれば、掛ける言葉は無かった。
丸1日かけて、ようやくバイフリアにはいった。関所の番兵に、テスカトリポカの身柄を渡す。受取書を持ってアヌーク代表の待つ邸宅に急いだ。
目が覚めている筈のミコトは、いまだにぼんやりと。大人しくパウロに運ばれていた。
門番から連絡がまわったのだろう。アヌーク邸にたどり着いた三人は、すんなりと執務室まで通された。中ではアヌーク様とビャクオン様が待ち構えていた。
あらましはシナンガが話した。
黒豹団に追われた事。
ミコトが逃げる途中、崖から落ちた事。
マンティコアに助けられた事。
追いかけてきた黒豹団との戦い。
テスカトリポカの捕獲と
ー マンティコアの最後。
ミコトがぽつり、ぽつりと呟く。
マンティコアが気遣ってくれた事。
暖かで安らかな時間だった事。
決してミコトを傷つけようとせず
その身でミコト達を守ってくれた。
人食い怪物ではないことを。
そして獅子を怪物にしたのは
じぶんのせいだということを。
ミコトは、自分の掌を見つめながら。そこにあったかもしれない、琥珀の気配を探しながら話した。
パウロはミコトの肩を引き寄せる。
シナンガはミコトの頭をなでている。
ミコトを励ますように。宥めるように。
「マンティコアのことだが。」
ビャクオン様が重い口を開いた。
「盗賊相手とはいえ、人を殺めたのは事実。死後にきちんと罰を受ければ、また輪廻の輪に戻れるだろう。」ヤツの家族も、彼の岸辺で待っていることだし。と告げた。
人間だったころの人喰い獅子には、最愛の奥さんと二人の子供がいて。彼女らは故郷を襲った盗賊に、無情にも殺された。それが盗賊達を襲った理由だと。
亡くなった子供二人は、先に輪廻の輪に入った。まだ見ぬ世界を楽しみに見てくるね、といって。
奥さん一人、彼の岸辺でずっと待っているらしい。後から追ってくるはずのマンティコアとはぐれたら大変だから、と笑っていたと。
「これはあくまでも私見だが。ミコトの外見が、末っ子と酷似していてな。我が子の姿と重ねていたのだろう。だからマンティコアもさぞかし良い、
安らぎの時間を最後に思い出して過ごしたことだろうよ。」と締めくくった。
「テスカトリポカのことだが」
アヌーク様が語る。
「奴は此方できちんと罰を受けさせる。死ぬよりも辛い罰をね。」と、薄く微笑まれた。
テスカトリポカには"隷属の首輪"を、生涯着けさせると。そしてその身を、この白虎国の為に捧げさせる。と約束された。
甘い処分だと、思われることだろうが。
彼らの犯罪は氷山の一角。
まだまだ、悪い奴らに搾取される国民がいる。彼らを助け出す為に、せいぜい働いてもらうつもりだと、おっしゃった。
シナンガ達への褒美は通行証だ。それと"アヌーク様御用達"を名乗れる身分を与えられた。もう、どの村に泊まっても一級の扱いを受けられる。
ミコトはビャクオン様から白い珪岩を与えられた。ビャクオン様の加護で、今後は"金の気"魔法が使えるようになる。
首に着けたネックレスに翳すと、すいっと吸い込まれる様にネックレスに溶け込んだ。
元の世界の女神から授けられた
血色珊瑚
中つ国キーリャオ神から授けられた
黄玉
東の国セイロネス神から授けられた
翡翠
南の国シュザローネ神から授けられた
紅玉
そしてビャクオン神から授けられた
珪岩が。
時空神から授けられた白金のネックレスに、仲良く並んで照り映えている。
ミコトの"記憶"を集める旅はまだ始まったばかり。これからの旅路に想いをはせるミコトであった。
泣き止んだミコトに、琥珀を渡したのはパウロだ。彼にはミコトの旅を見届ける、後見人の役目があるからだ。
琥珀はミコトの手にのせた途端、淡雪のように消えた。ミコトは掌を握りしめた。その手を身の内に隠すよう、体を丸めてー まるで冬眠する栗鼠のようにー そのまま眠ってしまった。
意識のないミコトとテスカトリポカをのせて、荷馬車は走った。シナンガとパウロは、会話をしない。いや無言で会話をしていたと、いうべきか。ミコトの心情を思いやれば、掛ける言葉は無かった。
丸1日かけて、ようやくバイフリアにはいった。関所の番兵に、テスカトリポカの身柄を渡す。受取書を持ってアヌーク代表の待つ邸宅に急いだ。
目が覚めている筈のミコトは、いまだにぼんやりと。大人しくパウロに運ばれていた。
門番から連絡がまわったのだろう。アヌーク邸にたどり着いた三人は、すんなりと執務室まで通された。中ではアヌーク様とビャクオン様が待ち構えていた。
あらましはシナンガが話した。
黒豹団に追われた事。
ミコトが逃げる途中、崖から落ちた事。
マンティコアに助けられた事。
追いかけてきた黒豹団との戦い。
テスカトリポカの捕獲と
ー マンティコアの最後。
ミコトがぽつり、ぽつりと呟く。
マンティコアが気遣ってくれた事。
暖かで安らかな時間だった事。
決してミコトを傷つけようとせず
その身でミコト達を守ってくれた。
人食い怪物ではないことを。
そして獅子を怪物にしたのは
じぶんのせいだということを。
ミコトは、自分の掌を見つめながら。そこにあったかもしれない、琥珀の気配を探しながら話した。
パウロはミコトの肩を引き寄せる。
シナンガはミコトの頭をなでている。
ミコトを励ますように。宥めるように。
「マンティコアのことだが。」
ビャクオン様が重い口を開いた。
「盗賊相手とはいえ、人を殺めたのは事実。死後にきちんと罰を受ければ、また輪廻の輪に戻れるだろう。」ヤツの家族も、彼の岸辺で待っていることだし。と告げた。
人間だったころの人喰い獅子には、最愛の奥さんと二人の子供がいて。彼女らは故郷を襲った盗賊に、無情にも殺された。それが盗賊達を襲った理由だと。
亡くなった子供二人は、先に輪廻の輪に入った。まだ見ぬ世界を楽しみに見てくるね、といって。
奥さん一人、彼の岸辺でずっと待っているらしい。後から追ってくるはずのマンティコアとはぐれたら大変だから、と笑っていたと。
「これはあくまでも私見だが。ミコトの外見が、末っ子と酷似していてな。我が子の姿と重ねていたのだろう。だからマンティコアもさぞかし良い、
安らぎの時間を最後に思い出して過ごしたことだろうよ。」と締めくくった。
「テスカトリポカのことだが」
アヌーク様が語る。
「奴は此方できちんと罰を受けさせる。死ぬよりも辛い罰をね。」と、薄く微笑まれた。
テスカトリポカには"隷属の首輪"を、生涯着けさせると。そしてその身を、この白虎国の為に捧げさせる。と約束された。
甘い処分だと、思われることだろうが。
彼らの犯罪は氷山の一角。
まだまだ、悪い奴らに搾取される国民がいる。彼らを助け出す為に、せいぜい働いてもらうつもりだと、おっしゃった。
シナンガ達への褒美は通行証だ。それと"アヌーク様御用達"を名乗れる身分を与えられた。もう、どの村に泊まっても一級の扱いを受けられる。
ミコトはビャクオン様から白い珪岩を与えられた。ビャクオン様の加護で、今後は"金の気"魔法が使えるようになる。
首に着けたネックレスに翳すと、すいっと吸い込まれる様にネックレスに溶け込んだ。
元の世界の女神から授けられた
血色珊瑚
中つ国キーリャオ神から授けられた
黄玉
東の国セイロネス神から授けられた
翡翠
南の国シュザローネ神から授けられた
紅玉
そしてビャクオン神から授けられた
珪岩が。
時空神から授けられた白金のネックレスに、仲良く並んで照り映えている。
ミコトの"記憶"を集める旅はまだ始まったばかり。これからの旅路に想いをはせるミコトであった。
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